8月17日・18日のサマーソニックにヘッドライナーとして登場し、再び鮮烈なパフォーマンスを繰り広げたマネスキン。17日・東京公演の模様をレポート。
【写真ギャラリー】マネスキン・サマソニ東京公演 ライブ写真(全30点)
開演の5分前。MARINE STAGEのアリーナ席は観客で埋め尽くされ、スタンドも4階ですら空席を探すのが困難なほどの大入り。それこそ日中からマネスキンのTシャツを着たファンを至るところで見かけたし、幕張メッセ内に設けられたバンドの特設ブースも盛況で、長蛇の列が途切れなかったという。洋楽不況が囁かれる時代にスタジアムは超満員で、始まる前からミラクルな景色に胸が熱くなる。
(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.
すべてのはじまりは2年前のサマーソニックだった。ヴィクトリアは本誌の来日直前インタビューで「あの時から私たちは日本と、そして日本のオーディエンスと恋に落ちた」と振り返っているが、いまや伝説となったパフォーマンスを皮切りに、3rdアルバム『RUSH!』は国内でも大ヒットを記録し、昨年12月の再来日アリーナ・ツアーも全公演を完売させ、バンドと日本の絆は揺るぎないものに。そして、「ヘッドライナーは自分で作っていく」と語るクリエイティブマン・清水直樹代表は、この相思相愛のストーリーに未来を託し、マネスキンを今年の顔に大抜擢した。
もちろん、2022年の頃とは状況が大きく違う。当時はユーロヴィジョン優勝後の世界的ブレイクを経て鳴り物入りで登場したとはいえ、あくまで新人バンドという挑戦者の立場から、45分の持ち時間で一大旋風を巻き起こしていった。しかし今回は、マネスキンの魅力と革新性を知り尽くし、期待値もとことん膨れ上がったオーディエンスが大勢見守るなか、90分の完璧なショウを届けなければならない。
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結論からいうと、彼らは凝った演出やカバーなどのサプライズ、安易なファンサービスに頼ることなく、小細工なしの正面突破によって怒涛のステージを繰り広げていった。昨年末のセットリストから大きな変更はなかったが、アコースティック・セクションを割愛し、緩急よりダイナミズムに振り切って凝縮。
定刻の19時25分より少しだけ早く場内が暗転すると、張り裂けんばかりの歓声に包まれながら、まずはトーマスがギターをかき鳴らしつつ登場。イーサンのドラム、ヴィクトリアのベースも続いて「DON'T WANNA SLEEP」のイントロを威勢よく演奏すると、たちまち2022年の記憶が呼び起こされる。あの時も度肝を抜かれたものだが、音響が大味になりがちな野外スタジアムで、なぜここまで太く明瞭なサウンドを鳴らせるのだろうか。そこからシームレスに「GOSSIP」を挟んで、2年前のサマソニではオープニングを飾った「ZITTI E BUONI」のギター・リフが響き渡ると、あの頃にはなかった花道をフル活用。昨晩のソニックマニアでも共演したヴィクトリアとトーマスによる、火を吹くようなバトル・パートが視覚的にもエキサイトさせる。
(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.
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「ハロー、エブリバディ!」とご機嫌に挨拶したダミアーノは、日本とサマソニに帰ってきた喜びを伝えたあと、「HONEY (ARE U COMING?)」の曲中で投げキッスもプレゼント。フジロックを沸かせたザ・キラーズの影響も感じさせる同曲が、昨年末のプレイ時よりアンセムとして仕上がっていたのも印象的で、音源よりもラフな歌と演奏が疾走感をもたらし、コール&レスポンスもこの日屈指の声量だった。「SUPERMODEL」ではダミアーノが身をくねらせながらモデルのごとく花道を練り歩き、曲のアウトロでジャンプを促すと、アリーナ席が荒波のように揺れる。フレディ・マーキュリーを想起させるヒゲを蓄え、色気と余裕を増した彼のセクシーな一挙一動は、その後も観客を大いに悶絶させた。
イーサン、トーマスの覚醒
長尺のインスト・パートから雪崩れ込み、赤い照明に照らされながら勇ましく不穏なインダストリアル・ミュージックを奏でる「GASOLINE」では、イーサンのドラムに進化の兆しを感じた。鉄球のようなキックとハード・ヒットはそのままに、グルーヴ感の引き立て方が飛躍的に向上。
(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.
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ここまでラウドでアップビートな楽曲を連発してきたのもあり、「今日のステージはファッキン・ホットだ」と言って座り込みながら「CORALINE」を歌うダミアーノ。歌の節回しはラテン・ロック、哀愁と複雑な曲構成はイタリアン・プログレを想起させる初期のナンバーで前半戦を終えると、「Beggin」ではダミアーノが第一声を発するなり待ってましたの大歓声。コール&レスポンスの応酬や、スタンド席までジャンプの輪が広がる光景を見渡しながら、ダミアーノは2年前にこのカバーを披露したときと同じように「日本人は大人しいんだって聞かされてきたけど、嘘っぱちじゃないか!」と思ったかもしれない。
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「FOR YOUR LOVE」では、半裸になったダミアーノが持つライトに照らされながら、トーマスが荒々しくファンキーなソロを披露。必殺の人気曲「I WANNA BE YOUR SLAVE」でも嬌声とハンドクラップが鳴り響くなか、張り裂けんばかりのノイズで熱狂空間をドライブさせた。さらに息つく暇もなく、リズム隊がヘヴィに激突するインスト・パートを挟んで「MAMMAMIA」へ。ダンサブルな躍動感とともに「マンマ・ミーア!」とみんなで叫んだあと、ツェッペリン色が濃厚になった「IN NOME DEL PADRE」ではトーマスがPAテントまで突っ込み、観客に担がれながらソロを弾き倒す。この日はギターヒーローとして覚醒した彼の独壇場で、何度も花道に飛び出してはアクロバティックなプレイで魅了していた。
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ついに終盤。煽情的な「BLA BLA BLA」のあと、本編ラストの「KOOL KIDS」では前回のジャパン・ツアーと同様、選ばれたオーディエンスを壇上に呼び寄せ、即席のパーティ空間を作り上げる。
アンコールを彩った祝福のバラード
アンコールでは再びトーマスがひとりで現れ、7分間にわたってドラマティックな泣きのギターソロを奏でだす。ここ日本で2年前、ギターソロのスキップ論争が巻き起こったのもいまや懐かしいが、長いロック不遇の季節に終止符を打ち、新時代の到来を告げたバンドが、名実ともに天下を獲ったことを示すシーンだった。
本稿ではそのあとの「THE LONELIEST」を最大のハイライトに挙げたい。2年前のサマソニ出演直後、2022年10月にリリースされた王道のロックバラードは、このバンドがスタジアムを制覇するために必要だった最後のピースであり、ビッグスケールの会場でこそ真価を発揮する楽曲なのだと思い知らされた。バンドも観客も全力で駆け抜けてきたからこそ、夢の終わりを仄めかす”Tonight is gonna be the loneliest”(今夜はもっとも寂しい時間になりそうだ)という一節はほろ苦いが、曲調そのものは共に歩んできた時間を祝福するようでもあり、冒頭でトーマスが弾いたギターはデヴィッド・ボウイの「Heroes」をうっすら想起させるし、マネスキン版の「We Are the Champions」みたいにも聞こえた。
フィナーレを飾ったのは2度目の「I WANNA BE YOUR SLAVE」。アリーナ一帯が最後の力を振り絞りながら飛び跳ね、声が枯れるほどの大合唱を巻き起こす。そして、ダミアーノは日本語で「ありがとうございます!」と言ってステージを去り、花道にやってきたイーサンが天高くスティックを放り投げて一礼すると、2度目の伝説を讃えるように花火が舞った。
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マネスキン@サマーソニック セトリプレイリスト
東京:https://ManeskinJP.lnk.to/SS2024RS
大阪:https://ManeskinJP.lnk.to/SS24OSRS
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開演の5分前。MARINE STAGEのアリーナ席は観客で埋め尽くされ、スタンドも4階ですら空席を探すのが困難なほどの大入り。それこそ日中からマネスキンのTシャツを着たファンを至るところで見かけたし、幕張メッセ内に設けられたバンドの特設ブースも盛況で、長蛇の列が途切れなかったという。洋楽不況が囁かれる時代にスタジアムは超満員で、始まる前からミラクルな景色に胸が熱くなる。
(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.
すべてのはじまりは2年前のサマーソニックだった。ヴィクトリアは本誌の来日直前インタビューで「あの時から私たちは日本と、そして日本のオーディエンスと恋に落ちた」と振り返っているが、いまや伝説となったパフォーマンスを皮切りに、3rdアルバム『RUSH!』は国内でも大ヒットを記録し、昨年12月の再来日アリーナ・ツアーも全公演を完売させ、バンドと日本の絆は揺るぎないものに。そして、「ヘッドライナーは自分で作っていく」と語るクリエイティブマン・清水直樹代表は、この相思相愛のストーリーに未来を託し、マネスキンを今年の顔に大抜擢した。
もちろん、2022年の頃とは状況が大きく違う。当時はユーロヴィジョン優勝後の世界的ブレイクを経て鳴り物入りで登場したとはいえ、あくまで新人バンドという挑戦者の立場から、45分の持ち時間で一大旋風を巻き起こしていった。しかし今回は、マネスキンの魅力と革新性を知り尽くし、期待値もとことん膨れ上がったオーディエンスが大勢見守るなか、90分の完璧なショウを届けなければならない。
(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.
結論からいうと、彼らは凝った演出やカバーなどのサプライズ、安易なファンサービスに頼ることなく、小細工なしの正面突破によって怒涛のステージを繰り広げていった。昨年末のセットリストから大きな変更はなかったが、アコースティック・セクションを割愛し、緩急よりダイナミズムに振り切って凝縮。
鬼気迫るテンションは8カ月前の来日公演と比べものにならないほどで、4人のメンバーと大観衆がどこまでも高め合っていく光景は圧巻だったし、現行のロックシーンでこれ以上のライブは想像しづらく、平均年齢24歳のバンドは絶対王者の貫禄すら放っていた。
定刻の19時25分より少しだけ早く場内が暗転すると、張り裂けんばかりの歓声に包まれながら、まずはトーマスがギターをかき鳴らしつつ登場。イーサンのドラム、ヴィクトリアのベースも続いて「DON'T WANNA SLEEP」のイントロを威勢よく演奏すると、たちまち2022年の記憶が呼び起こされる。あの時も度肝を抜かれたものだが、音響が大味になりがちな野外スタジアムで、なぜここまで太く明瞭なサウンドを鳴らせるのだろうか。そこからシームレスに「GOSSIP」を挟んで、2年前のサマソニではオープニングを飾った「ZITTI E BUONI」のギター・リフが響き渡ると、あの頃にはなかった花道をフル活用。昨晩のソニックマニアでも共演したヴィクトリアとトーマスによる、火を吹くようなバトル・パートが視覚的にもエキサイトさせる。
(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.
(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.
「ハロー、エブリバディ!」とご機嫌に挨拶したダミアーノは、日本とサマソニに帰ってきた喜びを伝えたあと、「HONEY (ARE U COMING?)」の曲中で投げキッスもプレゼント。フジロックを沸かせたザ・キラーズの影響も感じさせる同曲が、昨年末のプレイ時よりアンセムとして仕上がっていたのも印象的で、音源よりもラフな歌と演奏が疾走感をもたらし、コール&レスポンスもこの日屈指の声量だった。「SUPERMODEL」ではダミアーノが身をくねらせながらモデルのごとく花道を練り歩き、曲のアウトロでジャンプを促すと、アリーナ席が荒波のように揺れる。フレディ・マーキュリーを想起させるヒゲを蓄え、色気と余裕を増した彼のセクシーな一挙一動は、その後も観客を大いに悶絶させた。
イーサン、トーマスの覚醒
長尺のインスト・パートから雪崩れ込み、赤い照明に照らされながら勇ましく不穏なインダストリアル・ミュージックを奏でる「GASOLINE」では、イーサンのドラムに進化の兆しを感じた。鉄球のようなキックとハード・ヒットはそのままに、グルーヴ感の引き立て方が飛躍的に向上。
クイーンと比較されがちなマネスキンだが、この夜の張り詰めた空気感、硬質かつ重厚な鋼のアンサンブルから連想させられたのは『Presence』期のレッド・ツェッペリン。イーサンが力強くリズムを注入し、ヴィクトリアがメロディックなベース・ラインを奏でることで、ジミー・ペイジ役のトーマスは自由奔放に暴れ回ることができる。
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ここまでラウドでアップビートな楽曲を連発してきたのもあり、「今日のステージはファッキン・ホットだ」と言って座り込みながら「CORALINE」を歌うダミアーノ。歌の節回しはラテン・ロック、哀愁と複雑な曲構成はイタリアン・プログレを想起させる初期のナンバーで前半戦を終えると、「Beggin」ではダミアーノが第一声を発するなり待ってましたの大歓声。コール&レスポンスの応酬や、スタンド席までジャンプの輪が広がる光景を見渡しながら、ダミアーノは2年前にこのカバーを披露したときと同じように「日本人は大人しいんだって聞かされてきたけど、嘘っぱちじゃないか!」と思ったかもしれない。
(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.
「FOR YOUR LOVE」では、半裸になったダミアーノが持つライトに照らされながら、トーマスが荒々しくファンキーなソロを披露。必殺の人気曲「I WANNA BE YOUR SLAVE」でも嬌声とハンドクラップが鳴り響くなか、張り裂けんばかりのノイズで熱狂空間をドライブさせた。さらに息つく暇もなく、リズム隊がヘヴィに激突するインスト・パートを挟んで「MAMMAMIA」へ。ダンサブルな躍動感とともに「マンマ・ミーア!」とみんなで叫んだあと、ツェッペリン色が濃厚になった「IN NOME DEL PADRE」ではトーマスがPAテントまで突っ込み、観客に担がれながらソロを弾き倒す。この日はギターヒーローとして覚醒した彼の独壇場で、何度も花道に飛び出してはアクロバティックなプレイで魅了していた。
(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.
ついに終盤。煽情的な「BLA BLA BLA」のあと、本編ラストの「KOOL KIDS」では前回のジャパン・ツアーと同様、選ばれたオーディエンスを壇上に呼び寄せ、即席のパーティ空間を作り上げる。
「魔音棲琴」の漢字Tシャツを着た青年がトーマスの横でエアギターしたり、日の丸とイタリア国旗が一緒に揺れていたりと、マネスキンと日本の蜜月を象徴するような光景だった。最後はエディ・ヴァン・ヘイレンばりのタッピング奏法も披露したトーマスが、エフェクターをいじり倒してノイズを撒き散らしたまま本編は終了した。
アンコールを彩った祝福のバラード
アンコールでは再びトーマスがひとりで現れ、7分間にわたってドラマティックな泣きのギターソロを奏でだす。ここ日本で2年前、ギターソロのスキップ論争が巻き起こったのもいまや懐かしいが、長いロック不遇の季節に終止符を打ち、新時代の到来を告げたバンドが、名実ともに天下を獲ったことを示すシーンだった。
本稿ではそのあとの「THE LONELIEST」を最大のハイライトに挙げたい。2年前のサマソニ出演直後、2022年10月にリリースされた王道のロックバラードは、このバンドがスタジアムを制覇するために必要だった最後のピースであり、ビッグスケールの会場でこそ真価を発揮する楽曲なのだと思い知らされた。バンドも観客も全力で駆け抜けてきたからこそ、夢の終わりを仄めかす”Tonight is gonna be the loneliest”(今夜はもっとも寂しい時間になりそうだ)という一節はほろ苦いが、曲調そのものは共に歩んできた時間を祝福するようでもあり、冒頭でトーマスが弾いたギターはデヴィッド・ボウイの「Heroes」をうっすら想起させるし、マネスキン版の「We Are the Champions」みたいにも聞こえた。
フィナーレを飾ったのは2度目の「I WANNA BE YOUR SLAVE」。アリーナ一帯が最後の力を振り絞りながら飛び跳ね、声が枯れるほどの大合唱を巻き起こす。そして、ダミアーノは日本語で「ありがとうございます!」と言ってステージを去り、花道にやってきたイーサンが天高くスティックを放り投げて一礼すると、2度目の伝説を讃えるように花火が舞った。
【写真ギャラリー】マネスキン・サマソニ東京公演 ライブ写真(全30点)
(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.
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