旭食品は国内外でのM&Aや新会社の設立を通し、水産・農産事業の拡充を進めている。グループとして原料の調達力を高めながら、スマート農業など新たな事業の展開も視野に入れる。
こうした一次産業、さらに地産外商の事業を推進することで「本当の意味でのフルライン卸を目指す」と竹内紘之副社長は強調する。

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――水産事業の近況について教えてください。

竹内 大倉とかいせい物産を軸にグループ力を発揮しながら、引き続き寿司ネタを中心とした水産物の提案に注力している。

養殖魚は従来のブリとハマチに加え、車エビを実験的に扱い始めた。今年秋ごろの出荷を予定する。天然魚にも挑戦している。高知の西部で水揚げしたカツオを、翌日の午前中に大阪の店頭で販売できる便が整った。冷凍ではない鮮度の良いカツオが、大阪の店に並ぶことはあまりない。

また、社員によるマグロの解体ショーを昨年から始め、今年6月までに15回実施した。店からの要望も増えている。お客様にも喜ばれ、特に週末は集客につながっている。

――23年に香川県の香西物産、韓国の韓国築地、昨年はオーストラリアのTFFAを子会社化しました。
国内外で水産関連企業のグループ化が進んでいますが、その狙いは。

竹内 TFFAはまだ模索中の段階だが、オセアニアの水産物を日本で扱うとともに、日本からも輸出するといった協業を目指す。今後も海外でのM&Aを推進し、ベトナムのSAKURA FOODを含め調達力を高めたい。

温暖化で水産物の産地が変化し、漁獲量が減っているという現実がある。北半球に比べると南半球は気候変動が小さいと言われており、その観点からも特に南半球を強化する。TFFAとの連携により、調達できる水産物は広がる。

農産物では、フーデムが指定農場シリーズの冷凍ブロッコリーとほうれん草を新たに発売したが、いずれもエクアドル産だ。

――冷凍野菜の動向はいかがですか。

竹内 相場高の関係で昨年1年間は大きく伸びた。今期に入ってからは葉物野菜の値段が下がったこともあり前年を下回ったが、冷凍野菜・フルーツは継続してアイテムを増やそうと動いている。農産物も気候変動の影響で、いかに年間を通じ冷凍で安定的に供給できるかが重要なキーになる。

――農業では今年、農産物の生産加工やドローン防除などを行う新会社、ドリームファームを設立しました。


竹内 スマート農業の確立を目指すとともに、これもグループとして原料調達力を高める取り組みの一つである。ゆずの平地栽培、酒米の直播栽培に加え、ドローンを使った農薬散布の事業を進めている。

ゆずは1.2haに900本の苗木を植えた。5年後ぐらいから収穫が始まり、当面は10tを目指す。酒米は2・4ヘクタールでドローンによる直播栽培を始め、今年約10tが収穫できる予定だ。まずはグループの酔鯨酒造や、旭フレッシュで原料として使えるようにする。酒米が成功すれば食用米にもチャレンジしたい。

ドローン事業は想定以上に反響があり、今年すでに300ヘクタール分を実施する計画。10年後には、1000ヘクタール規模で受託できるようにしたい。
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