歌舞伎俳優の中村勘九郎が、8月の歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」(3~26日)の第3部で野田秀樹氏が脚本・演出を手掛ける「野田版 研辰(とぎたつ)の討たれ」に主演することが20日、発表された。

 勘九郎の父・中村勘三郎さんが野田氏とのタッグで2001年に初演した野田版歌舞伎の第1弾。

勘九郎が主人公・守山辰次を演じ、笑いあり、涙ありと見どころ満載の名作を05年以来、20年ぶりに上演する。ほかに市川染五郎が平井九市郎、中村勘太郎が平井才次郎、市川中車が八見伝内、中村七之助が粟津の奥方萩の江/姉娘およし、松本幸四郎が家老平井市郎右衛門、中村扇雀が僧良観を演じる。

 今回の配役発表にあたり、野田氏は「お父さんはもっと…」と題したコメントを寄せた。

 歌舞伎役者は、その血筋が大切であるという理由からよく「サラブレッド」などと競馬の馬扱いされることがあります。今回の芝居のキャスティングを見ながら、まさにそんなことを感じます。この馬こそ、あの何々という名馬の子供だみたいな感慨でしょうか。おそらく初演(2001年)再演(2005年)をご覧になったお客様は、その楽しみと特権で「お父さんはもっと...」とか「お父さんだったら...」とか「お父さんの方が...」とか、兎に角、前世代の名馬の一世を風靡した姿の方が良かったあ、と言いたいがために観劇なさったりするものです。けれども、松竹という厩舎から雇われた戯作者であり演出家である私は、そうは言わせない心意気です。この新しい世代のサラブレッドたちもサラブレッドである所以をお見せできるような、そんな舞台に仕上げようと思っております。因みにではございますが、私一人だけ姑息にも、このサラブレッドたちの世代交代の波と違うところで相変わらず調教師を務めさていただいております。それは何より私ひとりが、サラブレッドの家系ではない証でございます。...ごめんあそばせ。

野田秀樹

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