コンサートのために、別の都市に遠征。そんな行動が中国で新たなブームとなっている。

中国北東部の瀋陽市に住む劉さんは先週末、およそ1000キロ離れた青島市を訪れた。桟橋や八大関、青島ビール博物館などの定番人気スポットを見学した後、劉さんは今回の旅の最大の目的地である青島市民フィットネスセンタースタジアムへと向かった。20年以上応援し続けている歌手のコンサートに参戦するためだ。

中国公演業界協会の統計によると、2024年、観客数が5000人を超える大型コンサートの総動員数は前年比45%増加し、計2900万人を超えた。また、観客数1万人超えのコンサートの開催数は84.37%増となった。さらに今年は第1四半期(1~3月)だけで、すでに536回の大型コンサートが開催され、前年同期比7.3%増となっている。

コンサートがもたらす経済効果の筆頭は興行収入だ。2024年の大型コンサートの総合興行収入は前年比78.1%増の260億元(約5400億円)を突破した。今や、コンサートは各種の公演の中で最も興行収入が大きいイベントとなった。全国各地でコンサートが開催されることにより、多くの人々が移動する。それに伴う宿泊や外食、観光といった消費は、開催都市の経済を大きく後押ししている。中国のネット上でコンサートは「移動するGDP」とも呼ばれている。

2024年2月に東京で開催された米人気歌手テイラー・スウィフトのコンサートでは、4日間の公演で推計341億円の経済効果があったとされている。

中国でも同様の効果が顕著になっている。2024年、中国北部の山西省太原市では32回のコンサートが開催され、約41億元(約850億円)の消費が創出された。南東部の福建省アモイ市では昨年、60回の大型コンサートが開催された。延べ91万3000人の観客のうち87%が他都市から訪れており、その経済効果は100億元(約2000億円)に上った。今年4月末、南部の広西チワン族自治区南寧市では3日連続でコンサートが開催され、延べ17万人の観客を動員。うち85%が他都市からの客であり、市内のホテルは軒並み満室、消費総額は10億元(約200億円)を超えた。

中国公演業界協会の推計によると、2024年の大型公演における他都市からの観客の割合は60%を上回り、興行収入以外の消費額は2000億元(約4兆1000億円)を超える。他都市から訪れた観客の多くは1~3日間滞在する。3時間のコンサートが72時間もの滞在につながり、大きな経済効果を生んでいるのだ。

「コンサート経済」の背景には、感情的価値を優先するという若者の新しい消費理念がある。今の若者は物質を所有することよりも、感情的価値や心の体験をより重視するようになった。

若者は感情表現や社交上のアイデンティティー、個性のアピールなどを求めている。コンサートは、没入型・参加型の文化商品として、まさにそのニーズを満たしている。

各都市もまた、コンサートが生み出すビジネスチャンスを逃すまいとさまざまな策を打ち出している。例えば南部の海南省海口市では、チケットの販売枚数が3万枚、6万枚、9万枚に達したコンサートに対し、それぞれ100万元(約2000万円)、300万元(約6200万円)、500万元(約1億300万円)の奨励金を交付。また、コンサート開催の審査手続きを簡素化し、最短で1日で審査を完了できるようにした。北部の山西省太原市では、コンサートの前後3日間、チケット提示で市内すべてのバスと地下鉄が無料とされた。さらに、コンサート終了後には夜行列車の増便も実施された。中部の湖北省襄陽市では、コンサートのチケット提示で6つの観光地が無料となり、多くの場所でも入場料や買い物の割引サービスを受けられる制度が導入された。

これらの取り組みは、感情的価値を経済的価値に転化させる試みであり、都市の管理能力やサービス能力の向上にもつながるものだ。コンサートは人々が感情を放出する“出口”であり、都市のリフレッシュと最適化をもたらす“入り口”にもなっている。コンサートがファンを引き寄せ、開催都市を活性化する。この相互作用は、中国の文化と観光の融合を力強く推し進めている。

(提供/CRI)

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