
これには、東日本大震災後の防災意識の高まりに加えて、位置情報ゲームアプリ「ポケモン GO」の主要拠点(ポケストップ・ジム)に登録されたことが後押しとなった。
21年2月現在、その数は11年比で20倍以上拡大し1万9000台強に上る。自販機総設置台数に占める割合としては、飲料メーカーの中で高い水準だ。
「ポケモン GO」がリリースされたのが16年7月。
「ポケモン GO」での伊藤園とのパートナーシップをきっかけに、(株)ポケモンとのライセンス契約が結ばれ、ラッピング自販機やオリジナル商品などの展開が始まった。
(株)ポケモンの松本友成ビジネス本部営業企画部マネジャー(左)(伊藤園) その理由について(株)ポケモンの松本友成ビジネス本部営業企画部マネジャーは「伊藤園さまが全国各地に持つ自販機のロケーションを生かしたお取り組みと商品展開が可能な点、災害対応など社会貢献性が高い同社の取り組みも大きかった」と述べる。
17年2月、1800台強の災害対応自販機に登録開始し、ほどなくしてピカチュウのラッピング自販機が登場。現在、災害対応自販機の登録台数は4700台に拡大している。
一部通常自販機も登録しているが、登録のメインになるのは災害対応自販機。
その狙いは、ビジネスの要素に加えて「地域社会への貢献にある」と語るのは伊藤園の西晃毅自販機部グループリーダー。
伊藤園の強みは、地域密着型の営業「ルートセールス」。

一方、(株)ポケモンとしては、ポケモンファンとの接点として自販機をはじめ地域に根ざした伊藤園の活動に重きを置く。
「身近にある自販機で『ポケモン GO』のゲーム内で道具などが手に入るほか、『ポケモン GO』のイベントや『ピカチュウ大量発生チュウ!』を実施した際も、ブースを積極的に出していただいている。ポケモンファンと相対で交流する機会が多く、ポケモンファンにとっても馴染みの深い企業様」(松本氏)とみている。

(株)ポケモンは、より多くのファン獲得に向けて新作ソフトや施策を年内に展開していくほか、「ポケモンローカルActs」を通して、これまで以上に地方との接点強化を図っていく。
伊藤園との取り組みでその目玉となるのが、4月9日、1道6県で一斉に設置開始した「推しポケモン」の災害対応自販機となる。
これは株式会社ポケモンが18年4月から取り組む、地域ごとに推しポケモンを選定し各地の魅力を国内外に発信する「ポケモンローカルActs」の一環。
ローカルActsについて、(株)ポケモンの秋山玄陽統括本部プレイヤーリレーション部マネジャーは「地域活性化が一番の目的。東京や大阪などの首都圏では大きなプロモーションを展開していたが、地方ではあまり多くなかった。日本の各地には多くの魅力があり、ポケモンを通じてその魅力を伝えたり、好きになってもらいたい」と説明する。

その一例を挙げると、香川県では、特産品のうどんの響きから「ヤドン」が推しポケモンに選ばれ、「ヤドン」のしっぽが甘いことから和三盆などのコラボ商品に採用。
コラボ商品はそのエリア限定で販売され、そのほか、「ポケふた」というポケモンがデザインされたマンホール、スタンプラリーなどのイベント、飛行機や電車やバスのラッピングなどで多面的にコラボしている。

同自販機は、各自治体の協力を得ながら観光スポットや公共施設に設置され、数十台の新規設置からスタートする。
(株)ポケモンとしては、健康意識の高まりに対応した伊藤園の商品群にも期待する。
現在、伊藤園では「充実野菜」に続いて「健康ミネラルむぎ茶」の自販機専用商品でポケモンをデザインしたパッケージを展開している。
「引き続き全国各地にある自販機のロケーションを活かした取り組みや、伊藤園さまだからこそできる商品も展開していきたい。毎年夏になると熱中症の危険性が高まるが『健康ミネラルむぎ茶』を飲むことで熱中症対策ができるといった啓蒙を実施されていたり、伊藤園さまは健康づくりに対する意識が高いので、我々としても安心してお取り組ができる」(松本氏)と期待をよせる。

飲料以外では、クリーンネス・キャッシュレスと並ぶ伊藤園自販機の柱であるウェルネスの取り組みとして昨年末に発売開始した茶カテキンのフィルターが付いたポケモンオリジナルデザインマスクが多くのポケモンファンの間で話題になっているという。
「(株)ポケモンさまには仮想世界で現実世界との橋渡し役を担っていただいているのが物凄く大きい。自販機を価値ある場所にしていけば結果的に地域社会への貢献にもつながる。商品・サービスの両面で社会インフラとしての価値をもっと高めていきたい」(西氏)と意欲をのぞかせる。

