河北省邯鄲市郊外の農村部で11月下旬、現地男性と結婚したベトナム人女性が100人以上、失踪したことが分かった。男性側が仲介者に10万元以上(10万元=約190万円)を支払っている例も明らかになっており、警察は詐欺事件として捜査を始めた。
事態の背景には、中国における深刻な「男余り」現象がある。中国新聞社などが報じた。

 「妻が失踪した」ケースでは、「11月20日夜に、村内に住む、同様に嫁いできたベトナム人女性と会食をすると言って出て行き、その晩は帰ってこなかった。翌日朝に戻ってきたが、昼までに再びいなくなり、戻ってこない」、「同じように中国人と結婚した姉と会うと言って出かけ、戻ってこない」などの報告がある。

 「ベトナム人妻大量失踪事件」では、ベトナム出身の女性1人が絡んでいたとされる。同女性自身が20年以上前にやって来て、現地男性と結婚した。2014年になり、居住地域で「ベトナム人女性を紹介する」と宣伝しはじめた。

 結婚が成立した場合、仲介者である同女性に「紹介料」を支払う方式だった。紹介料は、相手女性の容姿で決められ、「美女」の場合には11万5000元(約220万円)、「劣る」場合には10万元(約190万円)前後だったという。

 中国ではこれまでも、ベトナム人女性との結婚に絡む詐欺事件が多く発生している。11万5000元で“妻を手に入れた”という男性によると、話を持ちかけられた時には詐欺ではないかと疑ったが、仲介者の女性が「紹介するベトナム人女性が5年以内に逃げた場合には紹介料を返還し、法律上の責任もとる」との保証書を渡したため信用したという。

 仲介者の女性は、結婚相手の女性の「身分を証明する書類」も男性側に渡したという。
男性によると、結婚式も挙げたが、結婚の手続きはできていない。女性側の書類に不備があるためとして、役所が受け付けてくれなかったという。

 国際結婚詐欺事件の背景には中国、特に農村部で男女の人口比が男性側に大きく傾いていることがある。中国政府が1979年に開始した産児制限、いわゆる「一人っ子政策」の影響だ。男児出産を望む夫婦が、妊娠した際に医療機関で胎児の性別判定を求め、女児と分かった場合に人工中絶するケースが相次いだ。

 現在では、性別により出現リスクに違いのある遺伝病の疑いがある場合以外には、胎児の性別判定は厳禁されているが、それでも性別判定を行い、女児の場合には人工中絶する例があるとされる。

 若い女性の“希少価値”が高まったため、邯鄲市の農村部では「嫁を得るには、体重と同じだけの100元(約1900円)札、乗用車、新居と新品の家電製品セットが必要」などと言われている。体重分の現金は2万元、乗用車は4、5万元、新居と家電製品を合わせれば、40万元(約766万円)以上の資金が必要になる。

 それだけの金額を準備できる家は少なく、多くの人が「安価なベトナム人女性」と結婚することを選択しているという。

**********

◆解説◆

 中国では戸籍の移動の自由がないため、大都市、中都市、小都市、農村部といった序列で「戸籍の価値の落差」が発生した。例えば大都市都市出身の男性と農村部出身の女性が結婚する場合、夫婦が大都市部の戸籍を取得することは困難だ。

 その一方で、男性の「結婚難」が発生した。
結果として、農村部の中でも貧困地域の男性の結婚が極めて困難になった。女性なら、生活条件のよい他の農村部や小都市の男性と結婚することが比較的容易だからだ。

 胎児の性別判定については、特別な方法を用いなくても、健康状態を調べるための超音波画像で分かる場合が多い。そのため病院側が、女児の場合には「男でも女でも同じですよ」、男児の場合は「おなかのお子さんを大切に」などと、事実上性別を告げるケースがあったという。女児を望まない両親が人工中絶すれば、病院の収入になるからだ。

 また、2014年には胎児の血液を香港に郵送して性別判定を行う業者も出現した。

 中国政府は2013年、計画生育(計画出産)、いわゆる一人っ子政策の緩和を実施した。ただし、2人目の子の出産を望む夫婦は、当初予想ほど多くないことが分かった。生活や社会状況を考え「尻ごみ」してしまう夫婦が多いからという。(編集担当:如月隼人)


【関連記事】
子供に優しい中国人とその教育観
【中国BBS】日本で働く・・・「月額9万円なら行くべきではない」
また「平均」か?・・・「格差拡大」の中国社会、当局の「職業別賃金」発表に批判の声=中国紙
【中国BBS】人口減少が著しい・・・今の日本は未来の中国
韓国人旅行者が増えたら「コピノ」も急増?・・・「フィリピンで深刻化する問題」と米紙報道=韓国メディア
編集部おすすめ