代表キャップ数10試合以下のフレッシュな面々がズラリと並ぶ中、通算63試合目の伊東純也は、大ベテランの長友佑都とともにチームをけん引する重要な役割を担った。「中2日というのもあるし、いつも出ていないメンバーが多くなると思う。自分は経験がある方なので、なるべくポジティブな声かけだったり、攻撃のところでうまくプレーで引っ張っていければいいかな」と前日にも話しており、“イナズマ純也”の爆発が大いに期待された。
アメリカ戦では『3−4−2−1』の右シャドーに陣取った背番号14。序盤からアグレッシブな姿勢を押し出し、開始9分にはペナルティエリア右外側からチャンスメイク。これはGKに弾かれ、こぼれ球に前田大然が反応したが、惜しくも枠を超えていった。その後も伊東は積極的にボールに絡み、時にはフリーマン的に左サイドに流れたりしながら、攻撃に変化をつけようとトライする。その存在感はやはり圧巻だった。
しかしながら、日本は20分を過ぎたあたりからペースダウン。30分に1点目を献上するとさらに主導権を握られ攻め込まれるようになった。そこで伊東が今一度、流れを引き戻すようなインパクトを残せれば良かったのだが、前半36分に巡ってきた最大の決定機を逃してしまう。相手DFのパスを左シャドーの鈴木唯人が拾い、中央に侵入した伊東へスルーパス。
「あれは決めなきゃいけなかったなと。あそこを決めていれば1−1だったので、違った試合になっていたと思います。決定力の部分はずっと日本の課題。やっぱり最後は個人の質になってくると思うし、決めるべきチャンスをしっかり決められる選手が出てこないといけない」と本人も反省の弁を口にするしかなかった。
1点のビハインドを追いかけることになった後半、森保監督は『4−2−3−1』へ布陣変更。ベンチに下がった長友からキャプテンマークを引き継いだ伊東を本来の右MFに移動させ、大外からダイナミックな仕掛けを求めたに違いない。しかしながら、なかなかチャンスが作れずに15分が経過する。そのタイミングで指揮官は南野拓実、鎌田大地、三笘薫の主力級3枚を投入を決断。一気に流れを引き寄せようと試みたのだ。
伊東としても、やり慣れたメンバーが入ってきたことで、よりスムーズに攻撃力を出せるようになると思われたが、直後に致命的な失点を喫してしまう。それも、かつてスタッド・ランスで共闘していたフォラリン・バログンの得点とあって、悔しさもひとしおだったに違いない。
「一番厳しかったのは2点目。メンバーが代わって押せ押せになるところで、イージーな形で失点してしまった。それは全員の集中力も問題だったりするんで、修正しなきゃいけないですね」と背番号14は苦言を呈した。さらには、「いつも出てないメンバーにとってはチャンスだったし、こういうところで結果を出していかないと、今、出ているメンバーを追い抜いていけないんじゃないかと個人的には思います」とも発言。アピールしきれなかったメンバーの奮起も促した。
自らがキャプテンマークを巻いた試合を0−2で落とし、アメリカ遠征未勝利・無得点という結果に終わったことは、伊東としてももちろん納得がいかないはずだ。ただ、個人としては2024年1月のアジアカップ・ベトナム戦(ドーハ)以来の代表戦フル出場。何度も好機を演出し、2022~2023年の輝きに近い印象を残したと言っていい。
「個人的には今日は入りがよくて、体もそこまで重くなかったですし、(足首の)ケガから明けて初めてフルで出られたので、まあ良かったかなと思います。今日も少し痛みはありましたけど、ほぼほぼ動けるようになって、ここから本当にいい準備ができればいいかなと。まずはチームに帰って、結果を残して、また10月に戻ってこれるようにチームで頑張りたいですね」
背番号14の復調は、不本意な結果に終わった9月アメリカ遠征の日本代表にとっては数少ないポジティブ要素に他ならない。ここから伊東の状態が右肩上がりに推移し、9カ月後の本大会を迎えられば、チームの攻撃オプションは確実に増えてくる。
取材・文=元川悦子