
[J2第16節、ベガルタ仙台 0-0 ジェフユナイテッド千葉、5月17日、千葉・フクダ電子アリーナ]
3位仙台は首位千葉に引き分け、リーグ戦2試合連続未勝利となった。
今季より加入したDF井上詩音(しおん)はセンターバックの位置で先発出場すると、見事なディフェンスでクリーンシートに貢献。
前節で“ふがいない試合”をしたイレブンが見せた意地
前節RB大宮アルディージャ(現2位)との上位対決を0-3で落とし、失意に暮れたイレブンが意地を見せた。
リーグ首位千葉とアウェイで激突した仙台は強固なブロックを披露。センターバックの井上は守備の要といえる活躍で、相手の攻撃をシャットアウトし続けた。
「カウンターをくらうシーンが多かったですけど、相手は縦に速いぶん、道(パスコース)が見えたらパスを出してくるだろうなと思っていたので、僕はずっと誘っていました。スペースを空けておいたら蹴ってくると思っていましたし、僕が守りたいように守れたので作戦通りでした」と胸を張った。
大宮戦では、ディフェンスラインと中盤が間延びしてできたスペースを相手に使われ、なかなかボールを奪えず。森山佳郎(よしろう)監督は防戦一方だったイレブンを「本当にふがいない」と咤激励していた。
大宮戦に出場していた井上(中央左、写真・浅野凜太郎)「チームの中で『ここで崩れたら、このまま崩れていくぞ』という声もありましたが、僕は絶対にそういうのが嫌です。試合前に、『勝ち負けは監督の責任だけど、すべてを出し切れないのはみんなの責任だからな』と伝えました。
先週の試合でも、サポーターはふがいない試合だったにもかかわらず、ものすごい大声援を送ってくれた。あれに応えなかったら、サッカー選手じゃない」と、愛のムチがイレブンの心に灯をともした。

仙台はここまでJ2最多の29得点を記録しているホームチームに対して、ディフェンスラインを高めに設定。
世界に誇れるサポーターと再びJ1へ
前半38分にはペナルティキックのチャンスを献上するも、GK林彰洋(あきひろ)がゴール左側への横っ飛びスーパーセーブで見事ストップした。
窮地(きゅうち)を救った守護神に応えようと、イレブンは躍動。井上らディフェンス陣は鋭いインターセプトで攻撃の芽を摘み、カウンターにつなげた。
仙台は前後半を通じて計14本ものシュートを放ったが、惜しくも得点は奪えず。それでも、千葉に対して被シュート1本に抑える堅守を披露し、実力の一端を示した。
試合はそのままスコアレスドローで終了。2試合ぶりの勝利とはならなかったが、首位チームに対して見せた好プレーに仙台サポーターは拍手を送った。

クリーンシートに貢献した背番号44は「全員が前回負けたことをすごく悔しがっていた。自動昇格圏内(2位以上)に入るためにも、特に上位対決は落とせない。そういう意味では、勝てなかったことは悔しいですが、最低限だと思います」と一定の評価を下しながらも、勝利に飢えている。
試合後、森山監督は「『ベガルタは死んでいないぞ』と示すには、十分の試合だったと思います」とイレブンの健闘を称えるともに、前節に引き続き大声援を送ったサポーターに感謝した。

「選手たちもあのエールが響いたと思いますし、世界に発信できるくらいのすばらしいもの(応援)だった。僕らのサポーターは負けたときにこそ、『俺らも苦しいときには横にいるぞ』という応援をしてくれるんです。
僕らだって負けたら、(気持ちが)沈んではい上がってこれないんじゃないかというくらいに落ち込む。そんなときに、仲間たちへ向かって『何をやってるんだ、てめぇ』と言うのは違うと思う。海外ではその風潮がありますが、だからこそ違う文化を仙台から世界へ発信していけたら、すばらしいと思います」と、杜の都のクラブは、5シーズンぶりのJ1復帰に向けて再び前を向いた。
次節は25日の午後1時にアウェイのハワイアンズスタジアムいわきでJ2いわきFCと対戦する。

仙台のディフェンスラインを支える井上は「応援の声は本当にすごい。前半も後半も聞こえていましたし、本当にそれがパワーになってプレーできたので、感謝しかありません。次のアウェイのいわきも(サポーターが)いっぱい来てくれると聞いているので、絶対に勝ちたいと思います」と、地元宮城県が世界に誇るサポーターへ、3試合ぶりの勝利を届けてみせる。
(取材・文 浅野凜太郎)