長江中・下流流域が50年来の深刻な干ばつ被害に見舞われている。各方面が原因解明や緩和方法の研究にあれこれ手を尽くす一方、「三峡ダムが干ばつを誘発しているのは」との指摘が国内世論の関心を集めている。
議論が活発化する中、5月31日に中国政府の高官が初めて、三峡ダム工事の設計に欠陥があることを認めた。新民晩報などが伝えた。

 国家水利部長江水利委員会洪水干ばつ災害減少弁公室の王井泉氏は、三峡ダム工事の設計段階で、大型ダム完成が生態環境に及ぼすマイナス影響を十分考慮しなかったことが原因で、ダム完成後、洞庭湖やボーヤン湖の貯水状況に何らかの影響が生じていることを認めた。今後、ダム貯水量の最適化を図り、ダム工事によるマイナスの影響を軽減する方針を明らかにした。

 王氏は、長江中・下流の大干ばつは三峡ダムが原因とする意見は誤りとの見方を示したが、三峡ダムが下流水域に悪い影響を及ぼしている事実は認めた。特に、三峡ダムに最も近い洞庭湖が受ける影響はかなり大きいという。
生態系にもたらされた問題として、下流の水生動植物への影響と、下流域の湖沼の水位低下と富栄養化現象の2点が挙げられるという。

 一部の識者は「干害防止機能に関する三峡ダムへの期待が高すぎることが、そもそも問題だ」と述べていることに対し、王氏も同意した。長江中・下流の干ばつがますます深刻化するにつれ、社会の三峡ダム関連議論が再び白熱化しそうだ。(編集担当:松本夏穂)

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