2025年9月15日、第一財経は、中国で市場から淘汰されたはずの自動車メーカーが「ゾンビ」としてさまよう風潮に警鐘を鳴らす評論記事を掲載した。
記事は、資本金1億元(約20億円)に対して260億元(約5200億円)の負債を抱え、長らく操業を停止していた威馬汽車が新たな投資家を得て事業再開を目指していることを紹介。
その上で、このような「ゾンビ企業」が延命している理由の一つとして地方政府の支援を挙げ、自動車製造業が地域経済の基幹で、雇用、税収、産業発展の要であることから、地方政府は補助金を提供してでも企業を存続させようとしているのだと分析した。
また、もう一つの理由として投機的な資本による資金供給を指摘。業界の発展という視野を持たず、希少な「自動車製造ライセンス」という箔をつけて起死回生を狙ったり、新たな事業ストーリーを作り上げて株価をつり上げ、利益を得ようという資本の流入に言及した。
記事は、仮に地方政府や投機的な資本によって再起を目指したとしても信用がすでに失墜し、修理体制の整備もままならない「ゾンビメーカー」が再び消費者からの信頼を勝ち取って復活するのは困難だとの見方を示した。そして中国の自動車産業は今や「パワーポイントだけで投資を集められる時代」ではなく、コア技術のない企業が市場で戦う余地はないと論じた。
さらに、120以上の自動車ブランドが乱立する現在の中国自動車産業は、過剰な生産能力を削減してバブルを絞り出す時期に来ていると指摘。最終的に15~20社に絞られることが予測される中、「ゾンビ企業」を延命させれば市場原理に反するだけでなく、資源の甚大な浪費につながり、中国自動車産業の構造転換と高度化を遅らせる可能性すらあるとした。
記事は、中国政府が16年ごろ、過剰生産が深刻だった鉄鋼や石炭の分野で供給改革を断行して古い設備の淘汰を進めた結果、優良企業がシェアを拡大するなど大きな成果を挙げたことを紹介。自動車産業でも「ゾンビ企業」に引導を渡すことでその土地、設備、人材といった資源が有効利用できると指摘し、今年7月の中央財経委員会会議でも「時代遅れの生産能力の秩序ある退出を推し進める」ことが要求されたと伝えた。
そして、地方政府が保護主義的な補助金などを削減・撤廃し、「ゾンビ企業」の退場ルートを確保する必要性に迫られているとの認識を示した。(編集・翻訳/川尻)