複数の中国メディアによると、中国・黒竜江省方正県にこのほど建てられた旧満州開拓団(満蒙開拓団)の慰霊碑が、国内世論の反感を買ってペンキを塗られるなど傷つけられたことを受けて、5日夜に方正県側にひそかに撤去された。方正県政府は翌6日朝にブログで碑を「処理した」と発表したが、中国メディアは「きちんと誤りを認め、謝罪すべき」「経緯を説明すべき」などと対応を批判している。


 新華網など複数の中国メディアによると、慰霊碑は5日夜に方正県政府にひそかに撤去された。方正県政府は翌6日朝、マイクロブログ(微博、中国版ツイッター)を通じて、慰霊碑がインターネットで大きな注目を集め、傷つけられたことから、「(開拓団員の)名を記した壁」を「処理した」と発表した。

 これに対し8日付の北京紙、新京報は「撤去して終わりではない」との見出しの署名記事で、「明確な謝罪もなく過ちも認めていない」と方正県政府の対応を批判。慰霊碑の建立が当初どのようなプロセスで決定されたのか、今回突然撤去された根拠は何なのか、大衆に説明しなければならない、と追及している。

 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報も8日付の社説で、「碑の建立は間違い」であったとし、「中国社会の基本的な価値観に抵触」した方正県政府は、「勇気を出して社会に謝罪すべき」だとしている。

 社説はさらに、中国の政府役人の多くはインターネットが中国の世論に及ぼす影響力に対する認識が足りないと指摘。「方正県の碑の建立は感情面では大きな問題だが、建立じたいは大きな問題ではない。うまく処理すれば、撤去さえすればそれですむ。だがぐずぐずしていると“小事”が大事に転じる可能性がある」と述べ、ネット世論が“暴走”し、反日世論の矛先が中国政府自身に向かうのを警戒している。(編集担当:阪本佳代)

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