ソーシャルVR空間では、見た目は美少女、声はおじさんというユーザーが大量に活動している。彼らはアバターや機材に数十万~100万円単位をつぎ込み、バーチャル恋愛や“性行為”にまでのめり込む。
なぜ男たちはVRで美少女になりたがるのか。その奇妙で切実な生態を追った。
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声だけオッサンの美少女が大量にうごめくVR空間

 ここ数年、サブカル好きの間でソーシャルVRプラットフォームが流行りだ。アバターを操って交流する空間だが、特徴的なのは、ユーザーの多くが男性で、そのかなりの割合が美少女アバターを使っていることだ。

 ソーシャルゲームといえば廃課金が話題になりがちだが、メタバースも例外ではない。ガジェット事情に詳しいとあるユーザーは、「メタバースは“かわいい自分”を作るための課金が青天井になりやすい」と指摘する。

「ユーザーにとってアバターは自分そのものです。だから複数のアバターを買い、それぞれに衣装や装飾品を足していく。ヘビーユーザーなら20万円超は珍しくない。中には他人に自分好みのアバターをプレゼントする人もいて、積み重なればアバターだけで100万円以上使う人もいます」

 課金要素はアバターだけではない。自分好みのワールドを作る者もおり、配置する素材を購入すればそれなりに金がかかる。だが、一番金がかかるのは、やはり機材だという。

「スマホがあればモバイルでも遊べますが、没入感を高めるならVRゴーグル、デスクトップPC、モーションキャプチャーが必要になる。
このフルセットがあれば、現実世界と同じようにメタバース内でも動き回れる。こだわれば青天井ですが、最低でも50万円は見ておいたほうがいい。しかも実際に体を動かしながら会話するので、防音にまでこだわるようになるんです」

メタバースだけのために家を購入。半裸の女性姿で電脳空間を出歩くおじさんも……

 実際、メタバースのためだけに家を買う人間もいるという。鉄筋コンクリートのマンションの一室に引っ越し、防音材などを用意すれば金がかかる。総額で1000万円近くも費やしていた廃課金者もいる。そのうえさらに、「mutalk」というマスク型のガジェットを装着すれば、声もれ防止対策は完璧となる。

 実際、メタバースとはどんな空間なのか、どんな人間がいるのか。記者がユーザーたちと手軽に交流できる空間にて、100人以上の人間と交流した結果、見た目は美少女アバターだが大半はどこにでもいる一般人男性ばかりであった。

 だが、声は基本的に男性のままの人が多い。ボイスチェンジャーで女性の声を模す人や、中には声が好きな同級生のギャルに有償で録音させてもらい、その声を練習して自らギャルのような声を出す猛者もいた。

 ほかにも海外の女性ユーザーとの恋愛にのめり込み現地まで会いに行く者や、現実で行き場を失った欲望をVRで発散する者もいた。
中でも印象的だったのは、マイクロビキニを着た姿の美少女アバターで露出を楽しむ男性だ。

「男からの視線でもいいのか」と問うと、露出狂の男性は「視線を感じれば、それでいいんです」と昂りながら言った。男性が衣装について聞いた時点で呼吸が荒くなった理由に気付き、記者は声をかけたことを後悔。

メタバース特有の性文化「ジャスト」を目撃

「見た目は美少女、中身はおじさん」だらけのVR空間がカオスすぎた…疑似恋愛にのめり込み、リアルへ発展して破局した男性も
A氏提供のアバター
 そしてメタバースには、規約NGだがバーチャル性行為をする文化があり、「ジャスト」という隠語で呼ばれる。

 さすがに衆人環視の空間で突然ジャストをはじめる人間はいないが、ジャストを求める人々が集まるハッテン場のようなマッチングワールドも存在する。そこに潜入した記者は、偶然にも誘われ、第三者どうしの“ジャスト”を見守ることに……。

 ひとりはドイツ人が操作する美少女アバターで、カタコトの日本語で「だいすき」と言ったり、卑猥な言葉を連発したり、喘いだりしていた。それに対し、相手の美少女アバターはエロアニメのセリフ音源で反応。驚いたのは、双方の美少女アバターに立派な陰茎が生えていたことだ。あからさまな性的演出を繰り広げるかなりカオスな状況。最後にドイツ人が近づいてきて、「ばいばい、へんたいおにいさん」と囁いて去っていった。

 ジャストのほかには、真剣交際を意味する「お砂糖」という関係もある。中身も声もおじさんが多いメタバースで恋愛や性愛はどう成立していくのか。


 メタバースイベントのキャストとしても活動するベテランユーザー・A氏に話を聞いた。

「お砂糖関係のユーザーたちは、自分たちは親友みたいな関係と言い張りますが、裏ではジャストしてると思います。実際に、ジャストをしているところに迷い込んだこともあります。そこでは子持ちの既婚者が10代の学生とジャストをしており、『どう、これ興奮する?』、『これスゴいっす。まじスゴいっす』とお互いに男声で盛り合っていました」

美少女おじさん同士の疑似恋愛がリアルにも発展!

 なんともカオスな状況だ。中でもA氏が最も印象に残っているエピソードがあるという。

「とあるユーザー同士の“三角関係”ですね。お砂糖が他の男性とジャストしているという噂を聞いてモヤモヤしていたが、その浮気相手とお砂糖が、メタバース公式のオフイベントでリアルで会って遊んで、そのまま一発ヤッたという話を聞いて心が壊れて破局したという話でした。もちろん、登場人物全員男性で、異性愛者です。リアルでもジャストする人は少ないですが、いるんですよね」

 元々は異性にしか興味がなかったが、VRでのジャストを通じて目覚めてしまう人は少なくないのだそうだ。脳で恋をすれば身体もついてくるのだろうか……? 逆に、別れてしまうことは「お塩」と呼ぶらしい。

「リアルでは仲の良い親友、メタバースではジャストする関係を継続していくことはザラにあります。
ただ、オフイベントで、スカートを履いた男性が沈んだ表情でトボトボと歩く姿も見ました。お塩されてしまうことも、あるにはあると思います」

 現実とネットは別。そう考えている人も意外と多いのだろう。男たちが美少女の姿を借りて恋をし、嫉妬し、性愛に沈んでいくこの世界は、救済と地獄が紙一重で同居する、あまりに現代的な魔境だった。

取材・文/モトタキ
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