コーネリアスが7月31日に4作品を同時リリースする。1994年リリースの記念すべき1stアルバム『the first question award』、そして現在のコーネリアスの幾何学的な音の配置からなる楽曲の起点となった2002年リリースの4thアルバム『POINT』のリイシュー(同時にサブスクリプション解禁もされる)。
INTERVIEW:コーネリアス
──今年で活動歴30周年なんですよね。別に(リリースには)関係ないっちゃ関係ないんですけど(笑)、たまたま。──(笑)。この3作品のリリースになった理由は?『Mellow Waves』ってアルバムのツアーがあって、去年、国際フォーラムでライブをやったんですけど、そこが一応ファイナルで。その『Mellow Waves』のプロジェクトをまとめようということで、作ろうとしてて。この2枚(CD『the first queation award』、『POINT』)は、もともとポリスターってレコード会社で作ったアルバムなんですけど、その権利をワーナーが買ってくれてたんですね。

──ミュージックビデオも全曲分作るのは最初から決まってたんですか?うん、決まってましたね。──小山田さんの作品ではおなじみになった辻川幸一郎さんとのタッグが多いですね。うん、辻川くんは相変わらず。今回は「デザインあ」とかで一緒にやってる中村勇吾さんが初めて関わってくれて。オープニングの映像だったり、何曲かミュージックビデオ作ってくれて。あとはgroovisionsの住岡(謙次)さん。前のアルバムの『SENSUOUS』から関わってくれてるんですけど、その3人で。

──どんどんクオリティも上がり、映像のテクノロジーも上がっていくわけで。小山田さんは映像に関してどういうものを求めていて、今回のような作品になったと思いますか?音の構造物として曲を解釈したものもあれば、素朴なものもありますし。うん。なんか色々あっていいかなと思ってあの3人の人選になったんですけど。そうですね……そのバランスっていうか、「どういうもの」って一個じゃないんです。自分の音楽のイメージを時には広げてくれたり、時にはすごくリアルに再現してくれたりっていうことなのかなと思うんですけどね。──コーネリアスの表現の場合、先にテクノロジーありきじゃないように感じます。そうですね。必要なことしかやってないですけどね。今、プロジェクターでライブやるのってそんなに最先端じゃないっていうか(笑)。みんなLEDとかで、プロジェクターは逆にちょっと古いみたいな。なんだけど、うちはプロジェクションの方が合ってるなと思って。プロジェクターを使ってる理由は演出の都合上、前に紗幕があって、そこと後ろを映したり、あと、体にも投影できるっていうところ。L.E.Dのモニターは解像度が高くて綺麗なんだけど、自発光なので後ろからしか光がこないとか、そういう理由なんですけどね。映像がより見えるのはきっとL.E.D方が見えるんじゃないかな。あと、コーネリアスはバンドで、いろんな環境でやらなきゃいけないんで、その場合はプロジェクションの方が楽だったりするんですよね。──『Mellow Waves』のライブでは始まりの輪が投影され、そして演奏が終わる時に「Thank you,so much」っていうあのエンディングまで、何度見ても感動するんですよ。テクノロジーがあってこそ可能な表現ももちろんあるとは思いますが、ライブも映像も並大抵の作業じゃない、労作だからなのかなと。うん。まぁテクノロジーっていうか人力ですからね、演奏に関しては。基本的なテクノロジーは『POINT』の頃からそんなに変わってないですよね。その頃はDVDでやってたんですけど、それが今回Blu-rayになったってぐらいで。画質とか解像度とか全然違いますけど、基本的にプロジェクションして、まぁそれとシンクして演奏するっていうのは、もう20年ぐらい変わってないですね。──今回、Blu-rayには入らないんだと思うんですけど「Another View Point」のライブの表現がなかなか社会的というか、ソリッドな内容でもあって。あれだけは僕が自分でやってて。コーネリアスのライブってファンタジックというか、ちょっと現実から離れるみたいな時間だと思うんですけど、その中に思いっきり現実を入れると、よりその現実も浮き彫りになって、ファンタジックな世界もよりわかるというか。あと現実が一番狂ってる事がわかる。そういう感じがするのかなと思って。あれを入れることによってだいぶ広がりが出る気がしたんで。ただ、あれはこういうソフトには収録できないんで(笑)。

──(笑)。一回性のものですね。一回性のもので、しかもそのとき、一番新しいニュースとかが入ってるんで、よりそのタイミングで見ないと。──それこそ一昨年のフジロックでエイフェックス・ツインがやっていたことも、そのときやるから意義があるという意味では共通点があるなと思いました。うん。エイフェックス・ツインのライブ、うちらのあとだったんで見れなかったんだけどね。見たかったな。──小山田さんにとって音楽以外のアーティスティックな表現は切っても切れないものですか?まぁ、全部一つのプロジェクトというか、全部一緒に考えてますけどね。自分もそういう風に音楽を聴いたりしてたんで。音楽にまつわるもの全てというか、自分が子供の頃聴いてた音楽とかも、ジャケット眺めながら聴いてたし。ま、全部一緒だと思いますけど。──手で触れるアートワークから、映像まで色々あるわけですけど、単純に物理の解像度だけでなくて、内容が迫ってくるものがあると思います。今のクリエーターの方達のバランスはすごくいいのもあると思いますが、『Mellow Waves』の映像作品の中でも小山田さんが一番ギョッとした作品ってどれですか?ギョッとしたっていうか、辻川くんが、“Mellow Yellow Feel”を本当に一人で作ったっていうのを聞いて、すごい偉いなと思いました(笑)。偉いっていうか、ちゃんとしてるなというか。彼も元々は一人で映像を作り始めて、で、そこからいろんな仕事をしたりして、結構でかいプロダクションも仕切ったりするようになって。で、たまたまそのちょっと前に<Audio Architecture展>っていうのがあったんですけど、そこでいろんな若い作家の人の中に辻川くんも入って作って。その中の大西さんという方が、彼一人で頑張ってCGで作ってたんだけど、そういうところに辻川くんが触発されて。それで、あえて一人でやるみたいな作風に向かっていって「偉いなぁ」と思いました(笑)。──それは仕事でもあるんだけど、コーネリアスの作品がクリエーターのモチベーションを上げる要因にもなってるんでしょうね。辻川くんは初めて映像作ったのがコーネリアスで、そこからずっとやってくれてるんで、そういう意味ではモチベーション持ってやってくれてるんで。まぁもちろん仕事でお願いしてやってくれてるんだけど、もともと最初はただの友達だったんで。そのノリで今でもできてるっていうのがいいなと思いますけどね。──クレイメーションはおそらくすごい根気が必要だし、どこで完成とするか? もその人のこだわり次第でしょうし。うん。そういうことを今やってるっていうのがすごいなと。そういうところに出るなとは思いますけどね。──本気とか熱意ですね。テクノロジーの進化だけでは表現できない感覚みたいなものがむしろあると思います。ところで、もしお金いくらでもかけていいんだったらどんなショーをやりたいですか?え? わかんないですけど、ホール作りたいです(笑)。そっからやりたいですね。──専用ホールですか?専用ホール。コマ劇場のサブちゃんみたいな感じで(笑)。一週間ぐらいおんなじホールで、なんかやるスタイル。演劇とか、ブルーマングループとか、ああいう感じで、そういうのができたら面白いなと思います。──会場を持つのは夢ですね。そうですね。自分の会場を持つって。なかなかいないよね? ストーンズとかでも、ジェット機は持ってるけど。──(笑)。会場、オリンピック前で、全然空いてないからね。それにアリーナとかはライブには向いてないし。国際フォーラムは2年前に押さえたって言ってたもんね。2年後のスケジュールまで決まってるから、ちょうどいい会場を押さえるのが、今大変なんだよね。でも2年後のこと言われてもわかんないじゃないですか(笑)。──(笑)。でも大体皆さん2年後ぐらいは考えて動いてるのかなと。そういうの辛いですね。ほんとは何にも考えたくないんですけど(笑)。──(笑)。余談ですけど、香港の<クロッケンフラップ>でデヴィッド・バーンのライブはご覧になりましたか?ああ、見た見た。──ステージ上にアンプや定位置の楽器がないという。すごいね。デヴィッド・バーンはあのプロダクションを全部の会場に持ってってるんだもんね。あのプロダクションはすごい。毎回、デヴィッド・バーンのショーは面白いですね。ほんと誰もやってないことをやりますよね。──しかも年齢上がるに従って、フィジカル的にきつそうなことをやるという。うん。めっちゃ踊ってたもんね。70ぐらいだけど元気だったね。あの人もよりロックバンド的なものじゃないところに行ってて、ほんとパフォーマンスって感じですね。今見ると、「ストップ・メイキング・センス」とか普通にロックバンドだなと思う。あれも当時はすごく斬新なパフォーマンスだったじゃない?でも今見えると普通にロックバンドでやってるなと思うよね。ああいうちょっとロックバンド的なところから逸脱したロックバンドの元祖みたいなところだからね、あの人。──コーネリアスの次のライブは楽器が消えるかも?ま、アンプは消えるかもね。──また何か意表を突くプロダクションを期待しています。ありがとうございました。

Text by Yuka IshizumiPhoto by You Ishii
INFORMATION

The First Question Award
2019.07.31¥2,400+tax詳細はこちら

Point
2019.07.31¥3,700+tax詳細はこちら

Mellow Waves Visuals
2019.07.31¥6,500+tax詳細はこちら
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