背筋が寒くなるような怪談や心霊映像は夏の風物詩ではないか。かつてはテレビの独壇場だったが、現在は数多くの心霊系YouTuberが存在する。
その多くは男性のコンビやグループが中心だが、一方で女性一人で心霊スポットを探索するのが『Rixia・りーしあ』というチャンネルだ。
「心霊スポット巡り系女子」を標榜するりーしあ氏は、どういった意図を持って投稿を続けているのだろうか。本人を直撃した。

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幽霊を見たことがないからこそ、確かめてみたかった

――なぜ心霊系YouTubeを始めようと思ったのですか?

りーしあ:もともと、葬儀屋の孫でもあったので「死」が身近にありました。また、伯母が霊感のある人で、新しい物件に引っ越した時も「ここの部屋は危ない」「あそこに女性が立ってる」などといった話をしてくれていたりして、幼少期から幽霊というものを近くに感じるような環境でした。

――ご自身は幽霊が見えるんですか?

りーしあ:見えません。なので、確かめてみたいという思いがあり、5年くらい前にグループで心霊系YouTubeをはじめました。
ただ、メンバー同士でロケのスケジュールや目指す方向性が合わなくなってきて解散したんです。それでも、私は心霊に関わっていたいと思って、一人でチャンネルを続けることにしました。

――率直に、女性一人って危なくないですか?

りーしあ:そうですね(笑)。危険な思いをすることは珍しくありません。それに、企画も撮影も編集も全部一人。正直言って大変ですね。


――グループを解散して、別の人と組むのではなく、一人を選んだのはなぜですか?

りーしあ:グループの時は4~5人やそれ以上で心霊スポットに行っていたんですが、視聴者さんから「そんな人数で行っても怖くない」「演者の声ばかりうるさい」という声があって、一人でやることにしました。

「廃校の教室」でイスがひとりでに…

――これまでに何ヶ所くらいのスポットに行きましたか?

りーしあ:グループの時期も含めると100箇所は超えていると思います。私が住んでいる関東周辺が多いんですが、東北や北海道のスポットにも行っています。

――その中でも一番怖かったのはどこですか?

りーしあ:撮影をしていて、原因のわからない音を収録することは割とあるんです。でも実際に、映像として映ったスポットがあります。関東にある某廃校なんですが、ある教室に入ると、何となく気配を感じるというレベルではなく「そばにいる」という感じがすごく強くて。いくつか生徒用の机と椅子が並んでいるんですが、私がいたすぐ横のイスがひとりでにガタガタと動いたんです……。
撮影を続けたい気持ちはありつつも、どうしてもメンタルが持たなくて撮影を切り上げました。

――霊感はないとおっしゃっていましたが、“何か”を見た経験はありますか?

りーしあ:ある城跡で撮影していた時のことです。目の前の道を、今時の服を着たショートカットの若い女性が歩いてきました。暗い路地ではあったんですが、絶対に人が通らないという場所ではなかったので、地元の方かと思って撮影を止めました。すると、私のすぐ近くまで来たその女性が目の前でパッと消えたんです。

――目をそらした隙にではなくですか?

りーしあ:はい。
見ている目の前で消えました。なので、人ではなかったんだということがわかって、かなり怖かったですね。

明らかに「人」がいた。廃ホテルでの恐怖体験

“心霊スポットを巡る”20代女性YouTuberが遭遇した、廃ホテルでの恐怖体験「明らかに誰かいた」
りーしあ氏
――人里離れた場所が多いと「霊以外の怖さ」もありませんか?

りーしあ:関東地方の廃ホテルで怖い思いをしたことがあります。館内のいくつかの部屋にも入ったんですが、ある一室だけ明らかに臭かったんですよ。そこには、ネズミの死骸が横たわっていて、明らかに人為的に首と胴体が切り離されてナイフが刺さっていました。
ちょっと怯みましたが、何とか気持ちを落ち着かせて部屋の探索をすることに。ところが、後ろから『ガタン!』という音が聞こえて……。音の方向を照らしたら、少し空いた襖に手がかかっていて、ライトを向けた瞬間にその手が奥に引っ込んだんです。

――霊ではなく、明らかに「人」がいたということですね。

りーしあ:もし、私が気づいていなかったら、その場で襲われていたかもしれません。ナイフで動物を切り裂くぐらいですから、私たちの常識とは違う何かを持っている人なのではないかと思います。
あれ以上に、恐怖と同時に命の危険を感じたことはないですね。

家族はどう思っているのか

――身を守るための準備はしているのですか?

りーしあ:熊撃退用の催涙スプレーはいつも持っています。それに、街灯もなく舗装もされていない山道を長時間進むことも多々あるので、服装にも気をつけています。足音でパンプスやヒールを履いているのではないかというコメントをもらうんですが、廃墟にはガラスなども落ちていますし、暗くて足元も見づらいので登山靴を履いています。それと軍手は必須で、スマホを触れるよう指あきのものを選んでいます。また、あらかじめ危険とわかる場所にはパンツで行きます。あとは、撮影に行く日は必ず家族にそのことを伝えてから行きますね。

――ご家族は心霊スポットへ出かけることに対して反対はなさっていないですか?

りーしあ:「無茶はしないでほしい」とはいつも言われていますが、両親は私がやりたいことは全力で応援すると尊重してくれています。ただ、亡くなった人がいる場所も多いので、「モラルを逸脱しないように」とは、厳しく言われていますね。

心霊系YouTubeは「時間とお金がかかる」

“心霊スポットを巡る”20代女性YouTuberが遭遇した、廃ホテルでの恐怖体験「明らかに誰かいた」
りーしあ氏
――数々のスポットを巡るようになって、わかってきたことはありますか?

りーしあ:心霊系YouTubeって、時間とお金がこんなにかかるものなんだなと(笑)。

――活動資金はどうやって調達しているのですか?

りーしあ:昼は真面目に働いているのと、YouTubeの収益、そして最近は自身のアパレルブランドを立ち上げることができて、多くの視聴者の方が買ってくださっているので、ギリギリ生きています(笑)。遠方まで出かけて現地で探索をしても、投稿して見ていただけるほどの現象に出会えず、ボツになることもありますし。アップできる採用率でいうと50%くらい。現状は月に1本ずつくらいしか出せていません。

――準備して撮影してとなると、数日かかると思います。それをボツにするのは悔しいですよね。

りーしあ:そうですね。でも、視聴者さんは厳しくて、声や音がかなり入っている動画にも「何にも起きないじゃん」っていうコメントがあります。現地にいくと、声や音が聞こえるだけでもかなりやばいんですけど、なかなかダイレクトに伝えるのは難しいですね。音だけでなく映像としての現象を求められますね。私を見ているというよりも、心霊現象を求めて見てくださる人が多いので、一定の現象が起きなければボツやカットせざるを得ないですね。

――将来の展望を教えてください。

りーしあ:HIKAKINさんに会いたいです(笑)。もともと大ファンでして、いつか会えればいいなと思っています。でも、HIKAKINさんは霊をあまり信じないそうなので、なかなか難しいかもしれませんけど。

――心霊系YouTuberとしての将来はいかがですか?

りーしあ:「今を大事に生きる」ということを考えています。これまで、危険な場所にもたくさん行って、危険な思いもたくさんしたうえで、「人はいつ死ぬかわからないから、今を大切にしよう」と思えるようになりました。これからもその瞬間の、やりたいことを十分にやって「今」を大事にして進んでいきたいですね。

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「女性一人で探索する」ことがより怖さを引き立たせる同チャンネル。ギリギリのラインを攻めてほしいとは思いつつも、くれぐれも自分の身を大事にしたうえで活動を続けてもらいたいものだ。

<取材・文/Mr.tsubaking>

【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。