また、2022年に施行された「AV出演被害防止・救済法」の改正運動に当初関わっていたそらさんが、現在どのようなスタンスでこの問題と向き合っているのかについても語ってもらった。
所属事務所「二件連続未払い」という悪夢
――天川そらさんは、過去に所属していた事務所で、二件連続のギャラ未払いトラブルに見舞われたそうですね。天川:そうなんです。セクシー女優でもギャラの未払い二件連続は私ぐらいですよね(笑)。一件目は数百万円のギャラ未払いがあり、社長がギャンブルにつぎ込んでいたようで、結局支払われなかったんです。そして二件目は未払いの金額が、百数十万円くらいありました。ギャラが事務所側にストックされているので、「事務所を辞めます。今後は自分で全部処理するからギャラを払ってください。できれば一括でお願いします」って社長にずっと伝えていたんです。でも、半年くらい逃げられていました。ギャラを事務所が持っている限り、「待って、待って」と、ずっと引き延ばされる感じでしたね。結局最後まできちんと対応してもらえませんでした。
――最初の未払いを経験し、次の事務所にはどうやって入所したんですか?
天川:前の事務所を辞めてから、セクシー女優の活動をこのまま続けていくか躊躇していたんですけど、働かないと食べていけないので、当時信頼していた方の紹介で、次の事務所に入りました。
――支払い形態はどのような形でしたか?
天川:作品を撮ったメーカーから、一旦ギャラの全額が事務所に支払われるんです。そこから事務所が、私に支払うんです。それで月に何本も撮影しているのに、ギャラが支払われない状態が続いたので、請求したら遅延が続いていたんです。
――遅延の原因は何だったんですか?
天川:それが、実際のところは不明なんです。ただ、当時の社長が前身の事務所を買い取ったらしくて、その支払いに追われていたんじゃないかと思っています。
――その事務所には人気セクシー女優が多数在籍していましたよね。
天川:何か別の事業をやっていたのかもしれないですね。
――他の女優も未払いでしたか?
天川:私以外の女優は、支払いが終わっていたんです。社長と会うタイミングも、ほかの子たちと顔を合わせる機会も、気づけばほとんどなくなっていたんですよ。今思えば、周囲と隔離されていたというか、相談できる環境がなくなっていたんだと思います。何かあるときも、社長と2人きりで話す感じでした。
――どういうタイミングで知ったんですか?
天川:当時の社長と接点がある人から「天川さんのギャラはどうなりましたか?」って話になり、「実は未払いがあったんだ!?」みたいな感じで知りました。
――結局、未払いはどうなりましたか?
天川:事務所の社長とは、話し合いの場を設けるところまではこぎつけたんですけど、当日になって逃げてしまって、現れなかったんです。そこからは、ずっと消息不明の状態ですね。
それでもセクシー女優として業界に残った理由
――そういった経験を2回もしているにもかかわらず、なぜ今もセクシー女優として活動を続けているんですか?天川:今の事務所は、もともと私のマネージャーをしていた人が代表として立ち上げた事務所なんです。私のことも一番理解してくれているし、以前の事務所では一番仕事ができた人なんです。
――信頼関係があるんですね。とはいえ、いい加減なことが続いた業界に嫌気はさしませんでしたか?
天川:その不平不満や愚痴をずっと聞いてくれていたのが、今の社長なんです(笑)。マネージャー時代から「もっと女優さんに還元されるべきだと思うんですよね」って、ずっと話してくれていたんです。私も「そうだよね」って感じで、根本的な感覚、バイブスがすごく近かったんですよね。「いや、それはさすがにおかしいでしょ」っていう感覚を、当時からちゃんと持っていた人なんです。
――今の業界は、その感覚がないと務まらないです。
天川:私も今の社長も、もともと昼間働いていた経験があるので、一般的な社会感覚というか、真っ当な価値観がベースにあったんです。
――そういった意味で、今後に繋がる提言はありますか?
天川:事務所には、メーカーから先にギャラが入る仕組みなので、個人で直接やり取りするのは、ほぼ不可能なんです。ただ、最近は自分で同人作品を作ったり、個人でいろいろ動いたりしている女優も一定数いて、自分でできる女優は実際いるので、信頼関係さえあれば、個人で作品を撮って売れるんです。なので、そういう多様な働き方があってもいいんじゃないのかな、とは思っています。
AV新法に対する危機感
天川:「AV新法」はずっと見守っていますが、契約から撮影まで1ヶ月のクーリングオフ期間の義務付けは、撮影当日、急病などでの出演キャンセルがある場合困りますよね。1ヶ月前に出演契約を済ませておかないといけないので、誰か一人出演者が急病などになったら代役できないので、撮影自体がなくなるんです。
――そこはどう改正すればいいですか?
天川:逆に言えば、強要してくる人って、契約して1ヶ月後だろうが1年後だろうが、結局は強要してくる可能性があるんです。あと、出演者が当日来られなくなると、撮影そのものがなくなってしまうので、そのあたりはもう少し柔軟に対応できる内容にしてほしいなとは思います。
――「AV新法」改正運動が沈静化した理由はなんですか?
天川:私の場合はプレイヤーでもあるので、主張があまりに尖って強すぎると、「ちょっと扱いづらいよね」みたいな意見も出てきてしまうんです。ファンの中にも、「もう少し偶像でいてほしかった」とか、「ここまで主張が強いと、違う見方をしちゃって作品を楽しめなくなる」みたいな声があったんです。
やっぱりセクシー女優として見られている間は、個人的な思想や強い意見があると、観ている人が楽しめないんです。
ロビー活動に必要な根回し
――業界全体としてもトーンダウンしていますよね。天川:反対運動をしていても、実際にはブレイン役の人があまりいなくて、みんな「どう動けばいいのか」がわからないんです。例えばロビー活動をするにしても、どこを窓口にすればいいのか、誰に取り次いでもらえばいいのか、そこからわからないんです。最初に誰にアポを取るかで、その後に会ってくれる人まで変わってくるので、やみくもに動いても意味がなくて、「この人と先に会っても大丈夫か」とか、「このルートなら別の人とも繋がれる」とか、何人か詳しい人に裏取りしながら、マップを作るように動く必要があると思います。
――いまは野党の現職議員と、落選した元議員に訴えているのが状況です。
天川:そういう意味では、ロビー活動ってかなり重要なんです。ただ、こちらの業界って比較的素直な人が多いので、そこを飛ばして突撃してしまうことが結構あるんですよ。でもロビー活動って、「敵を作らない」こともすごく大事なんです。そこを間違えると、一気に関係が悪くなってしまうんです。みんなで足並みを揃えて動こうとしているときに、誰かが先走って突撃してしまうと、業界に対してもともとネガティブな感情を持っている人たちが多いから、「だからセクシー女優は……」って見られかねないんです。
――もともと偏見のある業界ですからね。
天川:だから、本当はタイミングを見ながら、「ここはこの人に動いてもらおう」とか、「意見書を出すタイミングで女優が前に出よう」とか、役割分担をしながら進めるのが理想なんです。周囲が足場を作ってくれてはいるんですけど、その場で足踏みしている状態が長く続いていて「次はどう動くべきか」を判断する、いわば現場監督みたいな存在がいないんですよ。今後もっと現場の声を反映していけたらいいなっていうのはあります。実際に働いている人たちの声をきちんと拾いながら、制度を調整していくことが大事なのかなと思います。
※※※※※
過去に二件連続のギャラ未払いというトラブルを経験した天川そらさんは、現在もセクシー女優として活動を続けている。業界の暗部を正直に語りながら、「それでもこの業界で働きたい」という強い意志を示してくれた。
現在の事務所を選んだ決め手は、元マネージャーである代表との厚い信頼関係、そして「女優にきちんとお金を還元すべき」という共通の価値観にある。一般社会の常識をベースに持ち、「おかしいことはおかしい」と言い続けられるビジネスパートナーの存在が、彼女の大きな支えとなっているのだ。
【天川そら】
X:@amakawa_sora_
<取材・文・撮影/神楽坂文人(X:@kagurazakabunji)>
―[天川そら]―
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