長時間労働による過労死などが社会問題となって久しい日本では、ここに来てようやく「働き方改革」なるものが打ち出され、長時間労働の是正が叫ばれるようになった。バブル期に「24時間働けますか?」と呼び掛けたエナジードリンクのCMも、「3、4時間戦えますか?」に路線変更。
日本全体がワークライフバランスの重要性を認識するようになった。

 一方、お隣の国、中国では「996」というIT業界のブラックな働き方が取りざたされている真っ最中だ。「996」とは、午前9時~午後9時、週6日勤務のこと。2016年に中国クラシファイド広告大手の「58同城」でこの働き方が横行していることが明るみになり、問題視されるようになった。

 今年3月、「996」を強いられているIT業界のプログラマーらが「996.ICU」というサイトを立ち上げた、サイト名の由来は「『996』で働き、体を壊したらICU(集中治療室)行き」。何とも切実なネーミングだ。サイトでは労働法などの法的根拠を示しながら、「996」の違法性を訴え、「プログラマーの命は何よりも大切」と呼び掛けている。

 さらに「996.ICU」の創設者が、長時間労働が常態化しているブラック企業名をさらそうと呼び掛けたところ、ファーウェイ(華為技術)やアリババ・グループ、アントフィナンシャル、京東集団(JD)、蘇寧電器などそうそうたる大企業が名指しされた。

 そんな中、アリババのジャック・マー(馬雲)会長が「『996』ができるのは幸せなこと。多くの会社、多くの人が『996』を望んでいるがそのチャンスがない。若いうちに『996』をせずにいつするのか? 他人より努力しなければ成功などできない」と発言し、炎上。その後、「いかなる企業も社員に『996』を強制するべきではない」と一転して「996」否定派に回った。


 かつては日本でも朝から晩まで身を粉にして働く「企業戦士」が美徳と考えられていた時代もあった。だが、最近では「社畜」という言葉が示すように、こうした働き方を冷ややかにみる風潮もある。経営者にしてみれば、「996」を喜んで受け入れるモーレツ社員が多ければ多いほど喜ばしいことに違いない。だが、日本も中国も少子高齢化が進んでいる。ブラックな働き方を強制する会社に未来はないだろう。(編集担当:仙道計子)(イメージ写真提供:123RF)


【関連記事】
テンセントの新作ARモバイルゲーム、中国ネットで「ポケモンGO」にソックリと話題に
資生堂とアリババが戦略業務提携、共同開発の第1陣は中国人の頭皮と枝毛の悩みに着目
中国当局が「eスポーツ」を正式な職業に認定、後進国と言われる日本では?
中国自動車大手のBYDがレベル4の自動運転車を発表、日本はいつ?
中国発ショート動画アプリ「TikTok」、中国当局が青少年の「中毒」を防止へ 日本は大丈夫?
編集部おすすめ