と言っても、映画『101回目のプロポーズ~SAY YES~』日本公開のお披露目会での余興。武田鉄矢がリン・チーリン林志玲)に“プロポーズ”した。
この日の武田は、リンの美しさを絶賛し、それと比べた自分の容貌や年齢をネタにした“自虐ギャグ”を何度も繰り返すばかり。へどもどした“プロポーズ”に、リンは「YES」とも「NO」言えずに苦笑。武田はそれでも「ボクは死にません!」として、自らも「20年後の星野達郎」として出演した同作品を見てほしいと訴えた。(写真はサーチナ撮影)

 ドラマ放送の1991年から20年あまりを経てのリメイク。しかし、「全くのリメイク」ではない。20年後の物語として、舞台を上海に移した。中国人が、台湾人が、日本人が出演した。スタッフも北京、香港、上海、台湾など各地から結集した。日本生まれの「とっておきの恋の物語」が、アジアに広がって戻ってきた。

■武田「日本からアジアに漏れだすものがある」

 テレビドラマ『101回目のプロポーズ』は台湾、香港、中国大陸部、韓国などで放送され、人気を博した。武田は「日本から、自然に周囲に漏れ出ているものがある」と表現。そのことを、「日本人としてもっと知っていてよいのでは」との考えを示した。


 映画『101回目のプロポーズ』では、リン・チーリンがTVドラマ版の矢吹薫に相当するイエ・シュン(葉薫)を、個性的なルックスとコミカルな演技で人気のホアン・ボー(黄渤)が、TVドラマ版の星野達郎に相当するホアン・ダー(黄達)を演じた。

 武田によると、「このホアン・ボーが実に面白くてイイ奴で」という。言葉は通じないが、武田と一緒にいる時には必ず「ドラえもん」を口ずさんでいた。「そういう日本の作品を知っていますよ」という意思表示だった。そのような文化を生み出した日本に対しての「敬意」を感じたという。

 なおホアン・ボーは、2012年12月に公開された『ロスト・イン・タイランド』に主演した。同作品は中国映画史上最高の12億元(約180億元)の興行収入を上げ、ホアン・ボーは「国民的な人気者」になった。

 武田は『101回目のプロポーズ』が中華圏などでも人気が出たことについて、「アジア人の好みに合致しているのだと思う」と分析。欧米でよくある恋愛物語のように美男美女が主役なのではない。パッとしない男と美女。「そうか、羽衣伝説のパターンなんだ」と気づいたという。そして、「恋をするのに、自分の分際など忘れてしまえ」というメッセージがある。
だから、みると元気が出てくる。武田は、比較として適当かどうかとは考えてしまうと述べた上で、「その意味では、カンフー映画と同じかも」との考えを示した。

 映画『101回目のプロポーズ~SAY YES~』では、「20年後の星野達郎」として出演した。撮影時には「中国という国を、ひとまとめでとらえるのは、違うんだな」と感じたという。撮影や照明などさまざまな分野別に、北京、上海、そして香港、台湾と、各地のスタッフが集まった。「それぞれのエリアが自らにプライドを持っている」ことを実感したという。

 だから撮影場所にも熱気や活気があった。力を合わせてベストを求める現場だったという。武田は「まるで、三国志の世界のようだった」と表現した。

 出演者やスタッフは、武田に対して「特別な感情」を持っていたという。若いころ、テレビドラマの『101回目のプロポーズ』に感動し、そして映画の世界を目指した人が多かったからだ。リン・チーリンも、武田と共演し、今、この場にいることを「光栄です」と繰り返し、「武田さんはずっと、私のアイドルでしたから」と言った。


 ちなみに、「アイドル」は、日本語でも中国語でも使う「偶像」の直訳と思われる。日本で「アイドル」といえば「若いイケメン男性」や「ルックスのよい少女芸能人」のイメージが強いが、中華圏では年齢やルックスに特に関係なく「あこがれの対象」を指す。リンがドラマの『101回目のプロポーズ』を見たのは高校生の時代だった。その頃からずっと、武田を尊敬しあこがれていたということだ。

■サービス精神と“自虐”ネタの武田鉄矢

 映画については真剣に語った武田だが、隣に美女「リン・チーリン」がいることで、緊張のしっぱなし。リンの「アイドル」発言にも過剰に反応した。「これまで生きていて、アイドルと言われたのは初めて」と興奮。さらに「芸能生活が長いから、(女性を見る)目もおごっているんだけど、こんなキレイな人はねえ…」と繰り返した。

 サービス精神が旺盛な武田だ。取材陣に対しても、ジョークを連発して盛り上げようとがんばった。ところが、「あまりの美女」が隣にいるせいか、“自虐”ネタがだんだん増えてきた。

 この日は、恋愛をテーマにした映画のお披露目会ということで、リンはウェディング・ドレス、武田は紋付袴(はかま)といでたち。
武田はリンの姿を何度も絶賛。それに比べて自分は「ジイサンの七五三みたいな恰好」などと言い出した。

 身長も、リンの方がずっと高い。カメラマンが「顔をもうちょっと近づけていただけませんか」と求めると、「こんなに背丈が違うんだから、しょーがねーだろ」と、再び自虐。しまいには、「じゃまだったら、いつでもどいてやるぞ」と言い出した。これには、カメラマンも苦笑するばかり。

 さらに、『101回目のプロポーズ』の人気を「羽衣伝説」に結びつけて説明したことを思い出したのは、「ほんとにねえ。天から降りてきたみたいにきれいだよなあ。羽衣を隠した若者気持ちが、よくわかるよ」、「鶴の恩返しだよなあ」とかなりきわどいことや、よくわかるような分からないような妙なことまで口走りはじめた。

■サービス精神と気配りのリン・チーリン

 一方のリンはさりげない気配りを見せた。2人の「身長問題」が出ると、膝を曲げて、顔が並ぶようにした。その後も、撮影タイムになるたびに、同様の姿勢。
それも実に自然で、膝を曲げた瞬間に気づかないほど。「身長問題に武田が気を使わないでよいように、まずは自分が気をつかった」ようだ。

 余興のひとつとして、武田があの名台詞「ボクは死にません」、「ボクは、あなたを幸せにしますから」をリンに向かって披露。リンは「本物ですね~」と感動、そして大喜び。

 次に、リンも同様に「ボクは死にません」を披露。ところがなんと、金八先生が髪をかきあげるポーズを加えた。これには皆が驚いた。「金八先生を知っていたんですか」との質問には、艶然と微笑んで「ええ。向こうでも有名ですから」と教えてくれた。あこがれていた武田に、尊敬の念を示したかったようだ。

■リン・チーリン「私は肉食系」にのけぞる武田

 リンは、恋愛観についての質問にも答えた。品格があり、一緒に笑ったり泣いたりできる人がよい。
そして、フィーリングが合い、ピュアでやさしく包んでくれ、ずっと一緒に歩いていける男性が現れたら必ずや、「愛の倍返しだ!」という。

 そして、リンは「肉食系男性が好き」、「私も肉食系かな」とも発言。これには武田ものけぞった。その直後に、もうひとつの余興として、武田が「20年前に戻ったら」と仮定して、リンにプロポーズ。

 リンと向き合った武田は、緊張しすぎたようで、なかなか言葉が出ない。言いかけては「ちょっと待って」を繰り返した。頭の中では、先ほどのリンの「肉食発言」がまだ響いていたようだ。最後に出てきたのが、「ボクと一緒になったら、お肉のほかにサラダもつけます」という、“轟沈ギャグ”のプロポーズ。リンは苦笑を続けるだけだった。

 武田はその後も興奮気味で、「だれか日本の男で、彼女を口説くヤツはおらんのか」と繰り返した。ちなみにこの日、リンはすべて日本語で対応した。リンには日本に短期留学した経験があるが、最近になり改めて日本語の猛勉強を始めたという。中国語ができない男性でも、リン・チーリンと恋を語るチャンスが出てきた。あるいは、リンにとって「日本語で特に語りあいたい人」ができたということ……かもしれない。

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 映画『101回目のプロポーズ~SAY YES~』は中国で2月12日に公開。初日の動員数は44万人で「満員御礼」、最終興行収入は30億円、動員数は660万人に達した。日本公開は10月19日。(編集担当:如月隼人)
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