中国と深い絆を築いた世界的指揮者・小澤征爾氏(1935-2024)を偲ぶ記念コンサートが7月20日、北京中山音楽堂で開催されました。小澤氏に師事した指揮者である陳琳氏と黄屹氏による共同演出のもと、小澤氏の音楽指導を受けた音楽家60人余りが集結して結成された「小澤征爾記念オーケストラ」が、中国との絆を物語る名曲を披露しました。

プログラムの3曲目、ベートーヴェンの「交響曲第7番」で指揮棒を振った陳琳氏(中央音楽学院指揮学部主任)は演奏後のインタビューで、「出演者全員が『小澤征爾音楽塾』で学んだ弟子。指導を受けた時代は異なるが、皆、師に深い敬愛の念を抱き、世界各国から自発的に集まった」と紹介し、「本公演は出演料を一切支払わず、無料開催を実現した。特別編成された『小澤征爾記念オーケストラ』は、わずか1日半、10時間に満たない練習時間で、予想を上回る高い完成度の公演を成功させた」と語りました。

小澤征爾氏を偲ぶ記念コンサート、北京で開催
陳琳さん(中央音楽学院指揮学部主任)写真左

2000年、小澤氏は若手音楽家の育成を目的に「小澤征爾音楽塾」を創設。オーディションで選抜された15~25歳のアジア人音楽家たちに、3週間の集中指導と世界公演の機会を提供してきました。これまでの24回の開催で、中国大陸と台湾などから延べ200名以上の学生が参加しています。

昨年2月の小澤氏の逝去後、世界中に散らばる中国人の教え子たちにより「共同追悼」が発案されました。指揮者の陳琳氏は「1年前から準備を進めてきた。音楽塾は生活の基盤となる技術を与えてくれただけでなく、人生そのものを変えてくれた。師の教えが私の今のキャリアを築き、塾生同士の絆は生涯の財産となっている」と振り返り、「音楽の継承こそが、師への最高の感謝だと思っている。三世代の塾生が築いたこの舞台は、小澤氏の芸術精神を今に甦らせ、彼が架けた中日音楽交流を未来へと引き継いだ。プログラムに掲げられた弦楽版『二泉映月』が象徴するように“音色は今も鳴り続け、師の恩は永遠“だ」と語りました。

また、ドイツで40年以上のキャリアを積み、昨年上海音楽学院教授に就任したホルン奏者・韓小明氏(63)は、1980年の出会い次のように語りました。「改革開放初期に中央楽団を指揮した小澤先生は、私を見出し、米国留学の機会を与えてくれた。あの出会いが私の音楽人生を根本から変えてくれた」

小澤征爾氏を偲ぶ記念コンサート、北京で開催
ホルン奏者・韓小明さん(上海音楽学院教授)

蘇州交響楽団第2ヴァイオリン首席奏者の王歓氏は「師から学んだ室内楽のレパートリーは今も私の宝物。本公演のアンサンブルは、その教えに捧げるオマージュとして演奏した」と述べました。

小澤征爾氏を偲ぶ記念コンサート、北京で開催
王歓さん(蘇州交響楽団の第2ヴァイオリン首席)写真右

本記念コンサートは中国音楽家協会指揮学会の主催により、中国人民対外友好協会、中国日本友好協会の後援のもとで開催され、約600人の観客が来場しました。(提供/CRI)

編集部おすすめ