重慶名物とされた、天秤棒を使う荷運び人が、減少の一途をたどっている。時代の流れには抗(あらがえ)えず、最盛期には50万人がいたと推定されているが、現在は激減すると同時に高齢化も進んでいる。
中国新聞社が報じた。

 天秤棒を使う荷運び人が多かったのは、重慶市が長江(ちょうこう)に臨む港湾都市であるために荷運びの需要が多く、街に坂が多かったためという。「流し」の運び人も多く、天秤棒を意味する「棒棒ー!(バンバンー!)」という客引きの声も響いていた。天秤棒を使う荷運び人自体も「棒棒」と呼ばれた。

 市民が家具や家電製品、大量の食品を買った時にも、荷運びを「棒棒」に依頼することが多かった。素人には「とても無理」と思える大きな家具も、綱などでゆわえて、バランスをとって器用に運んだ。

 多くは、農村部から出てきた人で、稼ぎはそれほどなかったが、力仕事を厭(いと)わなかった。しかし時代の流れとともに、需要が減ると同時に、つらい肉体労働に就こうという若者が激減した。

 重慶社会科学院によると、調査した40人の「棒棒」のうち9割は「自分の子どもにはやらせたくない仕事。継がせたくもない」と答えた。若い人は工場で働くか、技術を学んで仕事を得てほしいと考えている人が多い。調査対象のうち、最年少は42歳、最高齢は74歳だった。


 重慶大学の曾国平教授は、「現在のような『棒棒』は10年、または15年内にいなくなるだろう」との考えを示した。重慶社会科学院文史研究所の張鳳〓所長によると、農村部から都会に出てきて肉体労働に従事する人、いわゆる「農民工」は多いが、1980年以降の生まれの場合には多くは中学や高校を卒業しているからという。(〓は王へんに「奇」)

 親の代から都会に出てきている場合、「二世」は大学卒の学歴を持っている場合もある。そのため、職業選択についての視野が広く、体力だけに頼る仕事には就きたがらないからという。

 張所長は「『棒棒』という職業は最終的には消滅するだろう。肉体労働への需要がなくなるわけではない。しかし『棒棒』という職業形態は、都市の発展に適応できない」と説明。職を求める人にとっては、技術や能力を高めて、職種選びの選択肢を広げることが求められるようになるという。(編集担当:如月隼人)
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