ソングライター兼プロデューサーのスコット・ウォーカーは、パワフルなポップシンガーとして活躍後、アバンギャルドな冒険主義者となり、デヴィッド・ボウイ、トム・ヨークなどの歌い手に影響を与え、76歳でその生涯を閉じた。ウォーカーの所属レーベル、4ADがミュージシャンとしての人生と功績を称えるコメントと共に彼の死を公表した。
「深い悲しみをもってスコット・ウォーカーの死をお伝えする」で始まる4ADのコメントは次のように続く。「ノエル・スコット・エンゲルとして誕生した天才的な男は、半世紀に渡って何千という人々の人生を豊かにしてきた。最初はザ・ウォーカー・ブラザーズの3分の1として、のちにソロアーティスト、プロデューサー、コンポーザーとして、不屈のオリジナリティを世間に披露してきた。スコット・ウォーカーはイギリスの音楽シーンの最前線に立つユニークで、挑戦を厭わない巨人だった。大胆で探求好きな彼は果敢にも、人間の弱さとそれを取り巻く無神的な暗黒を深く追求する作品を数多く作った」
It is with great sadness that we announce the death of Scott Walker. Scott was 76 years old and is survived by his daughter, Lee, his granddaughter, Emmi-Lee, and his partner Beverly: https://t.co/awaFXWOkja pic.twitter.com/nd6MYVmWaO— 4AD (@4AD_Official) 2019年3月25日
1943年に誕生したウォーカーは、ウォーカー・ブラザーズとしてジョン・マウス、ゲイリー・リーズとともに人気を博した。イギリスではビートルズのライバルと目されていたこのグループは「涙でさようなら(原題:Make It Easy On Yourself)」や「太陽はもう輝かない(原題:The Sun Aint Gonna Shine Anymore)」など、数多くのヒット曲をリリースしている。
グループ解散後もウォーカーはソロアーティストとして活動を続け、『スコット』、『スコット2』、『スコット3』、『スコット4』とアルバム4枚をリリースしたのち、ウォーカー・ブラザーズを再結成して、グループ最後の作品をリリースした。
2012年のソロ作品『ビッシュ・ボッシュ』、2014年のSunn O)))とのコラボ作品『Soused』、2018年のナタリー・ポートマン主演のドラマ映画『ヴォックス・ルクス』のサウンドトラックなど、近年のウォーカーは活発に多くの作品を発表していた。
2010年に日本公開された伝記映画『スコット・ウォーカー 30世紀の男』予告編。
「ティーンネイジャーのアイドルから、文化的アイコンと成長したスコットが若い世代に残したレガシーは類い稀な音楽だ。一度聞いたら忘れられない歌声を持つ卓越した作詞家であり、クリエイティブな音楽の最前線で活動する神格化された革新者の一人として認められてきた彼は、数多くのアーティストに影響を与えたことも広く知られている」と述べ、4ADのコメントは続く。「彼のヴィジョンの大きさとダイナミズムが映画とダンスに新たな次元を与え、ジャンルを超えた音楽と型にはめられることを拒絶する純粋なオリジナリティで、聞く者を圧倒してきた」
ウォーカーの死を知った多くのアーティストが彼の死を悼んでいる。トム・ヨークは次のようなツイートを投稿した。「スコット・ウォーカーの死を知ってとても悲しい。彼はレディオヘッドと自分に巨大な影響を与えたし、自分の声と歌詞の使い方を教えてくれた。メルトダウンで一度彼に会ったが、本当に優しくて、紳士的なアウトサイダーだった。彼の死が本当に悔やまれる」
So very sad to hear that Scott Walker has passed away, he was a huge influence on Radiohead and myself, showing me how i could use my voice and words. Met him once at Meltdown, such a kind gentle outsider. He will be very missed. https://t.co/v33Ey91hbn— Thom Yorke (@thomyorke) 2019年3月25日
レディオヘッドのプロデューサー、ナイジェル・ゴドリッチもTwitterで「スコット・ウォーカーのニュースは本当に悲しい。彼は正真正銘の偉人の一人だ。非常にユニークな本物のアーティスト。『OKコンピューター』のレコーディングに向かう初日、チズウィック・ハイ・ストリートで自転車に乗っている彼とすれ違った。
1997年にウォーカーから誕生日メッセージを受け取ったデヴィッド・ボウイは、ウォーカーから影響を受けたミュージシャン仲間の気持ちを「子供の頃からずっと彼は自分のアイドルであり続けた」と代弁していた。