最強の、逆襲“アベンジ”へーー世界興行収入No.1シリーズのマーベル・スタジオ最新作 『アベンジャーズ/エンドゲーム』が、ついに4月26(金)、日本で公開を迎えてしまう。“しまう”という表現は、この記事を最後まで読んでくれれば、理解してくれるだろう。
Interview:尾上松也
ヒーローが抱える闇と、キャプテン・アメリカへの憧れ
(携帯電話のケースカバーを見せて)これ、マーベルです。
——ニヤリとされましたね、さすがです。松也さんがマーベルに詳しいのは有名な話なのですが、そもそも興味を持ったきっかけは?何がきっかけかと言うと、マーベルに限らずヒーロー自体に興味を持ったんです。マーベルのヒーローが映画などで実写化されたのは、アメリカン・コミックスの中ではあとの方なので。マーベルのきっかけはやっぱり、このMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)がまさにそれですが、いろいろなキャラクターが登場するので「これは誰だ……?」って気になるでしょ。それと、僕がそれまで見ていたヒーロー作品と圧倒的に違ったのは、キャラクターたちの心の闇の面があるところ。
——マーベル・スタジオのプロデューサー兼プレジデントのケヴィン・ファイギも、「MCUは、ロバート・ダウニーJr.なしでは存在しなかった」と語っていますしね。ただ、松也さんの推しヒーローはキャプテン・アメリカですよね?はい、キャプテンは好きですね。僕は歌舞伎の自主公演を主宰したり、プライベートでもフットサルチームでキャプテンをやったりとか、たまたまそういう立場になることが多いのですが、何かを率いている人を見てしまう。それは勉強のためなのかもしれませんが、そういう意味でキャプテン・アメリカは僕の憧れの一人ですね。
——ヒーローの中ではソーも強いですが、キャプテン・マーベルの強さには確かに笑いすら出ました。強力な仲間を得たアベンジャーズですが、予告編などでもやはり精神的な支柱としてキャプテン・アメリカの存在が際立っているようにも感じました。やっぱり、再び立ち上がるときにみんなを鼓舞するのはキャプテン。僕は予告編でキャプテンを先頭に、ヒーローたちがスローモーションで歩いていくシーンが大好きなんですよ。「キャプテン!! 」って声をかけたくなる。まさにあれが僕の理想とする姿。——そうすると『エンドゲーム』では、キャプテンがガンガン前に出ていく場面も……。いやいや! それはないです。アイアンマン行けですよ。今まで自分が主役の作品では最後は締めていましたが、『アベンジャーズ』シリーズに関してはキャプテンがトドメを刺したことはないですから。
アベンジャーズの魅力と、迫るラストへの偽らざる感情
——アベンジャーズの魅力についてもっと掘り下げていきたいのですが、松也さんはアベンジャーズがここまでファンの心を惹きつけるのはなぜだと思いますか?同じコミックスのヒーローとして、これだけのキャラクターが一緒に活躍する。そういう描き方はアメリカではポピュラーなんでしょうが、日本ではMCU以前にはあまりなかったと思うんですよ。そういう意味では「ヒーローたちが同じ世界観を共有している」ことの面白さを、MCU、そしてアベンジャーズが教えてくれた。日本ではコミックスを知らない方が多い中でこれだけ人気なのも、そういうところに理由があると思います。あのスペシャル感は魅力的ですし、物語の繋げ方も見事だなと。シリーズが長く続くと、普通だったらもっとダレてしまうはずなんですけどね。新しいヒーローが出てきて「ガーディアンズ? 面白いの~? 」なんて思っても、結果的にとても面白いわけですから。期待を常に超えてくるのはすごいですよね。——MCUにおける“世界観の共有”という手法と、アベンジャーズにおける“ヒーロー大集結”へのワクワク感。それらは日本の映画ファンにとっても新鮮だったと思います。それまでもそういう作品がまったくなかったわけではないですけど、これだけ成功したシリーズはなかった。
——例えば、歌舞伎の世界にそういう作品やシリーズはありますか?人物として似ていることはありますけど、同じ人物でも作品ごとに設定やキャラクターが違うので、世界観を共有していることはないですね。ただ、僕はあってもいいと思っていて、前からやりたいのは歌舞伎の世界のヒーローを大集結させた“歌舞伎版アベンジャーズ”。それはずっと考えています。歌舞伎にはそれだけのキャラクターがいますので、いつかは実現してみたいです。——キャラクターで何人か目星は付いていますか? 例えばキャプテン・アメリカとか。いくつか候補はいますね。やっぱり能力値的にはそれほど高くないけど、キャプテンシーを持っているという点で言えば、5月に『め組の喧嘩』というお芝居を上演するのですが、そこに出てくるとび職の辰五郎。『め組の喧嘩』はお相撲さんとの喧嘩のお話で、棟梁の辰五郎が先陣を切って大勢の若い衆を引き連れていくんです。ですので主役の辰五郎が、キャプテンシーを持ってヒーローたちを集める……っていうのがいいんじゃないかなと。あとハルクみたいなキャラクターだと、鎌倉権五郎という人物が歌舞伎の『暫』っていうお話に出てくるんですよ。鎌倉権五郎は、まあとにかくデカい。動きは遅いけどパワーがすごくて、一振りで何十人の首をはねてしまうぐらい。——“歌舞伎版アベンジャーズ”できそうですね……キャプテン辰五郎。キャプテン辰五郎はぜひやりたいですね。——松也さんは、アベンジャーズのヒーローの中でキャラクター的に誰が自分に一番近いと思いますか?そうありたいのはキャプテンですけど、わりといい加減なところはいい加減なのでアントマンですかね。トニー・スタークは何も考えてないようですごく考えてますし、ほかのみんなもしっかり考えてますけど、アントマンだけはどこか「ノリだけでここまできた」みたいなところがあるじゃないですか。どちらかというと僕はそっちのタイプですね(笑)。——あと、松也さんの友人でヒーローっぽい人はいますか? 例えば、松也さんは山崎育三郎さん、城田優さんとIMYというプロジェクトを始動されましたが、そのお二人はいかがですか?うーん……育三郎はトニー・スタークかな。チャラチャラして適当っぽいんだけど、やるときはやるっていう。優も普段はトニー・スタークっぽい要素があるけど、基本はネガティブ思考なところがあったりするので、意外とハルクっぽいかもしれないですね(笑)。
——それは意外ですね。あと歌舞伎の世界の方で、松也さんの代表作の一つでもある『三人吉三』では中村勘九郎さんと中村七之助さんとご一緒されていますが、そのお二人は?七之助さんもトニー・スタークっぽいですね。勘九郎さんは……ピーター・クイルっぽいかな。やっぱり僕は闇が深いのでピーター・クイルかもしれないですね。基本的には楽観的だけど、実は傷つきやすいみたいな。そう考えるとキャプテン・アメリカみたいなキャラはいないですね。チームのキャプテンとしては必要だけど、プライベートはちょっと……みたいな感じなのかもしれない。まさにトニー・スタークとの関係で、認め合っているけど……。——ただ『エンドゲーム』ではその二人が固い握手を交わします。そうですね。間もなく公開ですけど、もちろんとっても楽しみですし、『キャプテン・マーベル』を観てからワクワクは倍増しました。キャプテン・マーベルたちが加わったアベンジャーズがサノスとどう戦うのか、どういう風にアベンジャーズが一致団結し、どんな結末を迎えるのか。正直、このチーム、このメンバーでのアベンジャーズが最後というのはやはり寂しいですよ。いろいろなことを含めて永遠にはできないし、このときが来るのをわかってはいた。観たいけど観たくない、そんな気持ちです。できれば『エンドゲーム前編・後編』とかにしてほしいぐらいで、どこかでそれに期待している自分がいます。
——『キャプテン・マーベル』からのスパンも短かったので、心の準備がまだできていないファンも多いかもしれません。このあとに若いヒーローたちの新たなフェーズが始まるとしても、やはりこれだけ長い期間に渡って見てきたので、このメンバーを超えるアベンジャーズを今は想像できない。このメンバーはすべてがベストな感じがするので、終わってしまうのがとにかく寂しいですね。——ファン一人一人の思い入れは強いですね。逆にまだMCU、そしてアベンジャーズを知らない人もいるわけで、そういった人たちに一言かけるとしたらなんと言いますか?いやもう、うらやましいしかないですよ。「観てないの!? 楽しいぞ~! 」って感じです。今からこの壮大なシリーズを、新鮮な気持ちで見られるわけですから。でも、ファンも『エンドゲーム』のあとに、最初からもう一回観ちゃうと思いますけどね。——そうですね。とにもかくにも『エンドゲーム』の結末、その“希望”を見届け、次へ進みましょう。MCUのフェーズ4以降ですが、例えば日本人ヒーローは現れますかね?どうでしょうね……あるとして侍とか忍者とかしかないんでしょうね、世界的に考えると。やっぱ日本特有のそういうキャラクターになるのかな。——なかなか難しそうなので、ぜひ歌舞伎版アベンジャーズを実現してほしいです。やりたいですね。賛同してくれる方はいると思うんですけど。それかアベンジャーズを歌舞伎として成り立たせるしかないですよね。……アイアンマン難しいなぁ。——(一同)ハハハハハ!
アベンジャーズ/エンド・ゲーム 4月26日(金)全国公開
監督:アンソニー&ジョー・ルッソ製作:ケヴィン・ファィギ 出演:ロバート・ダウニーJr.、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、ポール・ラッド、ブリー・ラーソン原題:Avengers: Endgame配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン©2019Marvel
尾上松也
photo by 大石隼土
interview&text by ラスカル(NaNo.works)
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