主砲・岡本を欠く阿部巨人が好調に転じたのには理由があった。21日阪神戦(甲子園)の試合前練習から、1軍野手全員に打球角度14度を目安とするライナー打ちを徹底する打撃改革を敢行。

以降、28日までの7試合のチーム打率は2割7分3厘と、20日までの7試合の2割9厘から大きく上昇し、6勝1敗と波に乗った。ナインは29日、金沢から名古屋へ移動。30日からは交流戦前最後のカードとなる中日3連戦(バンテリンD)に臨む。(取材・構成=内田 拓希、宮内 孝太)

 豪快なサク越えとスタンドのどよめきが試合前練習の“華”だが、この日は少し違った。2連敗で迎えた21日阪神戦(甲子園)前のフリー打撃。リチャード、キャベッジら長距離砲を含めた全16打者が、徹底して低弾道のライナーを連発した。試合に入ると昨季0勝3敗、防御率1・00と天敵だったビーズリーを4回途中でKOし、本塁打なしの12安打を放って勝利。5連勝と今季初の3戦連続2ケタ安打の皮切りとなった一戦から、Gナインの打撃改革が始まった。

 戦前まで今季の阪神戦は2勝8敗で、平均得点は1・8。岡本を左肘じん帯損傷で欠き、ただでさえ苦しい打線は20日の3連戦初戦でも150キロ超を連発した才木に完封を許していた。敗れれば借金生活となり「何とかしなきゃいけない」という状況で行われた練習前ミーティング。二岡ヘッド兼打撃チーフコーチがナインの前に立った。

まずは

 〈1〉速球に対する打率が他球団より低い

 〈2〉練習に比べて試合では打球角度が低くなっている

 この2点をデータで示して説明した。投手が当たり前のように150キロ台を投げる現代で「打撃投手からいい角度で打っても通用しない」と、フリー打撃のライナー打ちを提案。「練習のための練習」から「試合のための練習」への意識改革だ。今季、試合で安打になりやすい打球角度の「14度」を目安に設定した。

 亀井打撃コーチは侍ジャパンの外野守備・走塁コーチを兼務。球界トップレベルの強打者でも、練習では打球を上げていないことに着目し「球も速くなってきている時代で、下から打っているようでは当たらない。鋭角にバットを入れて、つぶすイメージでやっていく」とミーティングで説明した。

 「打撃改革」以降の7戦でチーム打率2割7分3厘、平均3・9得点と打線は好調だ。1番に定着した増田陸は「みんな打ててなかったですし、チームとして変えないといけない時だったと思う。僕自身にもいいきっかけになっている」と効果を実感。先発出場の機会を増やしている門脇は「やるべきことをシンプルにして、ライナーをとにかく打ち続ける。結果が出ようが出まいが続けたい」とライナー打撃の継続を誓った。

 6月3日からは交流戦が開幕する。速球派が多いパ・リーグ相手にこそ、ライナー打撃が真価を発揮しそうだ。「練習だとみんな(打球が)上がっちゃう。飛ばしたくなっちゃうから。だけど試合での安打の角度でなるべく打った方がいい。試合のための練習なんだから」と阿部監督。悲願の日本一奪回へ、一発に頼らない打撃改革が着々と進んでいる。

 ◆打球角度 一般的に長打になりやすいとされる「バレルゾーン」は、打球速度158キロ以上で打球角度26~30度。一方、内野の頭上を越え、外野の間を抜ける安打となりやすい打球角度は12~15度と言われている。

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