ナ・リーグトップタイの45本塁打を記録するドジャース・大谷。3年連続本塁打王なるか
【熱戦! NPBシーズン2025最終コーナー】に続き、昨季と同様に今季も火花を散らすデッドヒートが繰り広げられているナ・リーグ西地区優勝争いを徹底解説!
※成績はすべて日本時間8月26日時点
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■打のドジャース、投のパドレス
MLBもレギュラーシーズンは残すところあと1ヵ月。
昨季も優勝を争った同じナ・リーグ西地区のパドレスとは今季も熱い戦いが続き、8月下旬の直接対決を終えた時点では、共に74勝57敗と互角の成績で地区優勝を争っている。
「ドジャースは先発、リリーフ共に故障者が多く、中盤に失速。戦力が去年ほどではないため、パドレスとの差は縮まっています」
こう語るのは、現役投手を指導するピッチングデザイナーで、MLBにも精通する『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏だ。
仮にドジャースが優勝を逃したとしても、ワイルドカードでプレーオフに進出できる可能性は高く、昨季同様、パドレスがWS進出に向けた最大のライバルとなりそうな状況だ。まずはそんな両チームの今季ここまでの戦いぶりを振り返りたい。
本塁打王争いを演じる大谷翔平ばかりが注目を集めがちだが、実は今季のドジャース打線を分析すると、大谷以外の打者の活躍も目覚ましい。
「ムーキー・ベッツが不振で苦しむ一方、フレディ・フリーマンと正捕手ウィル・スミスが首位打者争い。下位打線でも一発が期待できる状況で、打線に関してはMLB全体でも一、二を争う破壊力です」
実際、チーム本塁打数はナ・リーグ1位。得点数はMLB全体でも1位と数字上でも打線の破壊力はすさまじい。しかし、投手力で後れを取り、勝ち星が思ったように積み上がらない状況だ。
「先発の柱となるはずだったブレイク・スネルとタイラー・グラスノーが春先から長期離脱。
大谷の先発時には中継ぎ投手が試合序盤から駆り出されるなど、ブルペンの負担はさらに増している状況です」
7月には7連敗を喫するなど苦戦が続き、月間勝率.417と負け越してしまった。
「投手陣だけでなく、野手陣にも疲れが見えました。DHを大谷が占有しているため、ほかの野手の休む機会が少なくなっていますし、守備が苦手なテオスカー・ヘルナンデスも守らせないといけないといったシワ寄せがあるのも事実。本来、破壊力抜群のはずの打線がうまく噛み合わない時期が続きました」
大谷自身も7月は打率.204と大ブレーキ。しかし、8月は一転して好調で、OPSも1.1超。大谷の打撃状態が上向くとともに、チーム状態も上向きつつある。
「8月半ばにデーブ・ロバーツ監督から『もっとセンター返しを意識すべきだ』と、大振りが続いていることに苦言を呈されました。その言葉がきっかけとなったのか、打撃の調子は上向いています。
今季は『打つ前から打てる感覚』をまだつかめていないようですが、昨季も9月に月間MVPの活躍を見せたことを考えると、終盤戦での〝大谷無双〟を期待したいファンは多いでしょう」

8月23日のドジャース戦に先発したパドレス・ダルビッシュ。衰えを感じさせない投球を披露
ドジャースが「打」のチームなら、パドレスは「投」だ。
「先発はニック・ピベッタを筆頭に駒がそろい、そこにダルビッシュ有がようやく復帰。ブルペンもロベルト・スアレスらが堅調なのに、トレードで104マイル(約167.5キロ)右腕メイソン・ミラーら強力な投手を獲得してさらに層が厚くなった。
日本であれだけの実績を残した松井裕樹でさえも、パドレス救援陣での序列は最下位。それほど質の高さも兼ね備えた陣容なのです」
一方の打線は、チーム本塁打数、得点数共にリーグ下位に甘んじているが、決して勝負弱いわけではない。
「マニー・マチャドやフェルナンド・タティスJr.ら〝戦える選手〟が多いので、シーズン終盤の勝負どころで仕事をしてくれそうな期待感がかなりあります」
そんな両チーム、なんとレギュラーシーズンではもう直接対決の機会がない。となると、何が優勝争いを左右するのか?
「昨季も優勝を争った強豪同士なのに9月に対戦がないというのは非常に残念です。こうなると、あとは低迷している球団との対戦をどれだけ残しているか。
その点、ロッキーズやホワイトソックス、オリオールズといった各地区の最下位球団との対戦をより多く残しているパドレスが有利。また、パドレスは救援陣がそろっていて接戦を拾えるため、終盤戦やポストシーズン向きです」
ただ、ドジャースとしてもポストシーズンに向けて明るい材料はある。
「スネルとグラスノーが復帰し、『投手・大谷』もいよいよ本格稼働。防御率は悪いものの投げている球の質は良く、配球が改善されれば勝ち星も増えていくはず。
さらに大ベテランのクレイトン・カーショーが勝利を重ねるなど、ここにきて先発陣がそろってきました。今やエース格の山本由伸も含め、プレーオフに向けて調子を上げていきたいところです」
一部で報道されている〝大谷リリーフ起用〟は実際ありえるのか?
「これだけ救援陣が弱いことを考えると、戦略的にはアリです。ただし、現行のルールでは、先発投手であれば降板後もDHで出場できるものの、リリーフで降板した後は、DHとして残ることができないようです。勝負どころで『打者・大谷』を欠くわけにはいかないので、あくまで先発起用がファーストチョイスになると思います」
ヒリヒリする9月を求めてドジャースにやって来た大谷。昨季同様、自身もファンもヒリヒリさせる大活躍を期待したい。
文/オグマナオト 写真/時事通信社