こんにちは、シューフィッターの佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。

黒スニーカーは、汚れが目立ちにくく、仕事にも休日にも使いやすい。派手な色より失敗しにくいため、「とりあえず黒を選んでおけば大丈夫」と考える人も多いでしょう。

ところが、見た目が似ていても中身はまったく違います。丸一日歩いても疲れにくい靴、雨の日にも頼れる靴がある一方、2万円以上するのに実物を見ると質感が惜しい靴もあります。

私は靴の設計に約10年携わり、修理店では約4万足を直してきました。現在はフリーのシューフィッターとしてお買い物アテンドや相談を受けていますが、最近とくに多いのが「歩きやすい黒スニーカーを教えてほしい」という声です。

そこで今回は、現在購入できるモデルから、通勤や旅行など日常でしっかり歩ける3足を価格帯別に選びました。最後に、人気モデルを買うときの注意点も紹介します。

1万円台ならオン「クラウドランナー3」

「黒スニーカーなら何でも同じ」は間違い。靴のプロが選ぶ“超歩...の画像はこちら >>
最初は、On(オン)の「クラウドランナー3」。価格は1万8700円です。オンで定番の「クラウド6」より価格を抑えながら、足を支える構造はむしろ本格的。ジョギング向けの設計ですが、ウォーキング、通勤、旅行にも使えます。

魅力はクッション性だけではありません。
着地したときの横ブレが少なく、ゆっくり歩いても早足でも安定します。ベロと足首まわりのパッドも厚く滑らかなので、靴ずれしやすい人にも試してほしいモデルです。

木型は比較的ゆったりしており、靴そのものも足の形に沿って曲がっています。紐を締めると甲はきちんと押さえられますが、指先は窮屈になりにくい。このメリハリが秀逸です。つま先が反り上がった形状で足を前へ運びやすいため、長時間歩くと足が上がりづらくなる人にも向いています。

オンは靴底の減りが早いと指摘されることがありますが、クラウドランナー3は接地部分が補強され、同社の中では比較的耐久性にも期待できます。見た目と安定感、価格のバランスがいい一足です。

雨の日まで一足で済ませるならHOKA「クリフトン11 GTX」

「黒スニーカーなら何でも同じ」は間違い。靴のプロが選ぶ“超歩きやすい”3足と“要注意”の1足
HOKA「クリフトン11 GTX」。著者私物
2万円台のおすすめは、HOKA(ホカ)の「クリフトン11 GTX」。価格は2万5300円です。人気の厚底モデル、クリフトン11を完全防水のGORE-TEX仕様にしたモデルで、しかも幅が「レギュラー」と「ワイド」タイプから選べます。

約4cmの厚いソールが路面からの衝撃をやわらげますが、単にフワフワするだけではありません。底面が広く、左右へのブレがかなり抑えられています。
28cmで片足約300gと、防水の厚底靴としては軽量です。雨の日の通勤から旅行まで一足でこなしたい人には、非常に合理的な選択でしょう。

「黒スニーカーなら何でも同じ」は間違い。靴のプロが選ぶ“超歩きやすい”3足と“要注意”の1足
ゲリラ豪雨時に撮影
靴ひもはコード式で、ワンタッチで締められます。GORE-TEXの靴にありがちな硬さやバリバリした感触も少なく、足なじみは良好です。

特徴的なのが、アッパーの広い範囲に使われた反射材です。昼間はシルバーのデザインですが、夜に車のライトなどが当たると強く反射します。

完全なオールブラックを求める人には少し派手かもしれませんが、黒い服と黒い靴で夜道を歩く危険を考えれば、実用的な設計です。

3万円台でも紹介したいアルトラ「OLYMPUS 275 HILO」

「黒スニーカーなら何でも同じ」は間違い。靴のプロが選ぶ“超歩きやすい”3足と“要注意”の1足
アルトラ「OLYMPUS 275 HILO」。著者私物。※紐はサロモンのクイックレースにカスタムしています
3足目は、ALTRA(アルトラ)の「OLYMPUS 275 HILO」。価格は3万1900円です。気軽に買える値段ではありませんが、歩きやすさ、軽さ、耐久性を妥協したくない人には試す価値があります。

最大の特徴は、足の形に近い幅広のつま先です。指が圧迫されにくく、路面を指先まで使って踏ん張れます。約4cmの厚底にはクッション性がありながら、力が横へ逃げにくい素材を採用。
アウトソールは濡れた路面でもグリップ力を発揮するヴィブラム社のメガグリップです。

見た目に反して片足390gという軽さ(サイズUS9.5)で、アッパーには軽量で摩擦に極限まで強いフランス・シャマテックス社の「マトリックス」という特殊素材を使用しています。完全防水ではありませんが、軽い雨ならはじき、濡れても比較的乾きやすい。履き口は足首を柔らかく包み、小石や跳ね返った水が入りにくい構造です。ちなみに著者は購入後、紐からサロモンのクイックレースに交換して、よりアジャストしやすいようカスタムしました。

ただし、アルトラは一般的なスニーカーと足入れが異なります。サイズ選びを含め、できれば取扱店で試着してください。

ニューバランス「NB996 GTX」はカラーによって評価が変わる

「黒スニーカーなら何でも同じ」は間違い。靴のプロが選ぶ“超歩きやすい”3足と“要注意”の1足
ニューバランス「CM996XV2 GORE-TEX」。画像は公式HPより
最後に注意したいのが、ニューバランス「CM996XV2 GORE-TEX」です。このモデル自体をおすすめしないわけではありません。グレーと、黒いアッパーに白いソールを組み合わせたカラーは、質感もよく、GORE-TEXを使用しているとは気づかないほど自然にまとまっています。

気になるのは、アッパーからソールまで黒で統一した「オールブラック」です。

公式ではメッシュと「牛革を含む素材」とされていますが、実物は表面の質感が平坦で、価格に対してかなり安っぽく見えました。
黒もわずかにグレーがかっており、写真で見るほど引き締まった印象ではありません。

「黒スニーカーなら何でも同じ」は間違い。靴のプロが選ぶ“超歩きやすい”3足と“要注意”の1足
アップ写真
履き心地や防水性能ではなく、あくまで外観の評価です。同じ996 GTX V2でも、グレーや黒白はよくできています。オールブラックを検討している人だけは、ネットの写真で即決せず、店頭で実物を確認してから判断してください。

黒スニーカーは無難だから選ぶ靴ではありません。通勤中心ならオン、軽さと完全防水ならHOKA、価格が上がっても足指の開放感と耐久性を求めるならアルトラ。それぞれの得意分野を理解すれば、仕事にも雨の日にも旅行にも、本当に使える一足を選べます。

<文/佐藤靖青>

【シューフィッター佐藤靖青】
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』。著書『予約の取れないシューフィッターが教える正しい靴の選びかた』
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