中国で、脳血管障害の後遺症、いわゆる「中風」に効果があるとされる漢方薬「安宮牛黄丸」が人気だ。ただし、1992年以前に作られたものに限る。
野生動物保護のため成分が変更されたためだが、専門家は「品質保証期間を過ぎており、かえって危険」と指摘。一方で、業界関係者によると、99%は人気を当て込んで新たに作られた「偽物」という。中国国際放送が報じた。

 1992年以前に作られたとされる「安宮牛黄丸」はインターネットなどで高額で取り引きされており、1粒3800元(29日為替レートで約5万1500円)からのオークション形式で売り出されたケースもあるという。「安宮牛黄丸」の製造元は、漢方薬の老舗として知られる北京同仁堂。かつては成分のひとつとしてサイの角を使っていたが、野生動物保護の法律を順守するため、1993年に水牛の角に変えた。

 そのため「今のものは効かない」、「昔の薬は、劇的に効いた」などの噂が広まり、高額で売り買いされるようになった。広東省中医院(漢方病院)脳科の黄燕主任によると、サイの角も水牛の角も、有効成分はほぼ同じ。含有率は違うが、「水牛の角ならば、増量すればよい」程度の話という。

 高額で取り引きされている「安宮牛黄丸」は製造後、おおむね18年以上が経過している。一方、保障期間は製造後5年間だ。同薬は1粒ずつ、ロウで密閉されている。
黄主任によると、薬材そのものは変質しないが、練りあわせるために使っている糖分などは変質する可能性がある。密閉用のロウが変化して、外気に触れている場合もある。そのため、「服用すれば、健康に悪影響を及ぼす危険がある」という。

 一方、薬品販売店をチェーン展開する広東金康薬房の鄭浩濤総経理によると、「古い『安宮牛黄丸』は医薬界の伝説。私も長年、見ていない。現在、出回っているものは、99%が偽物のはず」という。

 5年前にも評判になり、1粒5000元で求める人もいたが、品物は出なかった。そのころは、「後で儲かるかも」と考え、手元に置いておく人も、あまりいなかったので、今になって売りさばいているとは考えにくい。

 鄭氏の見方によると、現在、売り買いされている『安宮牛黄丸』は、時間経過による劣化を心配する必要だけはない、「新しい偽物」ということになる。(編集担当:如月隼人)

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