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トヨタが展開する大型ピックアップトラック・タンドラは1200万円

トヨタ、ホンダ、日産という日本を代表する3大メーカーが今、「日本では売れない」とされてきた米国生産モデルを、相次いでニッポン市場に投入している。なぜ3社は動いたのか。
日本の自動車市場で起きている静かな変化に迫る。

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「狭い日本の道路ではデカすぎる」

「アメリカンナイズされすぎて、日本じゃ売れない」

かつて、日本のクルマ市場でそう言われ、議論にすら上がらなかった車種が、今、続々と"逆輸入"され始めている。フルサイズのピックアップトラック。大型SUV。北米で売れ続けてきた大排気量セダン。しかも手がけているのは、トヨタ、ホンダ、日産という日本の自動車産業を代表する3社。

なぜ日本の自動車メーカーは、米国で生み、米国で育てたクルマをこのタイミングで日本へ持ち込むのか。きっかけのひとつは、いわゆる"トランプ関税"に象徴される日米貿易交渉だ。通商環境の変化を受け、日米間では自動車をめぐる制度調整が進んだ。日本では認証制度や安全基準の見直しが行われ、米国生産車を国内市場に投入するためのハードルは確実に下がっている。

だが、理由はほかにもあると、多くの専門家筋が指摘する。実は日本の自動車市場そのものが、すでに縮小を前提とせざるを得ない段階に入っている。

新車販売台数は、1990年に約777万台を記録したのをピークに、長期的な下落が続いてきた。2025年度の販売台数は約453万台。ピーク時の6割程度まで落ち込んでいる。人口減少、市場の成熟、買い替えサイクルの長期化......。こうした環境の変化を踏まえれば、国内専用モデルをイチから開発・投入することは、ますます難しくなっている。

そこへ追い打ちをかけたのが、EV戦略の失速だ。米国では補助金の打ち切りが進み、世界的にもEV需要の成長鈍化や充電インフラ整備の遅れが表面化している。当初描いていたほど、簡単には売れない。実際、ホンダや日産は巨額の赤字に苦しんでいる。

自動車誌関係者はこう話す。

「現在、国内の自動車メーカーは、いずれもグローバル企業です。国内だけでなく世界市場を見据え、いかに利益を確保するかが問われています。

原材料価格は高止まりし、電動化やソフトウェア化によって開発はますます複雑になっている。そうした中で、すでに高い完成度と実績を備えた北米向けモデルを日本市場に投入するのは、極めて合理的な判断と言えるでしょう」

この流れを形にしたのがトヨタ。4月2日、フルサイズピックアップの「タンドラ」と、3列シートSUVの「ハイランダー」を国内で発売した。いずれも北米市場では、長年の主力モデルとして売れ続けてきたクルマだ。さらに現地では"ドル箱"とされるセダン「カムリ」も、日本投入が予定されている。

ホンダはEV投資の拡大や中国市場での販売不振を受け、2026年3月期は最終損益が最大6900億円の赤字となる見通しで、1957年の上場以来、初の最終赤字となる可能性もある。2040年までにEVシフトを完了すると掲げてきた長期方針も、現実を前に修正を余儀なくされた。

トヨタ・ホンダ・日産、米国産モデル一斉逆流の真相
今年1月開催の東京オートサロン2026で、ホンダブースに展示されたインテグラ

今年1月開催の東京オートサロン2026で、ホンダブースに展示されたインテグラ

そんな逆風の中、ホンダは今年中に北米で売るミッドサイズSUV「パスポート」を投入するほか、日本市場では約19年ぶりとなる「インテグラ」を復活させる。しかも右ハンドル化は行なわず、左ハンドルのまま導入。ホンダブランドではなく、プレミアムブランド「アキュラ」を冠した「インテグラ タイプS」として売り出す。

同じことは日産にも言える。2026年3月期の連結営業損益は、600億円の赤字見通しから500億円の黒字へと修正された。

しかし工場閉鎖に伴う構造改革費用が重く、最終損益は5500億円の赤字が見込まれている。2期連続の巨額赤字は避けられない情勢だ。

トヨタ・ホンダ・日産、米国産モデル一斉逆流の真相
2027年初頭からの販売開始方針が明らかにされている、日産のムラーノ

2027年初頭からの販売開始方針が明らかにされている、日産のムラーノ

日産は2027年初頭にSUV「ムラーノ」を日本市場に再投入する計画がある。北米で評価を積み重ねてきた商品力が、日本でも通用するかどうか。日産が国内で再び存在感を示せるかどうかを左右する。

実は、国内の輸入車市場でも地殻変動が起きている。JAIAの2025年度登録実績では、スズキが海外ブランドを抑え、初の首位に立った。インド生産車による圧倒的なコスト競争力が、市場の勢力図を塗り替えたのだ。

そこに今度は、米国生産のトヨタ、ホンダ、日産が加わる。それでも販売現場は冷静だ。

「米国生産車は大量販売を狙うクルマではありません。ただ、この流れは一過性ではない。

日本のユーザーが、これまで選択肢になかった価値観やライフスタイルを、日本メーカーの名前で選べるようになる。その意味は小さくないと思います」

海外で生まれ、鍛えられ、評価されてきた日本車が、日本へ戻ってくる。まさに"カムバックサーモン"だ。それは単なるモデル追加ではない。「国産車」と「輸入車」という境界線そのものが消え始めているとも言える。

取材・文/週プレ自動車班 撮影/ 宮下豊史 写真提供/トヨタ 日産

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