◆JERA セ・リーグ 中日1―4巨人(30日・バンテリンドーム)

 巨人が中盤の逆転勝利で貯金を今季最多の6とした。ライデル・マルティネス投手(28)が3点差の9回を抑え、球団では12年の山口鉄也に並ぶ開幕から24試合連続無失点とし、史上最速で20セーブに到達した。

1点ビハインドの6回にキャベッジが同点二塁打、若林が勝ち越し三塁打を放ち7回にも2点を追加した。先発の赤星優志投手(25)は6回1失点で4勝目。チームは5月の月間勝ち越しを決めた。

 思い出のマウンドで9回を締めた。マルティネスは吠(ほ)え、巨人ナインと笑顔で手を重ねた。昨季までの本拠地バンテリンDにはため息が漏れた。6年連続6度目のシーズン20セーブ到達だ。開幕からの連続試合無失点も24とし、12年山口の球団記録に並んだ。

 「日本でやってきて、また一つ記録を達成できた。この名古屋の地で成長してきたのは事実なので、そう考えるとうれしい」

 8年間を過ごした古巣相手。「今日は地に足がつかない感じだった。ヒットを打たれて、気持ちが入った」。

4―1の展開で登場し、先頭・板山に浴びた右前打でエンジンがかかった。無死一塁から木下を155キロで遊ゴロ併殺打。村松はこの日最速156キロで追い込み、最後は低めのスプリットで三振に仕留めた。試合後は軽快に口笛を吹いて報道陣の前に登場。阿部監督も「素晴らしい。全然点取られない。すごい記録」とうなった。

 開幕当初は本調子でなかったにも関わらず防御率0・00をキープし、25日のヤクルト戦(東京D)で昨年の自己最長、開幕21試合連続無失点をあっさり更新した。「日々の練習の成果だと思う。春のキャンプを通じてしっかり調整ができたことの積み重ね」。剛速球も本来の威力を取り戻し、相手を寄せ付けなくなってきた。

 キューバ出身の28歳は勤勉で“和の心”を大切にする。

中日時代の19年。当時の阿波野秀幸投手コーチから教わった。「(文字で)書くと忘れにくいよ」。“ライデル・ノート”の始まりだ。それ以来ノートを買い続け、スコアラーとのミーティング中は周囲を驚かせるほどペンを走らせた。各打者にどういう攻め方をしたのか。何を打たれたのか。抑えるために、全てを細かく記すようになった。

 昨季まで二人三脚でサポートしていた中日のフランシス・ルイス通訳は「彼は勉強熱心。いつも全部をノートに書く。書いて頭に入れる。“日本流”の方法ですよね」と日常だった光景を懐かしむ。

巨人に移籍した今もなお習慣は続いている。右腕はサラリと言った。「もう数え切れないぐらい、ノートが増えたよ」

 チーム51試合目での20セーブ到達は史上最速で、17年サファテ(ソフトバンク)のシーズン54セーブの日本記録を超えるハイペースだ。通算でも186セーブとし、節目の200セーブも残り14。経験のない優勝の味を求め、4年総額50億円以上の大型契約でやってきた助っ人は「自分の仕事を果たしてマウンドを降りることだけを考えている。セーブのチャンスがあればこれからも積み重ねていきたい」。令和の最強守護神が阿部巨人にとてつもない安心感を与えている。(堀内 啓太)

 巨人山口鉄也2軍投手チーフコーチ「本当にすごいピッチャーのおかげで自分の名前がまた出してもらえるということは、すごくうれしいことです。たぶん通過点にすぎないので、もっともっとチームのために無失点を続けて投げていってほしいです」

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