女性は2012年12月、生まれたばかりのドーベルマンの子犬を購入した。飼いはじめた時期に顔や首、手などをかまれたが、女性は病院に行って狂犬病の予防接種を受けるなどの手当てを受けなかった。
2月21日になり、女性は体調が悪くなり広州市第八人民医院(病院)で診察を受けた。すぐに入院措置となったが、水や光を恐がる、嘔吐するなど典型的な狂犬病の症状が出た。女性は24日に死亡した。広州市中心部で狂犬病の感染が確認されたのは、約20年ぶりという。
中国では都市部で犬などのペットを飼う人が増えたが、義務づけられているにもかかわらず、狂犬病の予防接種を受けない人が多いとして、問題視されている。
中国政府・衛生部によると、2013年1月には報告が義務づけられている法定伝染病のうち、狂犬病で死亡した人が117人で、第1位のエイズの703人、第2位の肺結核の170人に次ぐ第3位だった。
報告された新規感染者は、HIV(エイズウイルス)が2407人、肺結核が10万6238人、狂犬病が113人だ。ウイルス性肝炎の12万9997人、新型インフルエンザの2319人など、新規感染者が多く確認されている伝染病は他にもあるが、狂犬病は死亡率が極めて高いという特徴がある。
日本国内では1956年来以来、犬、ヒトともに狂犬病の感染は発生していない。ただし、世界的に見れば狂犬病の感染が発生していない日本の方がむしろ例外的だ。1970年にはネパールを旅行中に犬にかまれた日本人男性が帰国後に発病し、死亡した。2006年にはフィリピンを旅行中に犬にかまれた日本人男性が帰国後に死亡する例が2件発生した。
狂犬病は犬だけでなく、すべての哺乳類が感染する可能性がある人獣共通感染症だ。動物にかまれるなどで感染してから発病するまでの潜伏期間は、傷の場所が上腕部など脳に近ければ2週間程度、脳から遠い場合数カ月以上になる場合がある。
万一、動物にかまれた場合には、傷口を石鹸水でよく洗い、さらに消毒して、感染リスクをできるかぎり低下させることが有効。感染したとしても潜伏期間中ならば予防ワクチンで発症を予防することが可能。発症してもごく初期ならばワクチンが効力を発揮したとの報告がある。ただし、本格的に発症してからの有効な治療法は存在せず、死亡率は100%近くに達する。
外務省は海外で狂犬病にかかっている恐れのある動物にかまれた場合、傷口の洗浄や消毒をし、必ず医療機関で受診するように、注意を促している。さらに、現地医療機関での受診の有無にかかわらず、帰国時に検疫所(健康相談室)に相談するよう求めている。