中国メディアの中国新聞週刊は2日、「200万余りのモバイルバッテリーを回収も、11億元(約228億円)儲ける」と題する記事を掲載した。

記事は、モバイルバッテリーの中国大手・アンカー(Anker)について、今年、米中貿易摩擦の激化およびモバイルバッテリーの品質問題というダブルパンチに直面したと言及。

「米中では187万台超をリコールしたほか、その波は欧州や日本、アジアにも拡大した(※日本では47万台あまり)」と説明した。

一方で、「その業績は悪くない」とし、同社の今年上半期の売上高は128億6700万元(約2680億円)、純利益は11億6700万元(約230億円)に達し、「いずれも前年同期比で3割超の増加となった」と説明。中でも北米と欧州市場では強さを見せ、両地域合わせて売上全体の7割を占め、前年同期比36.63%増となったことを挙げ、「外部リスクやリコール問題に直面しつつも、確かな成長力と市場拡大を維持している」と評した。

記事は同社の強みについて、「創業当初から顧客の声の活用、優秀な技術者の起用、研究開発への積極投資の基本方針を打ち出し、ユーザー体験を常に改善する戦略によってアップル・アンドロイド両対応の充電器や小型モバイルバッテリーなどで差別化を図り、アマゾン経由で欧米の消費者を獲得。14年以降、北米・欧州・日本でモバイルバッテリーの売上上位を占めるようになった」とした。

他方、「創業者の陽萌(スティーブン・ヤン)氏はモバイルバッテリーが消えた場合の不安を考え、新たな製品を継続的に生み出す仕組み作りが重要と認識。製品カテゴリーを27にまで広げてリスク分散を図った。その後、勝算の乏しい10カテゴリーで撤退したが、昨年、再び拡大にかじを切った。Soundcore(サウンドコア)のワイヤレスイヤホンは世界出荷量1位となった」と伝えた。

そして、成功の背景として「アマゾンなどでの緻密な運営を通じて蓄積したユーザーデータを基に製品設計や改良が行われたこと」「自社工場を持たないファブレスモデルによって研究、販売に集中し、市場の変化にいち早く対応できたこと」「アマゾンへの依存度を下げeBayや独立したECの展開、オフラインではウォルマートやコストコ、セブン-イレブンに進出するなど販売チャネルを多様化し、東南アジアや南米など新興市場を開拓したこと」を挙げた。

ただ、「急成長の裏で課題も浮き彫りになっている」と言及し、最大のリスクとして海外依存を挙げた。「米国が今年8月に少額輸入品への関税免除措置を廃止し、欧州も定額商品への手数料導入を検討している中、国内市場開拓が経営陣の重点課題となっているものの、中国ではシャオミ(小米)やファーウェイ(華為技術)など大手が強く、消費者も低価格志向が強いため従来の戦略が通用しにくい」と指摘した。

また、「リスク分散のための多元展開が逆に資源分散や研究開発・販売費の増大を招くことになる」としたほか、先日の大規模なモバイルバッテリーリコール問題により、「大量生産下で品質管理が追いつかないという外部委託生産モデルの脆弱性を露呈した」とも分析。「今後は拡張と集中、柔軟と安定のバランスをどう取るかが、同社の持続的成長を左右する」との見方を示した。(翻訳・編集/北田)

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