ブラジル人はお祭り好きな国民だ。なんでもかんでもすぐに祭りの材料にしてしまう。
「ネイマールはメンバーに入るのか、外れるのか」
ブラジルのここ半年間の関心はその一点に尽きた。
ブラジル代表のメンバーが発表される日まで、カフェやスーパー、ビーチ、レストラン、学校、オフィス、病院、全国のすべての家庭で、ネイマール問題が議論されてきた。今のネイマールにワールドカップを戦うだけのフィジカルがあるのか、もっと若い選手にチームを託すべきではないのか......テレビ番組に医師、心理学者、元選手まで招かれ、「ネイマールは身体的、精神的に、もう一度ワールドカップを戦い抜けるのか」が議論された。
その祭りが最高潮を迎えたのが5月18日の代表メンバー発表当日だった。
何百万もの人々が日常を止め、カルロ・アンチェロッティ監督によるセレソン(ブラジル代表)の招集メンバー発表を見守っていた。テレビ、ラジオ、YouTube、スポーツサイト......至るところで生中継が行なわれた。スクリーンの前には人だかりができ、アンチェロッティがネイマールを選んでくれるよう祈る子どもたちの姿が映し出された。これほどの盛り上がりは、サッカー王国ブラジルでも珍しいことだ。誰もラフィーニャやヴィニシウス・ジュニオール、エンドリッキのことなど気にしていなかった。
アンチェロッティ自身もこの1年、代表監督として仕事をしたことで、「ネイマール」という存在がブラジル国民に与えるインパクトと熱量に驚いたと認めている。「まるで国民的な狂気だ。ブラジル独特の情熱だよ」と、先週も語っていた。
【選出には疑問の声も】
メンバー発表はリオデジャネイロの博物館で行なわれたが、スポーツの記者会見というよりはショーに近かった。大音量の音楽、巨大スクリーン、派手な演出。だが、肝心の代表発表がなかなか始まらない。CBF幹部やスポンサーたちはマイクの前で演説を続け、ブラジル代表のスポンサー契約が過去最高を更新したことなどを誇らしげに語った。
そして1時間以上に及ぶ息が詰まるような待ち時間の末、アンチェロッティがついに「ネイマール」の名を口にした瞬間――複数の街角で花火が上がった。まるでワールドカップの決勝でゴールを決めたかのように、クラクションとサイレンが街を埋め尽くした。SNSにはネイマールの名前を叫ぶ人々の動画が次々と投稿された。
一方、ネイマールの自宅で撮影された動画には、感動する家族の姿が映っていた。長男ダヴィ・ルッカは涙を流していた。
ネイマール自身は「ミッションは達成された」と語った。彼にとってはまず「ワールドカップへ行くこと」が何より重要なのだ。優勝できるかどうかは、また別の話だ。
熱狂は翌日の朝まで続いた。ネイマールは、スポーツ番組、新聞の一面、ラジオ、SNSを支配し続けていた。おそらくブラジルで代表のメンバー発表がこれほどの騒動になったのは、2002年のワールドカップでロマーリオが落選した時以来だったろう。
ただし、今回とは決定的な違いがある。当時のロマーリオは、ほぼ国民全員が代表入りを信じて疑わない存在だった。世界最高クラスのストライカーであり、どこへ行っても得点王だった。
一方、ネイマールはブラジル代表史上最多得点者であり、その数はペレをも上回っているものの、ワールドカップ予選に出場したのは2023年10月のウルグアイ戦が最後。
だからネイマール選出を喜ぶ声ばかりではない。疑問を持つブラジル人も多くいる。ネイマールの招集問題は、ブラジル社会を政治的にも感情的にも、そしてサッカー的にも分断した。おそらくこの国で最も意見が割れるアスリートだろう。彼の名前が最終メンバーに入ったことで、国内の分断はさらに深まった。
【代表の主力選手がネイマールを支持】
たとえば、今回招集されなかった他のフォワードたちは、ネイマールよりはるかに優れた数字を残していた。比較にならないほど明確な差があった。それでも外された。
ジョアン・ペドロ(チェルシー)は今シーズン15得点を決め(第37節終了時点)、プレミアリーグ得点ランキング4位だが、落選した。彼だけではない。アントニー(ベティス)、イゴール・ジェズス(ノッティンガム)、カイオ・ジョルジ(クルゼイロ)、ユーリ・アルベルト(コリンチャンス)、サヴィーニョ(マンチェスター・シティ)、アンドレイ・サントス(チェルシー)、そしてフラメンゴの得点王ペドロ。全員が成長期にあり、コンディション万全で、クラブのアイドルであり、決定力あるアタッカーだ。それでも彼らはメンバーから外れた。
ネイマールを選んだアンチェロッティの真意はわからない。ただ舞台裏で、代表の主力たちがネイマールを強く推していたのは確かだ。その中心はキャプテンのカゼミーロ。彼はラフィーニャ、ヴィニシウス・ジュニオール、マルキーニョスらとともにアンチェロッティへこう保証した。
「必要なら、ロッカールームで自分たちがネイマールをコントロールする」
さらにネイマール本人も、ラフィーニャとの会話のなかでこう約束したという。
「たとえ1試合で数分しか出場できなくても、代表を助ける準備はできている」
アンチェロッティは、ネイマールはゴールを決めるために必要なのではなく、グループのために必要だと判断したのだろう。その点では、日本代表に選出された長友佑都と似ているかもしれない。
またもうひとつ、あまり語られていない側面がある。それはメンバー発表において、商業的プレッシャーが極めて巨大だったということだ。
CBFは、今回のワールドカップ関連で10億レアル(約310億円)のスポンサー契約に成功した。史上最高額である。そしてネイマールは今でも世界で最も有名なブラジル人選手だ。スポンサーはワールドカップにネイマールを必要としている。莫大な放映権料を払ったテレビ局も、彼が代表にいるほうが視聴率を取れると踏んでいる。
ブラジルだけではない。FIFA幹部や大会組織委員会もまた、"ネイマール不在のワールドカップ"が商業的には物足りないことを完全に理解している。
驚くべきなのは――誰も説明を求めていないことだ。なぜネイマールなのか。誰も説明しないし、誰も理解していない。
なぜ人々はネイマールにこれほど熱狂するのか。正直に言えば、私にもよくわからない。
もしかしたらブラジルに"英雄"がいなくなったからかもしれない。あるいは、「ネイマール」という名前には特別な魔法があるのかもしれない。「彼だけが他のどのブラジル人にもない才能を持っている」と信じている者も少なくない。
多くのブラジル人にとって、ネイマールはいまだに"希望"なのだ。24年間、ワールドカップ優勝を逃し続けたブラジルにとって、「夢を現実に戻せるかもしれない存在」なのだ。
もしネイマールが最終メンバーから外れていたら、ブラジルはカーニバルが終わったあとのように、静かで、寂しくて、空っぽな空気になっていたかもしれない。だがネイマールは選ばれた。ブラジルの"祭り"はいまだに続いている。

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