何気なくYouTubeで「千駄木雄大」と検索したところ、「千駄木雄大が毎日エナジードリンクを1L飲み続けた結果」というショート動画が出てきた。一体何事かと思って見てみると、筆者が以前、別の媒体で書いた「エナジードリンクばかり飲んでいた話」を、まとめただけの動画だった。
若干、内容も間違っていた。
どうして、普段は「エジソンが1日○時間しか寝なかった理由」とか「あの人気芸能人○○が干された理由」といった、インプレッション稼ぎの動画が多いチャンネルで、まったく売れていない酒浸りのライターを取り上げたのだろうか。案の定、いいね数や再生回数はそこまで伸びていなかった。もっと人選を考えたほうがいいと思う。

エナジードリンクを“毎日1リットル”飲み続けた酒浸り20代男...の画像はこちら >>

アルコール依存症からエナドリ依存症に

それはともかくとして、20代後半で毎晩のようにストロング系缶チューハイ(以下、ストロング系)を何缶も飲み、すっかりアルコール依存症になっていた筆者は、朝から飲みたい気持ちを抑えるため、毎日のようにエナジードリンク(以下、エナドリ)を飲んでいた。

2010年代に、エナジードリンクは市場として定着した。代表的存在である「レッドブル」の本格販売が2006年に始まり、その後、「モンスターエナジー(以下、モンスター)」などの海外メーカーの競合製品も登場し、サントリーフーズの「ZONe ENERGY(以下、ZONe)」といった国内メーカーの商品も好調だ。

筆者は会社に勤めていた頃、毎朝出勤時に近くのコンビニでZONeを購入し、ストローをもらってデスクで飲むようにしていた。レッドブルやモンスターなど人気商品はいろいろあるが、なぜか筆者はZONeの味が好みだった。

まず、レッドブルは高い。250mlで275円もするため、毎日飲んでいたら破産してしまう。それに比べてモンスターは355mlで200円と多少安い。ただ、これはうまく説明できないのだが、缶から直接飲むとアルミの影響か、どこか磯臭く感じる。
それが苦手であまり飲まなかった。

ZONeは二日酔いに効く(気がした)

その点、ZONeは500ml(販売終了)で200円前後という破格の安さで、味もどこか日本人好みの気がする。ストローをさして冷えたZONeをキューッと飲み込むと、朝から抱えていた二日酔いが吹き飛ばされていくようで、頭が冴え、気分が爽快になる。さらに、ZONeを飲みながらの喫煙がいちばん二日酔いに効く。体が回復していくような感覚になるのだ。

ただ、周囲からしてみれば、真っ黒いボトルに入った変な色のジュースを毎日のように飲んでいる姿は不健康に思われたようで、社内では怪訝な顔をされた。おまけに、飲んでいる本人は気づかないものだが、かなり強烈なニオイがするらしい。

決して不快なニオイというわけではないが、筆者が「プシュッ」と缶を開けると、そのうち「千駄木君が『魔剤』を飲み始めたぞ」と言われるくらい、甘ったるいニオイが周囲に漂うらしい。

酒もそうだが、強いニオイの飲み物が身体にいいわけがない。それでも筆者は、エナドリを飲まなければ二日酔いで頭が重いだけでなく、飲酒欲求のせいで吐き気が止まらなくなる。大変な状態だが、なぜかエナドリを飲めば解決された。

栄養ドリンクとエナドリ、何が違う?

ところで、栄養ドリンクとエナドリの違いはご存じだろうか。大まかにいえば、「タウリンが含まれているか否か」である。

たとえば大正製薬の「リポビタンD」、佐藤製薬の「ユンケル黄帝液」、アリナミン製薬の「アリナミンV」などの栄養ドリンクにはタウリンが含まれており、薬機法において「医薬品」または「医薬部外品」に分類される。
これは、病気に対する治療や緩和、予防効果が期待されることを意味する。

タウリンはアミノ酸から合成され、ホメオスタシスと呼ばれる“細胞を正常な状態に戻す作用”を持つ、生物にとって重要な物質である。特に肝機能に対して効果を発揮するとされ、胆汁の分泌や肝細胞の再生を促進するといわれている。

つまり、栄養ドリンクは医薬品または医薬部外品であるため、「滋養強壮」や「栄養補給」などと宣伝できる。

一方、エナドリは食品衛生法のもと「清涼飲料水」に分類される。要するに、コカ・コーラや三ツ矢サイダーと同じ扱いだ。

エナドリには栄養ドリンクのようにタウリンは含まれておらず、医薬品ではない(ややこしいが、海外製品には含まれている場合もある)。

その代わりに、「カフェイン」や「アルギニン」、あるいは「ガラナ」などが添加されている。

アルギニンは準必須アミノ酸の一種で、代謝を促進する効果があるとされ、この成分がリフレッシュ感をもたらす。

「アル中だったら、胆汁の分泌を促進する栄養ドリンクを飲んだほうがいいのでは?」

そう思うかもしれないが、栄養ドリンクはエナドリに比べておいしくない。毎日、嬉々としてストローをさして飲むようなものではない。それに容量も少なく、コストパフォーマンスも悪い。


なにより、毎晩ストロング系を5缶も飲んでいると、もはや「ファイト イッパーツ!」でも体は修復しないのである。

おそらく筆者の場合、深夜に何缶もストロング系を飲んでいるせいで脱水症状になっている。そのため、エナドリは一気にストローで水分補給するだけでもかなり楽になる。実際には、カフェインがアルコールの代謝を早めるわけではない。ただ当時の筆者には、脱水気味の身体に冷たい炭酸と糖分とカフェインを流し込むことで、二日酔いが軽くなったように感じられた。

「だったら、コーヒーを飲めばいいのでは?」

そう思われるかもしれないが、たとえ筆者がコーヒー好きであっても、エナドリと同じ量のコーヒーをがぶ飲みするのは辛いと思う。

子どもが飲みすぎて社会問題化

苦くてまずい栄養ドリンクを毎日1リットル飲むのは不可能だが、甘くてスッキリしたエナドリならごくごく飲める……。これが筆者だけではなく、多くの若者たちに受け入れられた結果、「魔剤」というネットミームが生まれるほど、エナドリは「疲労回復のための飲み物」としてのイメージが定着した。RPGにおける「ポーション」のような扱いだ。

ただ、その結果、メーカーも予測していなかった小中高生までもが常飲するという問題も発生した。2010年代以降、子どもたちの間で、エナドリの飲み過ぎによる“心身の異変”が報告されるようになったのだ。

含まれる物質が問題なのか。たとえばアルギニンは、大人は体内で生成できる一方、子どもは十分に生成できないとされる。
つまり、代謝を良くするための物質である。

ということは、アルギニン自体は有害な物質ではなく、よほど常識外れな量を摂取しない限り問題はない。ただ、成長ホルモンの分泌を促す作用もあるといわれているため、小さな子どもに過剰に摂取させるのは望ましくないといえるかもしれない。

一方、エナドリによるテンションの上昇といった覚醒作用は、主にカフェインによって引き起こされる。実はカフェインの過剰摂取は、心拍数の増加、動悸、めまい、不眠、震えなどの急性中毒症状を引き起こし、重症の場合は死に至る危険性があるのだ。体重が軽い子どもは特にその影響を受けやすいといわれている。

もっとも、エナドリという飲み物そのものが悪いのではなく、何日も徹夜している状態でエナドリを飲んだり、興奮状態で飲んだりすることで、身体に何らかの不調が現れるのである。

中には1日に2~3本も飲んでいる子どももいるという。酒もそうだが、飲む量が過剰であれば、何であれ身体に良くない。健康にいいと言われている牛乳でも何リットルも飲めば、きっと体に悪影響が出るだろう。

コーヒーや酒など、大人が飲んでいるものは子どもには効きすぎるのだ。こうしたものは大人になってから、「身を滅ぼすため」に飲むのが楽しいのだから、子どもたちはまだギルティ炭酸「NOPE」などを飲んで騒いでいるほうが健康的である。


バクバクさせること やめられない

入院直前の中島らもが、医者に引けを取らないほどアルコール依存症に詳しかったという逸話のように、筆者もエナドリの危険性を十分に理解したうえで、毎日2本もエナドリを飲んで心臓をバクバクさせていた。

酒とタバコだけでなく、エナドリまで飲み始めたのは、当時仕事していた雑誌で「エナドリ飲み比べ」という企画を担当することになったからだ。

ここではレッドブルやモンスターだけでなく、当時存在していたサントリーの「アイアンボス」、大正製薬の「RAIZIN」、ZONeのヨーグルトフレーバー、そしてアムウェイの「XS」を飲み比べることにした。

企画自体は「時間をかけていい食レポ」のため容易だが、そのときの筆者は何本も締め切りを抱えており、「早くこの仕事を片付けなければ」という焦りがあった。その結果、どのメーカーも推奨していないエナドリの「二本重ね」を敢行してしまう。

正直、毎日ZONeを飲んでいてその効きはわかっているのだから、2本も一気に飲めばよからぬことが起きるのはわかっていた。それでも時間がなかったのだ。

こうして、レッドブルとモンスターを間髪入れず、それぞれ飲み干す。すると、5分も経たないうちに、言葉どおり心臓が「バクバク」と鳴り始めた。血流の巡りがよくなったのか、心拍数が上がったのだ。

こうなると、「頭がリフレッシュする」とか「眠気が飛ぶ」といったことはなく、冷や汗が止まらず、不安だけが増していく。

「マズいぞ」

心臓を針で一突きすれば、身体全体が破裂すると思うほどだった。

決められた用量を守らなかったため、ストロング系とタールの重いタバコで弱った筆者の身体に、カフェインやアルギニンが過剰に作用したのだろう。


命の危険を感じるも、結局その後も飲んでしまう

「ヤバい……。死ぬかもしれない」

しかし、この日は飲み取材の予定もあったため、よせばいいのにさらに居酒屋に行ってアルコールを追加した。これは悪手である。

エナドリとアルコールの同時摂取は、カフェインの覚醒作用がアルコールの酔いを隠す。飲み過ぎ(急性アルコール中毒)や高濃度のカフェインによるめまい・震えを引き起こすため、非常に危険だ。農林水産省もこの組み合わせを避けるよう注意喚起しているほどである。だったら、「レッドブル・ウォッカ」ってなんなんだよ。

カフェインが酔いの感覚を鈍らせるため、自分の限界を超えて飲んでしまう。それに、カフェインを体内に取り入れることで体温と血圧が上昇し、血管が拡張する。そこへアルコールが入り込むと、身体は元気になったと“錯覚”するのだ。

幸い、筆者はもともと大酒飲みだったため、普段のキャパシティを超えるほどアルコールを摂取することはなかった。それでも、その日の飲み会では、ずっと心臓がバクバクと脈を打っていた。

さすがに、その心拍数の速さに命の危険を感じた筆者だったが、それでも酒ともエナドリとも距離を置くことはできなかった。これらを摂取しなければ、吐き気やめまいに襲われてしまうのだ。もはや、飲まなければ不調から逃れることはできない……。完全な依存症だ。

ついに飲めない身体になってしまう

ダメだとわかっていながらも、あの日の体験が忘れられないため、1日に飲むエナドリの本数は2本に増えた。500ミリ缶なので、毎日1リットルを常飲するようになった。

「エナドリを飲むことで、二日酔い気味の身体の血流の巡りがよくなり、どんどんアルコールも抜けていく気がする……」

当然、エナドリにそんな効果はないのだが、アルコール、ニコチン、カフェインにまみれた筆者の身体には通常の方程式は通用しなかった。

しかし、「二本重ね」の一件以来、エナドリを飲むたびに心拍数は日々速まっていった。胸を手で押さえる回数も増えた。

それでも、あるときから、いくらエナドリを飲んでも1時間も経たないうちに激しい吐き気に襲われるようになる。そこで、エナドリを飲まず、すぐさまストロング系に手を出すようになった。とうとう、カフェインやアルギニンだけではどうにもならない身体になってしまったのである。こうなってしまえば、エナドリは完全にお役御免だ。

こうして、筆者はエナドリを飲むのをやめた。アルコール依存症だったからこそエナドリを飲むようになったはずが、アルコール依存症がよりひどくなったことで、エナドリからは解放されたのだ。まったくもってポジティブな理由ではない。

そして、根本の原因だった酒をやめて5年ほど経った。酒同様、今はエナドリにも興味がない。

「あれだけ飲んでいたのに、いったいなぜ……?」

気づいたら、愛飲していたZONeは500mlから400mlになり、ボトル缶になっていた。物価高の影響かもしれないが、きっと以前よりも飲みやすくなったのだろう。

先日、早朝ロケがあった日、眠気を覚ますために久々にZONeを買った。

「あのときみたいに体をシャキッとさせてくれるだろう」

そう思ってボトルを開けた瞬間、ケミカルな果実のニオイがした。

「なるほど、これは匂うな」

<TEXT/千駄木雄大>※本記事は筆者個人の体験談です。エナジードリンクやカフェインの摂取について不安がある場合は、医療機関や公的機関の情報を確認してください。

―[今日もなにかに依存中]―

【千駄木雄大】
編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)がある
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