日常の買い物で、思わず苛立ちを覚えた経験は誰にでもあるはずです。
 今回話を聞いた武井さん(仮名・42歳)もまた、些細な出来事の積み重ねが引き金となり、ついに一線を越える言葉を放ったといいます。


スーパーのレジ列に「いつも割り込んでくる」高齢女性を撃退した...の画像はこちら >>

会社帰りのスーパーマーケット

 武井さんは二人の息子を育てるシングルファーザーです。

 仕事を終えた後は、毎日のようにスーパーへ立ち寄り、夕食の食材を買い揃えるのが日課となっています。

「食べ盛りが二人いると、本当に量が必要で。ほぼ毎日寄ってますね」

 時間との勝負でもあるため、効率よく買い物を済ませることが重要です。最近はセルフレジも増え、以前のような長蛇の列は減ったといいますが、武井さんはあえて対面レジを選び続けています。

「セルフレジ、あれがどうも苦手で。やたらエラーが出るんですよ。“商品を置いてください”って、もう置いてるのにって(笑)」

 バーコードの読み取り精度やセンサーの不具合に悩まされ、結局時間を取られることが多いとのこと。そのため、多少並んでも有人レジを選ぶのが彼のスタイルです。

繰り返される“無言の割り込み”

 そんなスーパー通いが日々のルーティーンである武井さん。最近よく見かける高齢女性がいるそうです。

 なぜなら、武井さんの並んでいる列に何の前触れもなくスッと入り込んでくるのです。しかも、一度や二度ではありません。

「最初はたまたまだと思ったんです。
でも、何回も続くと、ああ狙ってるなって」

 せめて一言の断りや会釈があれば印象も違ったと武井さんは語ります。しかしその女性は、まるで当然のように列に割り込んでくるそうです。

「完全に“自分が優先されて当たり前”って感じでしたね」

 武井さんはこれまで、その都度ぐっと堪えてきました。相手が高齢者であることもあり、強く言うことに抵抗があったからです。ただ、その日は事情が違ったようでした。

「もう一軒寄らなきゃいけなくて、正直ちょっと急いでたんです」

 そんなタイミングで、またしても同じ高齢女性が目の前に割り込んできたといいます。

積み重なった苛立ちと放った一言

 たまたま、その高齢女性の買い物カゴの中身が目に入りました。

 和牛のステーキ、中トロの刺身、そして色とりどりのフルーツ。どれも高級感のある品ばかりです。

「いや、別に何を買うかは自由なんですけどね。ただ、なんか余計にモヤっとして」

 自分は時間に追われながら必要なものを買いに来ている一方で、優雅な買い物をしている様子。それが、これまでの鬱憤(うっぷん)に火をつけたようです。


 武井さんは、あえて聞こえるように声を出しました。

「人生の残り時間を考えれば、私の1分よりあなたの1分の方が大切だもんね」

 皮肉たっぷりなフレーズを耳にした高齢女性は驚いた様子で一瞬振り向き、悔しそうな表情を浮かべたそうです。

 その後は何もなかったかのように武井さんに背を向けたままだったといいます。

「自分でも、なかなか嫌な言い方をしたなって思いました(笑)。でも少しスッキリしました」

 会計を済ました高齢女性は、武井さんを睨みつけたかと思うと、再度何もなかったかのようにゆっくり店を出て行ったそうです。

 周囲の客も一連のやり取りには気づいていたようですが、誰も口を挟むことはありませんでした。ただ、空気がわずかに変わったのは感じたといいます。

「ちょっとスッキリしましたね。言ってやったという解放感はありました。それ以来、その女性の姿を見ることはなくなりましたね」
 
<TEXT/八木正規>

【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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