2025年5月14日、中国メディアの第一財経は、低迷が続く中国の住宅市場において新たなニーズの誕生によって多国籍企業に新たなチャンスが芽生えたと報じた。
記事は、12日に上海市で開かれた住宅市場に関するフォーラムの中で、中国建築科学研究院声環境研究センターの閻国軍(イエン・グオジュン)主任が「不動産業界全体はなおも下向き圧力を受けているものの、音響学の分野から言うと上昇トレンドにある」と述べ、中国の遮音材料市場規模が1000億元単位に達するとの見方を示したことを伝えた。
その上で、中国の建築業界では遮音性への関心が高まり、関連の評価基準や規格が整備されてきたと紹介。2024年に制定されたグリーン建築基準では、床衝撃音について従来の基準より20デシベルほど厳しくし、55デシベル以下を「3つ星建築」、60デシベル以下を「2つ星建築」の要件として盛り込んだとした。また、今月1日に住宅工事に関する強制的な国家規格として「住宅プロジェクト規範」が発表され、新築住宅における遮音基準が大幅に引き上げられたと伝えた。
そして、新たな遮音基準の整備は新築住宅建設における遮音材料の新たなニーズを生むと指摘。新規建設面積が減少傾向にあるとはいえ、なおも年間6億~7億平方メートルの住宅が新たに建設されていることを考えれば市場は非常に大きいとした。また、約400億平方メートルという膨大な既存住宅の改修ニーズも、遮音材料に膨大なマーケットをもたらすことになると解説した。
記事は、住宅の遮音問題は市民にとっても大きな関心事であり、ある調査では回答者の70%以上が住環境における騒音問題や遮音性能の低さの解決、改善を強く求めていることが明らかになったと紹介。消費者ニーズの高まりと強制的な国家規格制定の追い風により、遮音材料や関連技術、認証を取り扱う多国籍企業が中国市場進出のチャンスを迎えているとし、主に自動車などの遮音・防振材料で強みを持つ米国の特殊化学品メーカー・ハンツマンが建築分野への進出に乗り出していることを例に挙げた。また、市場拡大に伴い高性能で低コストな遮音製品の開発も加速していくことになるとの見通しも示した。(編集・翻訳/川尻)