今年7月にミック・ジャガーは76歳になる。ジャガーの永遠と思しき存在感は素晴らしいものだが、ローリング・ストーンズの熱狂的ファンの年齢層は45歳から75歳だ。つまり、彼らの多くはすでに退職した人たちやもうすぐ退職年齢に達する人たちである。今回ノー・フィルター・ツアーのスポンサーとなった団体にとって、このファン層は理想的なターゲットといえる。
今回のストーンズのアメリカツアーの最中、ファンがスタジアムに到着すると、そこで待ち受けているのはアライアンス・フォー・ライフタイム・インカムが手配した1台のバスだ。これは設立1年目のワシントンDCに拠点を置く非営利団体で、退職年金のオプションを広く知らしめるために金融サービス企業24社が設立した団体である。このアライアンスという団体が特定の金融アドバイザーを推薦することはないが、さまざまなファイナンシャル・プランニング・ツールや、年金保険・年金投資のような多種多様の非雇用所得オプションを試してみることを推奨する。この団体が今回のストーンズの唯一のスポンサーとなった背景には、この非営利団体のメンバーの一人とストーンズに付き合いがあったことがある(2018年に生命保険会社ジャクソン・ナショナルがナッシュビルで開催されたストーンズの博物館展示のスポンサーだった)。アライアンスはアメリカ合衆国の内国歳入法(USC 26)第501条C項の規定により課税を免除される(6)タイプの非営利団体で、今回のツアーのスポンサー契約のコストは通常の企業ブランドとのそれよりも「格段に少ない」のだが、オーガナイザーによると、ストーンズはこの団体の理念に興味を持って支持しているという。
非営利団体アライアンスのエクゼクティブ・ディレクター、ジェーン・スタットラーがローリングストーン誌に次にように説明した。「現代の問題点の一つが、人々は年をとっても充実した人生を送りたいと考えていても、退職について考えていない人が多いことです。そこで私たちは2018年6月からストーンズと話し合いを進めてきて、今回のツアースポンサーの話に飛びつきました。
また、ツアー中のすべての会場で「最高の場所」に団体名が登場することと、バンドと同団体が共同で行うオンライン・キャンペーンを通じて、ストーンズのコンサートに来る150万人のファンと、彼らのソーシャルメディアのフォロワー2400万人に、この非営利団体の名前が知れ渡ることを望んでいると、スタットラーが付け加えた。「私たちはここでバンドと一緒に壁を打ち破っていると思います。それというのも、今回私たちはストーンズという名前とブランド提携しており、ストーンズからは多くの人たちと直接話してもよいと許可をもらっているので、”長生きしたせいで貯蓄額では生活を賄えない”という社会問題をこれまでよりも広く知らしめる機会を得たわけです」とスタットラー。今回のストーンズとの契約は、同団体がミュージシャンと提携する最初のキャンペーンで、今後も同じような契約の可能性が広がっている。スタットラーは「来年ボブ・ディランがツアーを行うと聞いています。彼との可能性だってあるかもしれませんよ」と述べた。
アライアンス・バスでは、Google Cardboardを使って、ストーンズが会場入りするところから始まるツアーの舞台裏を公開する予定である。今回のキャンペーン中、ストーンズと長年ツアーを行っているツアーマネージャーなどのツアースタッフの何人かが、リスクの高い仕事に従事している例としてフィーチャーされる予定で、彼らもバスの中で最適な退職年金オプションを探ることになっている。
しかし、ストーンズが自身の退職プランを公開することはないだろう。これまで彼らはライブ活動をやめる計画を一切語っていない。