矢継ぎ早に経済対策を打ち出す中国政府に牽引される形で堅調な動きを見せる上海市場、対して米国の動きに大きく左右されて乱高下する香港市場。どちらも、景気回復のトップランナーの可能性が期待される中国市場として目が離せない。
中国市場の今後について、岡三証券・西胤智氏に聞いた。

――香港H株及び上海市場など本土株市場の見通しについて教えてください。

 まず香港市場ですが、ハンセン指数、H株指数ともに、昨年10月の底値以後、やはり中国本土市場の影響というよりも、むしろ米国など海外市場の動向に大きく影響されています。欧米の株式市場が安定しない限りは、香港市場も大きく左右されてしまうことは避けられないようです。

 ただ、最近は中国政府の様々な経済政策へのアナウンス効果などもあって、比較的安定した値動きを示しており、このまま3月末まではこの状態が続くと考えています。その背景には、3月には企業の本決算発表があり、決算の数字はむろん悪いんですが、むしろ4月以降の業績改善見通しに市場の焦点がシフトしてくるのではないかと思っています。

 従って、3月末まではH株指数で6000~8800ポイントのボックス相場が続くと予想しています。問題は4月以降ですが、欧米などの海外市場の動向次第としか言いようがありません。ただ、10月の最安値4900ポイントを割り込むことはないと思います。

――4兆元の総合景気対策など中国政府の景気対策と実行力は評価されているようですね。

 最近は、香港市場も以前ほど欧米市場の影響をダイレクトに受けなくなりつつあります。その背景にあるのが、中国政府の経済対策とその実行力だと思います。
今後も、10大産業振興策や鉄道インフラ、医療改革などの社会整備計画、地方政府独自の景気対策、さらに個人所得税減税、銀行の営業税減税などが予定されているといわれています。

 また、中国銀行の人民元貸出残高がここにきて急激に伸びており、従来のレベルの2倍程度に相当する1兆6000億元に急増。中国政府が着実に市中に流通するお金の量を増やしていることが分かります。実際、中国版の景況感指数「PMI」が08年11月の38・8から1月には45・3に改善。景気が上向くと思っている人が、半分近くになろうとしています。

 3月には「全人代」も行われますし、そこでまたサプライズがあるかも知れません。こうした中国国内の動きは「上海株式指数投信」といった上海の株価指数に連動するETFのほうがストレートに反映されるかもしれません。

――今後、中国株で期待できるセクターや銘柄を上げると?

 短期的な視点でみたテーマとしては、インフラ関係や政策支援、景気対策効果、第3世代携帯電話(3G)導入効果、そして農業支援、医療改革といった経済対策関連が中心になると思います。

 個別銘柄としては鉄鋼の馬鞍山鋼鉄(マーアンシャンアイロン)(00323)、セメントの安徽海螺(コンクセメント)(0914)、風力発電の高速伝動設備(ハイスピードトランス)(00658)といったところが面白いと思います。また、長期的に見れば現在割安感がある中国石油天然気(ペトロチャイナ)(00857)などが、いずれ復活してくると思っています。

 中国は世界で最初に経済を復活するのではないかとの期待があります。株式市場は景気回復を先取りしますから、早ければ今年の後半にもその兆候が現れてくるかもしれません。
(取材・文責:サーチナ・メディア事業部)

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