中国・湖南省の病院で、倒れた高齢男性を助けようとした別の男性が加害者扱いされる騒動があった。中国メディアの大風新聞が28日に報じた。
報道によると、騒動があったのは今月14日午後5時18分ごろ。自転車を押した高齢男性・劉(リウ)さんが病院の出入り口から出ていき、直後に男性・尹(ユン)さんが同じ出入り口から入って左手の階段を上り始めた。すると、劉さんが自転車と共に倒れ、大きな音が鳴った。異変に気付いた尹さんは急いで駆け戻って劉さんの自転車を起こすなどして手伝った。現場にはすぐに別の人も駆け付けた。
尹さんによると、その日は風邪をひいた息子を病院に連れてきていた。当時は別の建物にある検査室で息子が検査を受けている間に、検査費を支払うために電動バイクで問題の建物に来ていた。バイクを出入り口の近くに止め、劉さんと入れ違いに中に入って階段を上り始めたところ、背後でガシャンという音が聞こえたため引き返した。すると、尹さんの電動バイクのそばで、苦しそうな表情をした劉さんと自転車が倒れていたという。

尹さんは「私は慌てて自転車を起こしたが、彼のケガの程度が分からなかったので、体を起こすことはできなかった。2次的なケガをさせてしまうのを恐れたから。その後、すぐに他の人が来たので、(彼らに任せて)私はその場を離れて(息子がいる)2階に上がった」と振り返った。
ところが、その日の夜に地元の警察から電話があり、「あなたは人をはねた(疑いがある)。交通警察まで例の電動バイクに乗って出頭するように」と言われた。尹さんが警察に行くとそこには劉さんの家族が来ており、「あなたは事故を起こして逃げた」「民事事件ではなく刑事事件にする」「痕跡鑑定を申請する」と主張したほか、「すでに治療費に3万元(約62万円)以上かかっており、障害鑑定も受ける予定だから賠償せよ」と要求してきた。
劉さんは70代で同病院に入院していた。尹さんは調書を取られた後、その日は帰宅した。「自分は全くぶつかっていないのに証拠がなく(無関係であることを)立証できない」と、悔しさから眠ることができなかったという。
22日、尹さんは再び警察から電話を受け、「鑑定の結果が出たので来てほしい」と告げられた。尹さんが出頭すると、報告書には尹さんのバイクと劉さんの自転車に接触痕があると記されていた。劉さんの家族は「賠償しないのなら訴える」と主張していた。警察からどうするかと聞かれた尹さんは「そもそも相手にぶつかっておらず、私は断固として賠償するつもりはない。もし相手が訴えるなら徹底的に争う」と答えた。
その日の午後5時ごろ、尹さんと劉さんの家族が警察署で言い争いを続けていた際、警察が改めて現場の病院を詳しく調べたところ、建物内の目立たない位置に設置されていた監視カメラの映像に、尹さんと劉さんがすれ違う時の様子が映っているのを発見。映像で、両者が全く触れていないことが確認された。自転車とバイクの接触痕は劉さんが倒れた際に接触してできたものとみられた。
双方がこの映像を確認すると、劉さんの家族は急に態度を一変させた。劉さんの孫だという人物が尹さんに歩み寄って握手を交わし、そのまま謝罪もなく立ち去った。尹さんはこの態度に不満を覚えた。謝罪要求に応じなかったため、SNS上で監視カメラの映像と共にこの件を投稿。ネット上で大きな話題になったことで、後日、劉さんの孫が地元政府の関係者の付き添いの元、尹さんの自宅を訪れて直接謝罪した。
尹さんは「この件はここしばらくずっと心理的な負担だった。家には病気の母がいて、子どもも2人いる。謝罪してくれたことで、ようやく一件落着し、生活も再び平穏を取り戻せる」と語った。(翻訳・編集/北田)
自転車を押した高齢男性が転倒、助けに駆け付けた男性が加害者扱いされる pic.twitter.com/PH5TVfq6L5
— レコードチャイナ (@recordchina) September 29, 2025