『PRIDE』の裏側も赤裸々に描いた衝撃作『スマッシング・マシーン』【インタビュー】ベニー・サフディ監督「リアルで正確な 90 年代後半の日本を再現することにこだわった」

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『PRIDE』(プライド)――その名を耳にした瞬間、いまなお胸の奥がざわつく人は少なくないだろう。とりわけ、90年代後半から2000年代初頭の熱狂をリアルタイムで体感した40代後半~50代の男性にとって、それは単なる格闘技イベントではなく、“時代そのもの”を象徴する存在だったのではないだろうか。


1997年に産声を上げた総合格闘技イベント『PRIDE』。その幕開けとなった『PRIDE.1』は、高田延彦vsヒクソン・グレイシー戦を実現するために開催された、一夜限りの大会だった。プロレス最強幻想を背負った高田に、日本中のプロレスファンが感情を重ね、固唾を呑んで見守った世紀の一戦。しかし、その結末はあまりにも残酷だった……。熱狂の先に待っていたのは、希望ではなく、非情な現実。だからこそ、この試合はいまなお多くの人の記憶に深く刻み込まれているのだろう。

しかし、東京ドームを包み込んだ異様な熱気と熱狂は、一夜限りで終わることを許さなかった。こうして大会は『PRIDE ナンバーシリーズ』として継続され、日本格闘技史に残る巨大ムーブメントへと発展していく。

そして本作『スマッシング・マシーン』で描かれるのは、その『PRIDE.2』から参戦し、“霊長類ヒト科最強の男”の異名で人気を博した格闘家、マーク・ケアーの壮絶な半生だ。鍛え抜かれた肉体と圧倒的な強さでマット界を席巻した男は、栄光の裏で何を抱え、何と闘い続けていたのか。あの時代の熱狂を知る者ほど、胸に迫る物語となっている。

演じるのは自身もリングの上で戦っていたドウェイン・ジョンソン。
屈強な肉体と運動能力、さらには繊細な心理表現を駆使して織り成した衝撃作が5月15日(金)より全国公開を迎える。そこにはどんなこだわりや熱い思いが込められているのか。ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子(監督)賞を獲得したサフディ監督に単独で話を訊いた。

まずサフディ監督に伝えたいのは「ありがとう」の気持ちです。というのも、本作は格闘家マーク・ケアーの物語でありながら、蓋を開けると日本で勃興した『PRIDE』を一つの大きな舞台として描いているからです。日本の40~60 歳代の格闘技ファンには本当にたまらないものがあると思います。

そう言っていただけて大変嬉しいですね。日本のファンの皆さんが特別な思いを抱かれるイベントだからこそ、映像として再現するにあたり失礼のないように、情熱とこだわりを持って作りました。

90 年代終わりの日本の様子がリアルに映像化されていて驚かされます。どうやってあんな映像を作り出したのでしょうか?

今あなたがおっしゃったことそのままなのですが、我々が目指したのは「リアルで正確な 90 年代後半の日本を捉える」ことでした。私は、物事の不完全さにこそリアリティがにじみ出ていると思っていて、例えば本作における、布の継ぎ目の糸がほつれている様子だったり、ゴミ箱からはみ出たレジ袋の中途半端な感じとか、ものの対称性や非対称性に至るまで、意識して作り上げたつもりです。

リサーチ中やロケハン中も発見が盛りだくさんでした。
なるほど、日本で使用していたマットはこんな感じだったんだとか、照明はタングステンや蛍光灯だったのかとか、バックに投影される映像はLCDではなくてプロジェクションによるものだったんだとか。

もう一つ、今回の試合シーンは主に16mmで撮っているのですが、一部では当時の試合中継で使用していた池上通信機製のカメラを使っていて、捉えた映像を劇中で映し出したりもしています。
  
『PRIDE』の裏側も赤裸々に描いた衝撃作『スマッシング・マシーン』【インタビュー】ベニー・サフディ監督「リアルで正確な 90 年代後半の日本を再現することにこだわった」


「不完全さにこそリアリティが宿る」という意味では、主人公マーク・ケアーも不完全なところに魅力があふれる人物ですね。

私もそう思います。私は過去にアスリートをフィーチャーしたドキュメンタリーを撮ったり、自身も一時期ボクシングを習っていて、知り合いにボクサーがたくさんいるのですが、みな超人のように見えるのに決して完璧ではないし、無敵でもない。実は我々とさほど変わらないんですよね。

同じくマーク・ケアーには「優れた選手でありたい」「強く見せたい」という願望と、胸の内に抑制された脆い一面が存在します。かくも多層的な人間性にあえて一貫性を持たせようとするとき、いろんなところで歪みが生じてしまうもの。その意味で、本作は彼の人生における極めて複雑な瞬間に焦点を当てた物語と言えるでしょう。

内なる苦しみを吐き出すようなドウェイン・ジョンソンの繊細な演技にびっくりしました。彼の新たな一面をどのように引き出したのですか?

マーク・ケアーという役柄と深いところで繋がり合うためにも、ドウェインとは自身の人生経験やアイデンティティなどについてじっくり会話をしました。心の開示を相手に求めるならば自分がそれを体現しなければと思ったので、まずは私の側から過去の経験談も含めて全部さらけ出し、それを受けて彼もかなり深いところまで胸の内を打ち明けてくれて。


脚本にこう書いてあるからこう演じる、なんていう薄っぺらな映画には絶対したくなかったんです。だから撮影前には、(恋人役の)エミリー・ブラントを加えた3人で膝を突き合わせるようにして、互いに全部さらけ出しましたね。そうやって、ああ、ここは心を緩めてもいいんだ、安全領域なんだって思ってもらえる空気を作り出すことが何よりも重要でした。

面白いですね。互いに感情をさらけ出す手法は、ご自身が俳優としても活動されるサフディ監督ならではという感じがします。

そうですね。演技の世界を知っているからこそ、監督でありながら「こうすれば演じやすいかも」「いま何が妨げになっているのかな」と俳優としての視点や感覚で考え、彼らと逐一繋がれるのだと思います。なので、私は監督と言ってもモニター前にへばりついて指示を出すタイプでは全然ないんです。むしろ少しでも長くキャストと一緒に撮影セットにいて、この時間を共有していたいと考えちゃうんですよ。

最後にお聞かせください。『PRIDE』の関係者はこの作品をご覧になられたんでしょうか?

イエス! 観てくださった関係者の方からは「当時の『PRIDE』そのままだ!」「こんなに正確に再現されているなんて信じられない!」といった感想をいただきました。榊原信之サン(当時の運営スタッフで、後に運営会社DSEの代表取締役となる人物。
本作では大沢たかおが演じる)はご覧になったかどうか分からないのですが。ダナ・ホワイト(『UFC』のCEO兼社長)は観てくれていて、彼は『PRIDE』が大好きだったこともあって、この映画を心底楽しんでくれたようです。あと、あの時代を隅々まで知り尽くし、今回本人役で出演しているバス・ルッテンも撮影現場で「そう!まさにこれだ!」って言ってくれて嬉しかったですね。

『スマッシング・マシーン』5月15日より公開
監督・脚本/ベニー・サフディ 出演/ドウェイン・ジョンソン、エミリー・ブラント、ライアン・ベイダー、バス・ルッテン、オレクサンドル・ウシク、大沢たかお、石井慧、光浦靖子、布袋寅泰 配給/ハピネットファントム・スタジオ
2025年/アメリカ/上映時間123分

 

取材・文=牛津厚信
text:Atsunobu Ushizu
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