
7試合2得点4アシスト
この成績は今月17日にJ2モンテディオ山形からJ2ジェフユナイテッド千葉に完全移籍で加入したFWイサカ・ゼインが対千葉戦で挙げた通算成績だ。
ジェフキラーと多くの千葉サポーターから恐れられていたスピードアタッカーが黄色いシャツに袖を通す。
イサカは千葉の17季ぶりJ1復帰のピースになれるか、モンテディオ山形を取材する高橋アオ記者が実力に迫る。
(文・構成 高橋アオ)
悪夢の快速アタッカーが千葉の新しい力に
イサカのプレースタイルや実力は千葉サポーターからすれば説明不要だろう。
なぜなら彼の鋭いカットインからのクロスやシュートに何度も悪夢を見せられてきたからだ。
千葉サポーターから見てトラウマのような存在といわれるイサカ悪夢の始まりは2022年7月17日に開催された横浜FCvs千葉戦で、当時J1川崎フロンターレから横浜FCへ期限付き移籍していたイサカが2アシストを記録し、千葉は0-4と大敗を喫した。
そしてJ1昇格プレーオフ進出がかかった昨季最終節山形戦では、千葉のペナルティーエリア内でパスを受けたイサカが山形DF安部崇士(たかし)へ先制弾をアシストするラストパスを供給。この失点を口火に大量4失点とJ1復帰の夢を絶たれてしまった。
相手ディフェンダーを置き去りにする爆発的な加速力を持つスプリント、精度の高いクロス、スピードに乗りながらもコントロールを失わない技術、優れた決定力を備えているため、J1復帰のピースになり得る戦力だ。
千葉が煮え湯を散々飲まされ続けたアタッカーが加わることで、サイドからの攻撃パターンの増加が期待できる。
今月13日に左ひざ前十字じん帯損傷、左ひざ内側側副じん帯損傷、左ひざ外側半月板損傷の大ケガにより、全治約8カ月の長期離脱をリリースされたFW田中和樹の代わりとなるサイドアタッカーとして期待されている。
ただラインブレイクを得意とする田中とイサカはタイプが異なり、サイドでの正対から加速で相手ディフェンダーをはがしてクロスの供給やカットインからのシュートなどが光る。
さらに高い跳躍力を生かしたヘディングもあり、田中とは違った持ち味で千葉をけん引するだろう。ちなみに人柄は誰に対しても分け隔てなく優しい性格であり、チームに馴染むのも早そうだ。
今夏二人目の補強!今後の補強動向はどうなるか
千葉の今季途中加入はFW森海渡に続き、イサカが二人目となった。
以前森のコラムで、関係者によればFW小森飛絢(ひいろ)のJ1浦和レッズ完全移籍により1億5000万円超えの巨大資金を千葉は得たと書いた。
森は横浜FCからの期限付き移籍であり、資金的に余裕があると推測される中でイサカを完全移籍で獲得した。

今季リーグ戦23試合に出場したイサカだが、先発出場は8試合と序列を落としつつある状況だった。ただ直近2季で1シーズン先発30試合5得点以上を記録している実績があるアタッカーなだけに、決して安価な選手ではないだろう。
世界的な移籍情報サイト『Transfermarkt』によると、イサカの推定市場価格は50万ユーロ(約8647万円)であり、『小森資金』の半分強に当たる。
ただ移籍情報サイトの額面通りに市場が動くわけではなく、強化部の交渉で違約金の価格は上下する。
今回の移籍で多額の資金は投入されたと推測されるが、『小森資金』やスポンサードなどで資金力があると見られている千葉は、まだまだ余裕があるだろうと複数関係者は見ているようだ。
ただ傾向としては小森の移籍により森が加入し、田中の負傷離脱後にイサカが加入したことから、アクシデントや移籍で抜けた穴を埋める補強方針の可能性が高い。
実際にGK若原智哉が2月に負傷離脱した際に、スペイン人GKホセ・スアレスを獲得したことから、今後移籍などで抜けた穴がなければ積極的な補強はないだろうと関係者は見ているようだ。
ただあるプロサッカー関係者は「千葉は資金力もあるし、後半戦に入っても自動昇格圏の2位に付けている。この好機を逃せばJ1復帰が遠ざかるし、次の機会なんて読めない。ここで(新たな補強に)動く可能性は十分にある」と話していた。
今季はイサカの獲得を最後に千葉の補強は終わるのか。積極補強を進めるオリジナル10の名門の補強動向から目が離せない。