“大谷基準”では物足りなかった前半戦
5人の成績を比べると、やはり今年も打者・大谷翔平(ドジャース)の活躍が目立った。打率.293、出塁率.403、長打率.549、OPS.952。本塁打も22本を数え、打者として十分すぎる数字を残した。OPS.952は両リーグを通じて5位。普通の選手なら文句なしの前半戦だが、大谷に対して「普通の強打者」の物差しを当てても意味がない。50本塁打、三冠王、リーグMVPまで期待される選手として考えれば、打者成績は思ったほど伸びなかった。
本塁打数は両リーグ10位タイにとどまり、58打点は25位タイ。打率や出塁率は高いものの、相手を一振りでねじ伏せる場面は、大谷としては物足りなかった印象だ。
もちろん、投手として先発ローテーションを担いながらの成績である。二刀流選手としての価値に疑いはないが、今回は打者だけの比較。そう割り切れば、前半戦の大谷は「期待以上」ではなく、高すぎる期待には届かなかったといえる。
岡本和真は22本塁打で評価を一変
対照的に、開幕からの約3か月半で評価を大きく変えたのが、大谷と同じ22本塁打を放った岡本和真(ブルージェイズ)だった。岡本にとって最大の疑問は、日本で見せてきた長打力をそのままメジャーへ持ち込めるかどうか。巨人では6年連続30本塁打を記録した一方、29歳で迎えたメジャー1年目だけに、若手のように長い適応期間を見込まれる立場ではなかった。
開幕直後は三振がかさみ、打率も上がらなかった。速球に差し込まれ、変化球に対応しきれない打席も見られた。それでも、当てにいく打撃へ逃げず、自分のスイングを崩さなかったことが大きい。
特に6月下旬以降はチャンスで決定的な一打を放つ場面が増えた。気温の上昇とともに本塁打を量産する姿を想像したファンはどれだけいただろうか。
前半戦は打率.239、出塁率.319、22本塁打、62打点、OPS.788。本塁打と打点はチーム断トツの数字を残しており、打率の低さ以上にメジャー1年目から中軸の仕事を果たした事実の方が大きい。
岡本に求められていたのは、安打を量産し高打率を残すことではない。甘く入った球を仕留め、塁上の走者をまとめて返すこと。その役割を十分果たしているといえるだろう。
しかも22本塁打は、大谷が2018年に記録した日本生まれのメジャー新人最多に並ぶ数字となった。チーム最多タイとなる93試合に出場し、タフさも示している。
村上宗隆は「魅力と危うさ」を見せた前半戦に
岡本と同じくルーキーの村上宗隆(ホワイトソックス)も、別の形で衝撃を与えた。故障による1か月以上の離脱がありながら20本塁打。離脱前にはア・リーグ本塁打トップに立ち、4月には5試合連続本塁打も記録した。村上の一発は個人成績を積み上げただけでなく、低迷からの脱却を図るホワイトソックス打線に勢いをもたらした。
三振の多さとは対照的に、持ち前の選球眼も発揮した。60試合で46四球を選び、出塁率は.371。長打だけを警戒すれば四球で歩かれるため、相手バッテリーにとっては簡単に処理できない存在だった。
一方で三振は多く、打率も低迷した。コンタクト面の不安は想像通り残った。村上の前半戦は、期待を上回ったというより、魅力と危うさの両方を極端な形で見せたとも言い換えられるだろう。
鈴木誠也が証明した「安定感」
メジャー5年目を迎えた鈴木誠也(カブス)は、今年もいい意味の安定感で存在価値を示した。2番から6番まで複数の打順を任されながら、打率.268、15本塁打、OPS.811を維持。打順が多少変わっても打撃の形を大きく崩さず対応した。
ただ、得点圏打率は.198と、中軸としては物足りなさも残した。それでも、打順を固定されなくても一定の数字を残せるのは、これまで積み重ねてきた経験値の証明である。
鈴木は評価を急上昇させたわけではない。すでに主力として計算される立場にあり、その期待を大きく裏切らなかった。驚きは小さくても、安定感は日本人打者の中でも高かった。
吉田正尚は苦しい立場に…
一方で、最も厳しい立場に立たされているのが吉田正尚(レッドソックス)である。打率.264を残したものの、3本塁打、OPS.725と指名打者としては長打力を示せなかった。守備で出場機会を広げることも難しい立場で、指名打者として起用されるには「まずまず」では足りず、打ち続けてアピールするしかない。
前半戦は成績そのものより、十分な打席を与えられない立場が重くのしかかった。後半戦で必要なのは復調の気配ではなく、起用せざるを得ないほどの結果である。チーム内での序列を覆す猶予は、それほど多く残されていない。
日本人打者5人の前半戦は、成績だけでなく、置かれた立場と評価の変化もくっきり分かれた。
前半戦の最優秀打者を1人だけ選ぶなら、OPSで両リーグ5位に入った大谷になる。それでも、開幕前から最も評価を上げたのは岡本和真だろう。序盤の苦戦を乗り越え、「メジャーでも本塁打を打てるのか」という最大の疑問へ22本塁打で答えを出した。
期待を背負いすぎた大谷、期待と不安を同時に膨らませた村上、求められた役割を果たした鈴木、期待に応える場所さえ限られた吉田。その中で岡本が、開幕前に付けられた疑問符を感嘆符へ変えた。5人の明暗がくっきり分かれた前半戦だった。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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