ニッスイの新社長に5月14日付で就任した田中輝氏。「サステナビリティ経営を推進しながら2030年までに食品企業で世界トップ50入りを目指す。
人間の根本となる誠実さや楽しむ気持ちを大切に、新しい発想で未来の成長に向かって挑戦したい」と抱負を語る。

変化の激しい時代の中「企業が成長を目指すには『変わる勇気』と『続ける覚悟』が重要で、時には『止める勇気』を求められるかもしれない。あわせて人財が一番大事とも考えている。社員が働きやすい環境を整え、成長する機会を提供していきたい」との考えも示した。

37年の社歴で印象に残っていることは出向先での経験を挙げる。まずは06年にファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルで購買部水産食材担当チーフバイヤーを担当。「ニッスイと異なる文化で1年間勤務し、新しい視点で物事を見られるようになった。そこでの経験や人脈は今でも役立っている」と話す。

そして翌07年からチリのサルモネス・アンタルティカ(S.A.)社に出向。東京勤務を挟んで足掛け約10年にわたり在籍した。民族や文化がまったく違う中で新たな事業を起こしたり、グローバルマーケティングを肌で感じたり、日本では得難い日々を経験した。なかでも最初の赴任間もなく40代で携わった工場閉鎖が印象深いという。
「当時2工場(各600~700人規模)あったうち南部の1拠点を閉鎖した。チリでの業績を立て直すために必要だったが、決して簡単なことではなかった。行政や地域と連携し、従業員とも対話を重ねながら進めていった」と振り返る。

外部でのキャリアを通じてニッスイの長所・短所が見えたとも話す。「当社グループは優秀で真面目な社員が多い。それはそれで素晴らしいことだが、どちらかというと内向きの意識が強く、伸び悩む社員も見受けられる」とし、「(自身のように)外部も含めて様々な経験を積むことは重要。個々の社員が見識を広めてさらに成長していける企業にしたい」と想いを込める。

22~30年度の長期ビジョン「GOOD FOODS 2030」ではありたい姿として「人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー」を掲げている。その「Recipe2」が3か年の中期経営計画として25年に始動した。

ビジョン達成に向け、主要テーマは環境・社会・人財・経済を循環させて発展する「サステナビリティ経営」、水産物等にかかわる技術の進化と外部パートナーとの連携による「新しい“食”の創造」、ニッスイ最大の強みと自負するグローバルリンクス・ローカルリンクスを活用した「独自価値の創造」││の3点を挙げ、「グループの新たなシナジーを創出し最大限に発揮していく」との決意を示す。

入社以降、水産部門以外のキャリアが少ないことについては「逆に強みになる可能性がある」とポジティブに捉える。「当然ながら今後は食品、ファインケミカル、物流などの比重を高めていくが、既成概念にとらわれず、現場を見ながら新しい発想を具現化していければ」と展望する。
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