
初戦で世界王者スペインに逆転負けを喫したものの、ブラジルとナイジェリアに連勝しグループ2位で準々決勝進出を決めたパリ五輪のなでしこジャパン。
次なる相手は、女子サッカー大国アメリカ。
田中美南
グループステージでは全3試合に先発。現在のなでしこジャパンにおいて、FWの核と言えるのが田中美南だ。
今のなでしこは、とくに縦へつけるボールに関して人依存になりがち。そうした中で、プレーに改善の余地はあるものの、味方の立ち位置を見ながらボールを引き取り次の局面へと進めることのできる田中は貴重な存在と言える。
ブラジル戦では前半にPKを失敗。チームは終盤の連続弾で劇的な逆転勝利を手にしたが、田中は試合後に涙を見せていたという。それだけに、ナイジェリア戦での今大会初ゴールは大きかったはず。
コンディションも徐々に上がっていることがうかがえ、五輪後にNWSLのユタ・ロイヤルズへ加入することを考えても、準々決勝のアメリカ戦ではハイパフォーマンスを期待したい。
長谷川唯

なでしこジャパンの大黒柱というほかない。それだけ長谷川唯は一つ一つのプレーのクオリティが際立っている。
スペイン戦は、マンチェスター・シティの同僚ライア・アレシャンドリが相手にいたこともあってか長谷川への警戒度が高く、ボールを持っても素早いプレッシャーをかけられてなかなか持ち味を発揮することができなかった。
しかし2戦目、ブラジルを相手に個の力を発揮。試合終盤には選手交代でポジションを一列前へ移すと、決勝点の場面では猛烈なプレッシングで勝利を手繰り寄せた。
そしてナイジェリア戦は長谷川の独壇場。植木理子への絶妙なスルーパスで先制点を導き出すなど、全体的にルーズだった相手に対して格の違いを見せつけている。
北川ひかる

昨年の女子ワールドカップで活躍した遠藤純が今年2月に負傷離脱して以降、なでしこの左サイドを担ってきた北川ひかる。最終予選のホームでの北朝鮮戦から素晴らしいパフォーマンスを発揮している。
ところが、パリ五輪直前の7月13日に金沢で行われた親善試合ガーナ戦で負傷。回復が間に合わず、スペイン戦とブラジル戦は欠場を余儀なくされた。
しかし、ナイジェリア戦で待望の今大会初先発すると、2-0から1点差に迫られて迎えた前半アディショナルタイム、完璧なフリーキックで相手に傾きかけた流れを断ち切ってみせた。
精度の高いキックだけでなくクロスを上げるタイミングや球質も多彩。今大会のフィールドプレーヤーで唯一の左利きということも考えても、北川の復帰は極めて大きい。
浜野まいか

昨年のワールドカップでは準々決勝のスウェーデン戦、後半アディショナルタイムから出場。懸命にプレーしたがゲームの流れに乗れず、1-2で敗れた直後にはピッチで泣き崩れた浜野まいか。
あれから1年。今年5月に20歳となったアタッカーは、たくましく成長している。今大会は主に左右のシャドーとして出場し、チームに活力を与えるプレーを攻守において連発。
技術的な部分はもちろんのこと、駆け引きを含めた深みのある“巧さ”に秀でたタイプで、相手の嫌がるプレーをやり続けることができる、いい意味でのねちっこさを持っている。
所属のチェルシーではローンバックから6試合で2ゴールを記録し、リーグ5連覇に貢献。今のなでしこでもっとも目が離せない選手の一人だ。
谷川萌々子

最後は、ブラジル戦で劇的スーパーゴールを決めた谷川萌々子。試合前にブラジルのGKは前に出てくることを父親から伝えられ、あの時間にそれを実行できる技術とハートの強さには脱帽だ。
この春JFAアカデミー福島を卒業すると、いきなり名門バイエルン・ミュンヘンへ加入。すぐさまスウェーデン1部のローゼンゴードへローンされ、10番を背にここまで9試合で10ゴールを決めている。
19歳ながら球際で戦うことができ、左右両足での強烈かつ正確なキックは相手にとって脅威。それでいてゴールを決めることにも慣れている、末恐ろしい10代だ。
ただ、ゲームの中に自らを落とし込むレンジはまだそれほど広くなく、良くも悪くも強烈な個が売り。池田太監督としても現状での起用法は悩ましい部分があるだろう。
準々決勝の相手は今年4月のシービリーブスカップで対戦し、1-2の逆転負けを喫したアメリカ。
なでしこジャパンのパリ五輪準々決勝アメリカ戦は、日本時間8月3日(土)22時からパリのパルク・デ・プランスで行われる。