中国国家品質監督検査検疫総局は4日、無錫松下冷機有限公司が7月30日に同局に対して冷蔵庫の大規模リコールを申し出たことをネット上で公示した。品質で定評のある日系企業による白物家電のリコールということで、多くの中国メディアがこの件について取り上げた。


 今回のリコールの対象となったのは、2007年3月から09年3月までに製造された29種類のパナソニック電気冷蔵庫36万5574台。冷媒をコントロールする部品が高温多湿の条件下で使用すると断線を引き起こし、冷蔵室が全く冷えないもしくは冷えすぎる状況が発生する可能性があるほか、冷媒が漏れて発煙や火災発生の恐れもあるという。同社は、対象製品について訪問サービス形式で無償検査と部品交換を行うことを明らかにしている。

 和訊網は今回のリコールについて、冷蔵庫を年間50万台生産している同社にとって重大事件であり、ハイエンド冷蔵庫市場で同社が勢いを弱めつつある中でまさに「泣きっ面に蜂」であると分析した。中国国内の調査会社による統計では、同社製冷蔵庫の2010年上半期における中国市場シェアは2%で、シーメンス、サムソン、LGといったほかの外資メーカーの後塵(こうじん)を拝したという。

 一方で、中国大手ポータルサイトの搜狐は、中国発展戦略研究会企業戦略委員会の専門家である于清教に取材を行ったところ、今回のリコールは短期的には困難を伴うことになるだろうが、同社が自ら品質問題を発見したこと、積極的にリコール申請を行ったことから、ブランドの伝播という点では得るものも大きいのではないかという回答を得たことを伝えた。同氏によれば、これにより「メイドインジャパン」の神話が崩れることはなく、むしろ今回の件で同社が家電業再編の波を受けて再び輝きを取り戻す底力を持っていることが明らかになったという。

 なお、中国では現在『家電製品リコール管理規定』のパブリックコメント稿が発表されており、今回のリコールは発表後初めての家電リコール事件となった。同規定は現段階では法的拘束力を持たないが、近い将来正式に発表されることになる見込みだ。いわば微妙な時期に発生したリコールについて、今後もしばらくは議論が続きそうだ。(編集担当:柳川俊之)

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