■男尊女卑は災いのもと
男児を好むのは、跡継ぎや「メンツ」の問題であり、女性の立場が弱いことも意味している。
しかし、安徽省の太湖県、宿松県、潜山県などの後進地域の人口問題に関する調査によると、ここ数年は息子より娘のほうが経済的な貢献度が高いという。こうした地域では若者はほとんど外へ出稼ぎに行く。男性の平均年収は8500元(約約11万円)で、そのうち実家への仕送りは約2000元(約2万6000円)。一方、女性の平均年収は6300元(約8万2000円)で、そのうち実家への仕送りは約4000元(約5万2000円)だ。
また、結婚の際も女性の嫁入り道具は基本的に女性が自分で稼ぐが、男性の両親は3万~4万元(約39万円~52万円)をつぎ込まなければならない。したがって、「男児を好むのは経済的な事情」と単純にまとめることはできない。
実際に、沿海部の豊かになった地域は、経済的に発展し、社会保障も日増しに整っているというのに、出生性比の上昇を効果的に食い止めることはできないでいる。
中国人口学会の田雪原常務副会長は、「問題の根源には男尊女卑という伝統的観念がある」と指摘する。多くの人にとって、産まれた子が男児であるか女児であるかは跡継ぎの問題であり、「メンツ」の問題でもある。急速に豊かになっている家庭では、「巨万の富を誰に残すか」が問題となり、心の奥底にある「息子に継がせる」という意識がかつてないほどに高まり、強烈になっているのだ。
家族や宗教的観念の強い地域では、男児の出生は家系が途絶えないということであり、家族の勢力の強さを意味する。男児を産んだ女性は家族から「用なし」と責められずにすみ、母親としての家庭や社会での地位が息子によって高められるのだ。
人民大学社会・人口学院の楊菊華教授は、男女不平等がもたらす性差別が男児を好む重要な原因のひとつだと指摘する。現在、中国の女性は教育レベル向上の伸びが男性とほぼ同じになっている以外、ほかの指標は明らかに男性より低い。経済面でも、女性は社会労働に広く参加しているが、仕事上の名声や収入は高くない。学校の生徒募集や労働求人でも、条件などが同じであれば、往々にして男性を採ることが多い。政治面でも、女性の政治参加率は男性や国際社会の女性の平均より大幅に低く、国家機関や党組織、企業、公的機関の責任者の中で女性の占める割合はわずか5分の1である。(つづく 編集担当:米原裕子)
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