2025年11月10日、環球時報は、中国で人工知能(AI)を用いて制作したショートドラマが流行しているとするフランスメディアの報道を紹介した。

記事が紹介したのは、仏AFPの7日付報道。

記事によると、AFPは「山海奇鏡之劈波斬浪」というAIショートドラマを例に挙げ、竜や魅力的な主人公、感動的なストーリーが話題を呼び、オンラインでの再生回数が5000万回を突破したと紹介した。

また、「九尾狐男妖愛上我」という作品も現実離れした映像と独創的な展開がSNSで大きな反響を呼んでいると伝え、ファンからは「あまり深く考えずに見れば、AIならではの少し不思議な映像も気にならない」といった声が聞かれるとした。

そして、これらのショートドラマ制作にあたっては、複数のAIツールが「分業」で活用されていると紹介。ある作品監督の話として、ストーリーはChatGPTに考えさせ、キャラクターや場面の画像はMidjourney(ミッドジャーニー)で生成、動画は可霊(Kling)、劇中音楽はSunoという専門の生成AIが担当しており、人間のスタッフが行うのは編集作業と声優の吹き替えだけだと伝えた。

さらに、スマホで手軽に楽しめる数分以下という短い尺が、まだ完全とは言えないAIの描画力にとってはむしろ好都合であるとも指摘し、ショートドラマに対するニーズがAIによる奇抜で斬新な作品を次々と生み出す原動力になっていることを説明した。

AFPは一方で、AIドラマの急速な広がりには懸念の声も上がっており、最大のネックは著作権問題だと指摘。AIが無数の既存作品を学習して成長する中で、学習の対象となった作品の作者に対する対価が支払われていないこと、そしてなにより新たに生み出された作品自体が今後簡単にコピーされてしまう危険性もあるとした。

このような懸念に対して、作品監督からは「たとえAIを使っていても、物語やキャラクターのデザインはすべて私たち自身の想像力から生まれたもの。これらは紛れもないオリジナル作品だ」との反論も聞かれるという。また、上海市にある映像学校の講師は、AIがコストを下げるだけでなく「モンスター作品を生み出す」力を持っており、将来的にはあらゆる映像制作者にとって必要な存在になるとの見解を示している。

中国のAIドラマブームが映像表現の垣根を一気に下げると同時に、「創作」の定義や、それを守るためのルールづくりという難しい問題も浮き彫りにした、というのがAFPの見方のようだ。(編集・翻訳/川尻)

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