旅先で景色を眺めながら、「こんなところに住めたらいいな」と思ったことはありませんか。SNSを開けば、地方でのんびり暮らす人の投稿が流れてきて、満員電車の中でつい見入ってしまう。
今の暮らしからいったん離れて、新しい場所でやり直してみたい。そんな気持ちになる日は、誰にでもあるのかもしれません。
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実際に、地方へ移って働く人は増えています。総務省によると、都市部から地方へ移り住み、地域の仕事に取り組む「地域おこし協力隊」の隊員は、2025年度に8196人。前年度より286人増えて、過去最多になりました。年代別では20代が33.6%でいちばん多く、30代の30.1%と合わせると6割を超えます。若い世代にとって、地方への移住は身近な選択肢になりつつあるようです。

今回ご紹介するのは、過去に大きな反響を呼んだ人気記事から、会社を辞めて、縁もゆかりもない東北に移住した女性の話。

記事の後半では、移住を後押しする支援金がどのくらい使われているのかを調べてみました。

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誰も自分のことを知らない東北に移住

東京に疲れて“東北に移住した”20代女性の後悔。憧れの仕事で「月6万円」しか稼げず…/移住支援金は1人いくらもらえるのか調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
さまざまな自治体が支援策を出すなど、東京や大阪など都市部から地方へ移住するのが当たり前になりつつある。ただ、移住しても良いことばかりではなく、失敗するケースもあるようだ。現在、動画配信者として生計を立てている松岡清美さん(仮名・28歳)は、大学卒業後に入社したIT企業で激務に耐えられず退社。その後、地方移住を決意したそうだ。


「新卒で入ったのは、IT業界ではそこそこ有名な会社。営業をしていたのですが、はじめはノルマもきつくなく、給料も良かったのでホワイト企業だと安心していたんです。ただ、業績が徐々に落ちていき、方針が変わってサービス残業もさせられるように……。転職組の部長との相性も悪く、精神をやられてしまい、半年ほど会社を休職したんです。その間にコロナ禍になったこともあって、いろいろと考えるところがあり会社を辞めて、縁もゆかりも無い東北の田舎に移住することに決めたんです。実は、親とあまり仲が良くなく、地元の愛知県に帰る選択肢はなくて。誰も自分のことを知らない東北に移住したんです」

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会社勤めで痛い目にあっていたこともあり、自宅でできる動画配信を仕事にしようと決意したという。

「仕事を休職していた時に、某アプリでライブ配信を行ったら意外に稼げたんです。ヒマだったので、毎日ライブ配信をしていたので固定ファンが付いて、20万円くらい稼げた月も。もともと、ネットで動画を見るのが好きだったので、配信だけで食べていきたいと考えるようになったんです。これなら仕事を辞めてもライブ配信だけで食べていけるなと」

「月6万円」しか稼げなくなってしまう

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しかし、現実はそんなに甘くない。移住して数か月でライブ配信での収益は月に数万円ほどに激減。会社員時代の貯金を切り崩しながら生活するハメになってしまったそうだ。


「ライブ配信は、コロナ禍のときは儲かったのですが、段々と収益が下がってきまして。配信者が増えて、固定ファンも減っていったんです。YouTubeチャンネルでの配信もはじめたのですが、いまだに登録者数は5000人ほどで稼げる段階にない。とはいえ、どこかに就職するのも嫌なので、なんとか軌道に乗せるために、勉強しながらバイトで食いつないでいる状況です」

ちなみに、松岡さんが配信関連で得られるお金は平均して月に6万円ほど。少なくともあと10万円は欲しいところで、松岡さんは手っ取り早く稼げる夜職をはじめることになる。しかし、そこで田舎の洗礼を受けたそうだ。

スナックの同僚にありもしないデマを吹聴され…

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「いきなりキャバクラで働くのも嫌で、まずはライトなスナックからはじめました。サイトで求人を出していた駅前のスナックで働きはじめて、時給は2000円からスタート。1日働いて1万円稼げる計算で、10日間通うことになったんです」

生まれて初めての夜職ながら、会社勤めのストレスに比べたら楽だと、やる気に満ち溢れていたとのこと。しかし、待ち受けていたのは同僚からの陰湿ないじめだった。

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「東京から来た自分が気に入らなかったのか、同世代のA子が常連客に『田舎の人をバカにしている』と言いふらしていたんです。真っ赤な嘘を真に受けた常連客が、酔っ払った際に私に絡み、罵声を浴びせてきたんです。しかも、私が配信をしていることを知っていたA子は、セクシーな動画の配信で荒稼ぎしていると、ありもしないデマを吹聴して……。
私を含めて4人の女の子が働いていたのですが、皆から無視されるようになったんです。なんだか馬鹿らしくなって、そのお店は半年ほどで辞めてしまいました」

キャバクラで働くも、疲れすぎて配信ができない

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とはいえ、配信だけでは食べられないので仕事を見つけなければいけない。そこで、現在住んでいる県から少し都会の隣県に引っ越しすることを決意。ただ、その行動も裏目に出ることになってしまったそうだ。

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「引っ越し先にはしっかりと繁華街もあり、そこそこ稼げる夜職の求人も少なくなかったです。もうスナックはコリゴリなので、心機一転で時給が高いキャバクラにしたんです。そのお店でイジメはないのですが、ただただ仕事がきついんです。スナックだとお酒を作ってカラオケの相手などしていればよかったですが、キャバクラはしっかりと男性に楽しんでもらわないと人気も出ません。結果として月に40万円くらいは稼げるようになったのですが、疲れすぎて休みの日は寝てしまい、ライブ配信や動画の撮影などができなくなってしまった。そもそもキャバ嬢になるために移住したわけではなく、なんのために田舎に住んでいるのかわからない有様です……」

自分がやりたいことを実現するために移住したはずの松岡さん。しかし、生活するための夜職で体力を使い切ってしまい、本末転倒の状況に追い込まれてしまった。

<TEXT/高橋マナブ>

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■移住支援金を使った人は、7年間で3万人あまり

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地方への移住を後押しする制度のひとつに「移住支援金」があります。内閣府によると、東京23区に住んでいる人や、23区へ通勤している人が、東京圏の外へ移り住んで就職や起業などをした場合に、自治体から支給されます。金額は、単身なら60万円以内、世帯なら100万円以内。
18歳未満の子どもを連れて移住する場合は、これに加えて子ども1人につき最大100万円が支給されます。

内閣府がまとめた「地方創生移住支援事業 交付実績」によると、この制度を使って移住した人は、2019年度から2025年度までの7年間で、あわせて3万557人。年度別でいちばん多かったのは2024年度の7829人で、2025年度は6771人でした。

ちょっと意外だったのは、この支援金には返還の決まりもあることです。申請から5年以内に移住先から転出した場合などは、返還を求められることがあります。移住は引っ越して終わりではなく、そこで暮らし続けることまで含めて考えるもの。制度からも、そんな姿勢が伝わってきます。

■東京圏に移る人のほうが多い状態は、30年連続

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一方で、人の流れ全体をみると、少し違う景色も見えてきます。総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告」によると、2025年に東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)へ移ってきた日本人は45万468人。一方、東京圏から出ていった人も33万7730人いました。差し引くと、移ってきた人のほうが11万2738人多く、この「転入超過」は30年連続です。

前年と比べると、転入超過は6599人減っています。
それでも、東京圏に人が集まる流れが続いていることに変わりはありません。ただ、東京圏へ移る人も、地方へ移る人も、慣れない土地で、知り合いのいないところから暮らしを始めるのは、思い切った一歩なのだと思います。

松岡さんも、誰も自分のことを知らない土地で、やりたいことのために新しい暮らしを始めた一人でした。ところが、生活費を稼ぐための仕事で疲れ切ってしまい、「なんのために田舎に住んでいるのかわからない」と打ち明けています。

ただ、思い描いていた暮らしと、実際の毎日がずれてしまうのは、移住にかぎった話ではないのかもしれません。好きなことに時間を使いたいと思いながら、目の前の仕事に追われて、休みの日は寝て終わってしまう。そんな毎日に、心当たりのある人も多いのではないでしょうか。

「いつかやりたい」と思っていることが、今どのくらい手つかずになっているか。松岡さんの話をきっかけに、自分の毎日を少しだけふり返ってみてもいいのかもしれません。

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<再構成/日刊SPA!編集部>

【高橋マナブ】
1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている
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