
日曜日に実施されたマンチェスター・ユナイテッド対マンチェスター・シティの通称「マンチェスターダービー」で、イングランド代表MFフィル・フォーデンの母親を侮辱するチャントが歌われた。
その為、現在イギリス国内メディアはその「お下品チャント」の話題で持ちきりだ。
そんな中、イギリス紙『Daily Mail』はこれまでプレミアリーグで歌われた数々のお下品チャントを振り返る特集を行った。
デイヴィッド・ベッカム
イングランドを代表するスター選手でもあるデイヴィッド・ベッカム。そんなベッカムもユナイテッド時代、イングランド代表で引き起こした“ある出来事”が原因で国中から批判された時期があった。
1998年のワールドカップ、決勝トーナメント1回戦イングランド対アルゼンチンの試合で、ベッカムはアルゼンチン代表のディエゴ・シメオネ(現アトレティコ・マドリード監督)の足を蹴り飛ばし退場処分を下された。
結果的にイングランド代表はこの試合で敗退し、現地メディアから「10人の勇敢な獅子と1人の愚かな若者」と揶揄されるなどベッカムは国民的戦犯になってしまった。
そんなベッカムが代表からユナイテッドに帰ってきた際、ユナイテッドサポーターたちは「ポッシュ・スパイス(ベッカムの妻ヴィクトリア氏のアイドル時代の愛称)が尻穴に突っ込む」というチャントを歌い、ベッカムにバッシングを浴びせた。
後にヴィクトリア氏はこの出来事について「恥ずかしい。傷つきます」と振り返っている。どうやらユナイテッドサポーターの行儀の悪さは、20年前から顕在だったようだ。
モーガン・ギブス=ホワイト

2022年にウルヴァー・ハンプトンからノッティンガムフォレストに移籍したイングランド代表MFギブス=ホワイト。
同カテゴリーへの移籍ということもあり、ウルブズ戦ではサポーターから激しいブーイングを受け、試合序盤にはギブス=ホワイトに対して「お前のガールフレンドのケツ」というチャントが歌われた。
しかし、同選手はその直後に得点。不敵な笑みを浮かべながら、ウルブズサポーターに向け“耳を塞ぐ”パフォーマンスを行い、大きく話題となった。
スコット・ブラウン

日本代表FW古橋亨梧がセルティック時代に背負った『背番号8』の前任者として有名なセルティックのレジェンド、スコット・ブラウン。
日本では中村俊輔の元同僚として知られる彼も、チャントで誹謗中傷を受けた過去がある。
当時15歳のレンジャーズサポーターの少年によって歌われた「スコット・ブラウンの妹がトミー・バーンズを地獄に落としてやる」というチャントは、2008年に亡くなったブラウンの妹を中傷したもの。ブラウンの妹とセルティックのレジェンドとして知られるバーンズは、偶然同じ年に共に皮膚がんで亡くなっており、このチャントはその偶然を揶揄している。
セルティックのライバルであるレンジャーズでは、こうした過激なチャントやジェスチャーは日常茶飯事だ。しかし、この事件は「限度を超えている」として当時スコットランドでも大きな問題となった。
ジェイミー・ヴァーディ

元日本代表FW岡崎慎司らと共に「ミラクル・レスター」を成し遂げたことで有名なレスターのレジェンド、ジェイミー・ヴァーディ。実はヴァーディの妻は「ワガサ・クリスティ事件」と呼ばれる大スキャンダルで、イングランド代表FWウェイン・ルーニーの妻と確執があることで知られている。
裁判でルーニーの妻に敗北して以降、レスターの試合ではこの事件を揶揄するチャントが毎試合のように歌われていた。
その中でも、ルーニーの所属元であるユナイテッドのサポーターたちは「ジェイミー・ヴァーディ、お前の奥さんは草だ」とからかった後にルーニーのチャントを大合唱した。
ウェイン・ルーニー

一方で、ルーニーも妻に関連して、侮辱的なチャントを歌われたことがある。
昨年11月、ルーニーの指揮するイングランド2部プリマスはワトフォードと対戦、その際、ワトフォードサポーターたちからは「ルーニーの妻はジャングルで犯されている」というチャントが繰り返し歌われた。この声は中継の音声にも入っており、イギリス国内で大きな注目を集めた。
サッカー協会(FA)の規則では、クラブはサポーターが「不適切な行為を控える」ようにする責任があると規定されており、これには「明示的か暗示的かを問わず、民族的起源、肌の色、人種、国籍、宗教または信念、性別、性転換、性的指向または障害のいずれか1つ以上に言及すること」が含まれる。
また、FAの規則では、「集団的な差別的チャントの十分な証拠」がある場合、クラブは懲戒処分を受ける「可能性が高い」と規定されている。
しかしながら、イギリス国内ではこれらのチャントを「試合の一部」であると考える人々も多い。今回のフォーデンの事件に対して、ワトフォードなどプレミアリーグ複数クラブで活躍したトロイ・ディーニーは以下のように話している。
「残念ながら、これはサッカーの一部です。それが現実です。子供たちや妻など、あらゆることについて、サポーターたちから言われてきた。
この試合はダービーであり、観客は感情的になるものだ。それもサッカーの一部だ。受け入れるべきではないが、これは太古の昔から続いていることだ。かつてジャンフランコ・ゾラ(元ワトフォード監督)は私にこう言いました。『我々は感情を持たないために給料をもらっている』」