今年1月のビール類市場は厳しい結果だった。昨年1月はコロナ禍が始まる前であり、それと比較することから数字の落ち込みは覚悟されていたが、新型コロナウイルス感染症が昨年末から再拡大していることが拍車をかけた。
一方で、家庭用は巣ごもり需要をとらえて好調だ。

1月のビール類市場計は前年同月比約80%とみられる。アサヒビールは69%、キリンビール92%、サントリービール79%、サッポロビール70%。ビール類の3カテゴリー(ビール・発泡酒・新ジャンル)のうち、最も好調だったのは発泡酒で、約112%で着地。最大勢力のキリンビールは115%だった。

巣ごもりで好調な家庭用が中心であることに加え、機能系と評される商品も多い分野でもあり、健康志向の高まりが後押しした形だ。また、昨年10月の酒税改定で新ジャンルとの価格差が縮まったことが要因の一つとする見方もある。ブランド別ではキリン「淡麗グリーンラベル」と「同 プラチナダブル」がともに123%。アサヒ「スタイルフリー」110%といずれも好調だ。

家庭用中心の新ジャンル(第3のビール)は93~94%。酒税改正で増税になったことが落ち込みの原因とみる関係者は多いが、巣ごもりでRTD(缶チューハイなど)など他ジャンルも含めた家庭用商品の買い回りを始めた消費者がいることが要因とみる向きもある。

キリンの新ジャンル計は95%、「のどごし〈生〉」は88%だったが、「本麒麟」は108%と好調。
サントリーは96%、特に「金麦〈糖質75%オフ〉」は121%と大きく伸長。サッポロは70%、「ゴールドスター」が118%と伸びているが、「麦とホップ」ブランド計は34%と厳しく、2月の刷新で巻き返しを図る。アサヒの「クリアアサヒ」は80%。

最も厳しい数字となったのはビールで、約59%と落ち込み幅が大きい。他カテゴリーより業務用比率が高いことから感染症再拡大の影響を強く受けた形だ。キリンは70%、サントリーは40%、サッポロは67%(アサヒはカテゴリー別の数字を公表していない)。主力ブランド別ではアサヒ「スーパードライ」は業務用樽商品が約30%、ブランド計で54%。キリン「一番搾り」53%。サッポロ「黒ラベル」63%、「ヱビスビール」68%。一方で家庭用を中心とする缶製品は順調。昨年10月のビール減税で注目が集まりつつあることから各社も注力し、巣ごもり需要をとらえた形だ。

キリンは「一番搾り 糖質ゼロ」投入もあり、「一番搾り」本体の缶は103%、ブランド缶計では157%と大きな伸び。
サントリー「ザ・プレミアム・モルツ〈香る〉エール」缶は118%、サッポロ「黒ラベル」缶も二ケタ伸長だ。

この傾向は当面続くとみられており、業務用が回復するまで家庭用市場の競争は激しいままで推移しそうだ。
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