お金をかけずに自由な発想ができる
千原ジュニアは、4コマ漫画について「芸人が一番避けたいジャンルともいえる難しさがある」と明かした。というのも、集約された4コマの笑いはごまかしが利かず、スベる可能性が高いからだという。それでも連載を5年続け、1冊にまとめ上げた背景には4コマならではの自由さがあったという。「トークでも漫才でもコントでもない。お金をかけずに、恐竜に乗ることも虹を渡ることもできるのが4コマ漫画というか。そういうところで笑いを作れるという意味では非常に有意義で楽しい時間でした」(同著「あとがき」より)
もともとは「漫画家の世界にお邪魔します」という感覚が強かったという千原ジュニア。しかし描き続けるなかで、その意識は少しずつ変わっていった。
「そんなん誰がやったってええやん」
誰がCDを出してもいいし、誰が芝居をしてもいい。そう考えられるようになったことで、表現の間口が一気に広がったのだろう。実際、毎週の打ち合わせでは作家や担当編集者と3本分のラフを詰め、翌週までに原画を仕上げる生活。スケジュールにない時間で描くしかなく、早起きして筆を進めていたというのだから、かなり本気だ。
ネタ作りの方法もユニークである。過去に作っていた1000枚ほどの単語カードをめくり、「携帯電話」「みそ汁」「コーヒー」といった普遍的な単語から発想を広げていく。また、今回の本にも収録されている人気シリーズ「●●―1グランプリ」のようなネタでは、まず4コマ目の“大オチ”から決め、そこに向けて逆算して組み立てていたという。
千原ジュニアは、4コマを描き続けた5年間について「ほぐしてなかった筋肉をほぐしてもらっていた」とも振り返っている。トークにもコントにもつながる、小さくても確かな筋肉がついた感覚。エンタメが飽和する時代だからこそ、その「5年分の試行錯誤」が詰まった一冊には意味がある。芸人が避けたくなるジャンルに、5年間4コマ漫画に向き合い続けたからこそ見えた景色が、この一冊には詰まっているのかもしれない。
取材・文/SPA!編集部 写真/山田耕司(本誌)
『千原ジュニアが五年で描き溜めた四コマ漫画全集』
テレビなど引っ張りだこの人気芸人・千原ジュニア。その話芸で人々を魅了する千原ジュニアが5年間、寡黙に描き続けた4コマ漫画全517本を収録した一冊。前作『嗚呼蝶でありたい』に新作264本の作品を加え、愛と笑いと魂に満ちた、カリスマ芸人の5年間の軌跡をとくとご堪能あれ!
※作品は2020年から2025年にかけて週刊SPA!連載『囚囚囚囚』で掲載したもの
千原ジュニア
1974年生まれ、京都府出身。NSC大阪校8期生。1989年、兄のせいじと千原兄弟を結成。
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