
[J2第23節、ジェフユナイテッド千葉 1-0 モンテディオ山形、7月12日、山形・NDソフトスタジアム山形]
4位千葉はDF鳥海晃司が後半36分に奪った先制点を守り切り、15位山形に13季ぶりとなるシーズンダブルを達成。2位に浮上した。
チームを公式戦9試合ぶりの勝利に導いた背番号24はここからの巻き返しを誓いながらも、中断期間を前にリフレッシュの必要性を説いた。
帰ってきた男の山形戦
まさに値千金のゴールだった。
千葉にとって山形は公式戦8勝7分15敗を喫していた難敵であり、アウェイでは2013年以来勝てていなかった。
また、昨季はJ1昇格プレーオフをかけた最終節で敗戦。イレブンが涙した0-4の大敗を、今季よりJ1セレッソ大阪から帰還した鳥海は自宅から見届けていた。
山形戦でキャプテンマークを巻いた鳥海「このスタジアムで負けた試合をテレビで観ていました。だからこそサポーターの気持ちをくんでいましたし、何としてでも勝ちたかった」と『千葉をJ1に戻す』ために帰ってきた男がこの一戦にかける想いを明かした。
試合は両者一歩も譲らない好ゲームとなった。千葉は前半だけでシュート8本を放つも、ゴールネットを揺らせず、歯がゆい時間が続いた。
キャプテンマークを巻いた鳥海は守れば鋭い出足でピンチの芽を摘み続け、ビルドアップではテンポの速いパス回しを心がけた。「後半は耐える展開になりました」と被シュート10本を浴びるも、身体を投げ出してコースを限定した。

一進一退の攻防が続き、刻一刻とタイムリミットが近づく中、0-0で迎えた後半36分にゲームが動いた。
MF品田愛斗(まなと)が右コーナーから放ったキックをDF河野貴志が打点の高いヘディングで合わせると、ボールが鳥海の目の前にこぼれた。
J1復帰に向けて英気を養う
リーグ戦4試合ぶりの得点にイレブンとサポーターは歓喜。周囲は勝利を確信したかのようにパフォーマンスを求めたが、当の本人はいたって冷静だった。
「(得点を決めたときが)ロスタイムくらいだったら喜べましたが、『勝つというのは難しい』とここ何試合かでずっと思っていたので、すぐに守り切る方に頭を切り替えました。自分がそれ(パフォーマンス)で浮かれるのも嫌だし、僕は守備の選手なので守ることしか考えていなかったです」と、公式戦9試合ぶり勝利に向けて確固たる信念を見せた。
背番号24が危惧(きぐ)していたように、山形は失点後もクロスボールを中心に何度も攻め立て、最後まで千葉の脅威であり続けた。イレブンは身体を張ってゴールを死守。再び首位に返り咲こうと、一致団結した。

試合はそのまま1-0で終了。死闘を制した千葉は公式戦9試合ぶりの勝点3を手にし、2位に浮上した。
「みんなここまでフラストレーションは溜まっていましたが、その中でも同じ方向を向いてやることが大事だから、そこをすり合わせようと練習から全員で努力してきました。
次節は中断期間を挟んだ来月2日午後7時からホームのフクダ電子アリーナでいわきFCと対戦する。
首位奪還とJ1自動昇格圏内キープのためにも負けられない戦いは続くが、鳥海は休息の必要性を強調した。

「絶対に心と体をリフレッシュしないといけない。ここまで1位でみんなもしんどかったと思います。1位で走ったことがないチームなので、追い抜かれたり、追い詰められたことで、みんな疲弊しています。
ただ、オフ前に勝つか負けるかで(中断期間中に)考えることが違ってくるので、本当に大きい勝利だったと思います。逆に今度は(首位水戸ホーリーホックに)追いつくだけなので、みんなで突っ走っていきたい」と英気を養う。
中断期間を終えた千葉はどんな姿でピッチに帰ってくるだろうか。宿敵撃破の勢いそのままに、長いトンネルを抜け出したイレブンが、次こそ満員のフクアリに勝利を届ける。
(取材・文 浅野凜太郎)