飲料の自動販売機(自販機)市場は新型コロナウイルスに伴う外出自粛で都心部やオフィスなどの多く人が集まるロケーションを中心に売上げが急落し、厳しい状況に置かれている。

こうした中、人と接触することなく購入できる点に着目し、さらには現金にも触れたくないニーズにも対応してキャッシュレス化などを推進する動きが強まっている。


その点、飲料最大手のコカ・コーラシステムが展開するコカ・コーラ公式アプリ「Coke ON」も施策強化によって利用者が増加している。

「Coke ON」は、「Coke ON」対応自販機での製品購入やアプリ内のキャンペーンを通じてスタンプをためて、スタンプ15個ごとに1本分のドリンクチケットを獲得できるもの。

2016年4月にサービスを開始し、今年1月末時点で2千500万のダウンロード数を突破した。サービスを段階的に拡充していく中で、昨年はキャッシュレス決済機能「Coke ON Pay」の利用が大きく伸長した。

「各決済サービスとの共同プロモーションも後押しして『Coke ON』を通じたドリンク購入は半数以上の割合でキャッシュレス利用が占めるようになった」(日本コカ・コーラ)という。

「Coke ON Pay」は、PayPay、LINEPay、楽天ペイ(アプリ決済)、auPAY、d払い、メルペイ、クレジットカードなどに対応し、自販機における決済の選択肢をさらに広げている。

アサヒ飲料も、自販機の立て直しに向けて「三ツ矢サイダー」をマイナス5℃前後で販売する「氷点下自販機」や試験的に行っている食品併売自販機のチャレンジとともに、キャッシュレス自販機を強化している。

アサヒ飲料と伊藤園は、昨年から一部の自販機で非接触決済サービスとコード決済を可能とするメルペイへの対応も開始した。

ダイドードリンコは昨年、業界初の足での操作で購入が可能な「足操作自動販売機」を同社東京本部に設置し実証実験を開始した。

キリンビバレッジはサービス面に活路を見いだす。「かつてはお金を入れると商品が出てきた一つのマシンだったかもしれないが、今はそうではなく、お客さまとのマーケティング接点であり、さまざまな情報やサービスが提供できる。効率性の点では、オペレーションにIoTを導入していく可能性がある」(キリンビバレッジの堀口英樹社長)との考えを明らかにする。


生き残りの道としては、自販機チャネルをひとくくりに考えるのではなく、ロケーションごとに細かく見ていく考え方もある。

「お客さまに自販機を通じてソリューションを提供していく。ITやデジタルの力を借りてロケーションごとに最適化を図り、既に試行錯誤して売上げアップのためにやるべきことが見えてきたため、今後はそれを粛々とやっていくだけ」(サントリー食品インターナショナルの木村穣介取締役専務執行役員ジャパン事業本部長)。

「ロケーションによって優劣が鮮明に出たため、自販機では可能性の薄いところから撤退し売れる場所に注力していく。自販機をひとくくりでとらえるのは誤りであり、自販機の中には売上げが前年を超えているところもある」(ポッカサッポロフード&ビバレッジの征矢真一社長)と、それぞれ意欲をのぞかせる。
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